要旨

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック期にワクチン接種、保護、検査に必要な物資は、様々な国々で生産されている。本稿では、ワクチン、フェイスマスク、検査用品という3つの製品の壮大な話を紹介し、COVID-19との闘いにおける貿易の役割に焦点を当てている。COVID-19パンデミック期には、国際市場とグローバル・サプライチェーンが極めて重要な役割を果たした。そのおかげで、まず各国は、パンデミック対策として必要な物資を入手できるようになり、続いて一時的な供給難を緩和する手段を得て、さらに急増する需要に対応するために生産拡大に必要な主要な部品が入手できた。

 
主な結論
  • COVID-19のパンデミック期にワクチン接種、保護、検査に必要な物資は、様々な国々で生産されている。ワクチン、フェイスマスク、検査キットという、全く異なるが重要な3つの製品の貿易とグローバル・サプライチェーンは、COVID-19との闘いを支援する上で重要な役割を果たした。それぞれの製品にストーリーがある。

    • COVID-19ワクチン貿易とグローバル・サプライチェーンにより、持続的な生産と利用が可能になった 2021年の上半期6か月のワクチンの国際的な取引は、2020年の12カ月間と比較して、すでに26%増加していた。多くの人々にとってワクチンの入手は依然として困難だが、この前例のない増加により、製造能力のない様々な国々もワクチンを入手できるようになった。また、ワクチン貿易が増えると、その製造と流通を支える関連・中間投入物の貿易も増加した。COVID-19ワクチンの製造は、欧州連合などの一部の重要な生産国において、他の種類のワクチンの輸出に取って代わったが、それは一時的なものだった。これは、記録的な速さで必要不可欠な製品の生産と流通を増加させる能力が、グローバル・サプライチェーンにあるということの証左である。

    • フェイスマスク―貿易により一時的な供給不足が緩和された。2020年の3カ月間に、米国ではフェイスマスクの輸入が金額、数量ともに15倍以上に増加し、カナダ、EU、日本などでも同様の急増が観測された。この需要の急増のほとんどを満たしたのは、中国からの輸入であった。しかしそれも束の間のことで、フェイスマスクの輸入は最初の急増の後、輸入元が急速に多様化し、輸入需要は激減した。この事例では、国際貿易とグローバル・サプライチェーンによって、需要が急増した必需品の一時的な供給不足を緩和することができた。

    • COVID-19の診断用医薬品(検査キット)―貿易により一時的な不足が解消され、持続的に利用できたCOVID-19検査は、鼻腔用綿棒、ウイルス輸送媒体、実験用試薬、吸収パッド、その他のプラスチック消耗品(容器、チューブ、キャップ、カセットケースなど)を含む多様な製品で構成されている。パンデミックの初期段階には、一部の製品の取引が持続的に増加した。実験用試薬の輸出は、危機以前の水準と比較して最大で77%も増加した。その一方で、鼻腔用綿棒やウイルス輸送用媒体などの製品は、当初は需要が急増したものの、その後はパンデミック前の水準をやや上回る程度の水準で安定した。全体として、COVID-19検査キットの貿易のおかげで、需要急増に伴う一時的な供給制約が緩和されるとともに、必需品を持続的に入手できるようになった。

  • COVID-19との闘いは、現在も続く世界的な課題である。グローバル・サプライチェーンのおかげで各国は、i) 生産能力がないときでも必要な製品を入手でき、ii) 一時的な供給不足を緩和でき、iii) 主要部品の生産を拡大できる、という点で重要な役割を果たした。COVID-19対策に必要な製品の需要がかつてないほど急増し、変化する中で、サプライチェーンは機敏に弾力的に対応できることが証明された。

  • あらゆる国々が、自国民のワクチン接種、防護、検査を確実に行うという課題を抱えているが、すべての国がそのために必要なすべての物資を生産しているわけではない。貿易により、その供給を支える最終財と中間財が入手できるようになる。開かれた市場、透明性、貿易の円滑化により、これらの製品の入手がより容易になる。

個人用防護具(PPE)でも、医薬品やワクチンでも、どの国も自国だけでCOVID-19との闘いに必要なすべての物資を効率的に生産することはできない (OECD (2020[1]), OECD (2021[2]))。実際、COVID-19のパンデミック期にワクチン接種、防護、検査に必要な最終財と中間財は、様々な国々で生産されている。

COVID-19対策に欠かせないワクチン、フェイスマスク、検査キットの3つの主要製品の貿易統計を深く掘り下げると、重要なことがわかる。これらはいずれも世界中で最も輸入されている製品であるが(図1)、様々な点で違いがある。ワクチンの製造はより複雑で研究開発の成果が集約されているため、輸出国数が少ない(OECD, 2021[2]) (Bown and Bollyky, 2021[3])。 フェイスマスクは製造工程が複雑だが (OECD (2020[4])、技術集約度は低く、より多くの国から輸出される傾向にある。COVID-19検査には、RT-PCRや(迅速)抗原検査を含め、実験用試薬、綿棒、サンプルホルダー、その他の簡易プラスチック消耗品など、多くの製品が組み合わせされいる。実験用試薬も多くの国で輸出・輸入されているが(図 1)、サプライチェーンの構成が異なるという特徴がある。1

国際的な輸出入に関する最新のデータは、パンデミックの様々な段階において、COVID-19関連物品の利用可能性の問題に対処し、供給の制約を満たす上で貿易が果たした役割について、証拠に基づいて語る機会を与えてくれる。それでも、この分析に貿易データを使用する際には多くの課題と留意点がある(コラム 1)。

 
図 1. ワクチン、フェイスマスク、検査キットは世界で最も取引されている製品
2019年に輸出入していた国の数で順位付けされた製品

注:「フェイスマスク(face masks)」はHS6桁コード6307.90「その他の既製繊維製品」に含まれるが、このコードにはマスク以外の品目も含まれる。「実験用試薬(laboratory reagents)」(検査に代用)はHS 3822.00に含まれる。「ワクチン(vaccines)」は、HS3002.00に含まれるが、このコードにはヒト用医療ワクチンの全種類が含まれる。2つの図は、製品を輸入(パネルa)、輸出(パネルb)している国の数で順位付けしている。例えば、輸入品では、実験用試薬、フェイスマスク、ワクチンはいずれも200以上の国々で輸入されており(Y軸)、貿易品全5384品目のうちそれぞれ9番目、62番目、470番目に多く輸入された品目ということになる(X軸)。2019年には、フェイスマスクや実験用試薬も200以上の国々が輸出していたが、ワクチンを輸出していたのは、116カ国である。

出典: 2019年についてはCEPII BACI (2021[5]) dataset を用いて筆者が算出。

 
コラム 1. COVID-19医薬品の貿易パターンを分析する際の留意点と課題

COVID-19パンデミック期の最新かつ比較可能な貿易データがないため、COVID-19対策で貿易が果たした役割の分析は複雑である。次の2つの進展により、COVID-19の発生以降に起きたことにより注目することができる:

(i). 2020年と2021年の貿易フローに関する月次データは、その後、主要貿易国から公表され、国際データベース(ITC Trade MapやUN COMTRADEデータベースなど)に(HS6桁レベルで)まとめられた。

(ii). 多くの税関当局は、COVID-19関連医療品目に特定コードを導入して、世界税関機構(World Customs Organisation, WCO)の指針で示されたカテゴリー内でCOVID-19関連物品の追跡をより確実にしている(WCO list of HS 6-digit codes for COVID-19 goodsを参照)。これにより、各国統計資料の活用を含め、製品レベルでのよりきめ細かい分析が可能になった。

重要な課題と留意点が残っている。第一に、HS6桁レベルの国際貿易統計(ITC Trade MapとUN COMTRADEで入手可能)は、COVID-19に直接関連する製品よりも集約されたレベルの製品を対象とする傾向がある。1例えば、HSコード3002.20はあらゆる種類のヒト医療用ワクチンを対象とし、2021年からCOVID-19ワクチンが含まれているが、他のワクチンも含まれている。さらに、主要な生産者や取引業者の中には、対象となるすべての製品について最新のデータを利用できるデータベースに含まれていないものがある。

第二に、貿易量は国によって異なる単位で報告されたり、全く報告されなかったりすることがある(そして一般に貿易額よりも報告しづらい)。つまり、価格や数量の効果を追跡するために必要な単位値を特定することが困難な場合があるということである。8桁または10桁レベルのコードについて税関情報を使用することで、一部の国や製品の場合、これらの課題の一部を解決することができるが、税関コードがこの細分化されたレベルではもはや調和されていないため、国際比較は困難である。

第三に、COVID-19医薬品の国内生産に関する最新かつ比較可能なデータには重大なギャップがある(貿易データは国内生産データより詳細である)。このため、COVID-19医薬品の輸出入に対する国内生産の推移をマッピングすることは難しい。ワクチンの場合、寄付分の追跡調査(COVAX経由または直接寄付)の面でも、複雑な問題が生じる。WTO-IMF Vaccines Trade Tracker (WTO-IMF, 2022[6]) は、ワクチンが生産されている主要地域からの寄付の推計を提供している。

最後に、COVID-19最終財の生産に向けられた投入物や部品の特定には、大きな課題がある。 「生きた」WCO list of HS 6-digit codes for COVID-19 goods WTO Joint Indicative List of Critical COVID-19 Vaccine Inputs(WTOが主導し、アジア開発銀行、OECD、WCO、シンクタンク、研究者やワクチン製造業者、輸送業者などの民間企業が参加する共同作業)などのイニシアチブでは、幅広いCOVID-19医薬品と、それぞれワクチン材料や製造設備などについてHS6桁コードによる分類を目指している。ここでも重要な課題は、商品リストが固定されていないことに加えて、HS6桁コードに多くの特殊な財、投入物、設備よりも幅広い商品が含まれることである。新しいワクチンが製造工程に入る(したがって新しい材料が追加される)、または新しい医薬品がCOVID-19対策として使用される。

1 ただし、ITC Trade Mapのデータでは、特定の国々についてより詳細な分析(8桁または10桁レベル)を行うことができる。

 1. COVID-19ワクチン:貿易とグローバル・サプライチェーンにより、持続的な生産と利用が可能になった

2021年に見られた世界のワクチン貿易の増加は、前例のないものである。2021年上半期のワクチン(=あらゆる種類のヒト医療用ワクチン、HSコード3002.20)の世界全体の貿易額は、2020年の一年12か月より26%、2019年より30%多かった(2021年の上半期は410億米ドルだったのに対して、2019年の年間ワクチン貿易額が約310億米ドル、2020年が約325億米ドル)。2 2021年の輸出額の約73%をベルギー、ドイツ、米国、中国、スペインの5カ国が占めている (図 2)。3

 
図 2. 貿易なくしてワクチンなし:COVID-19のパンデミックでワクチンの輸出が世界全体で記録的な伸びを見せた
HS 3002.20(2021年以降はCOVID-19ワクチンを含む)、10億米ドル、2017年1月~2021年6月

注:図2は、2017年1月から2021年6月までの月次データが入手できた52カ国をもとにしている。これらの国々は、CEPII BACIデータによると、2019年のヒト医療用ワクチン(HS 3002.20)の世界貿易額の99.4%、世界貿易量の98.7%を占めており、世界動向を表す代表サンプルとなっていることが分かる。インドのデータは、UN COMTRADEデータベースより取得。国は2021年6月の輸出額順に並んでおり、2017年から2019年までの四半期平均値が表示されている。

出典:ITC Trade Map (2021[7]) and UN COMTRADE (2021[8]).

COVID-19ワクチン製造のためのサプライチェーンの開発は、グローバルな国境を越えた官民協力( Brown and Bollyky (2021[3])参照)4図 2 で取り上げた国々などが関わった結果であった。しかし、これまでのCOVID-19ワクチンの入手可能性に対する国際貿易の正確な寄与度を評価する際の主な制約となっているのは、商品分類に具体性がないこと(すなわち、HS6桁コード3002.20でCOVID-19ワクチンを他の疾病予防に必要なワクチンと区別することができないこと)であった (OECD, 2021[2])

この区別は、COVID-19ワクチンに特定の税関コードを導入するようになった欧州連合では可能である。それによると、ワクチン貿易の全体的な増加には、COVID-19ワクチン輸出の急増が大きく反映されている(図 3)。COVID-19ワクチンは、2021年1月時点で金額ベースでEUのワクチン輸出全体の約21%を占め、2021年8月には同66%に到達した。2021年1月から8月の欧州連合(EU)のCOVID-19ワクチンの輸出額は、EU域内外を問わず、絶対値で見ると4億3200万ユーロ(4億9400万米ドル)から48億ユーロ5 (55億米ドル)と、11倍(+1000%)増加しており、予想以上の伸びを示していた(Eurostat, 2022[9])

このほか、次の2つの重要な点が見えてくる。一つ目は、COVID-19ワクチンの輸出増加により、主に2021年前半に他のワクチンの輸出が一時的に減少したことである。しかし、それらの輸出は2021年半ばにはパンデミック前の水準に戻った (図 3)。 もう一つは、2021年半ば以降、輸出の地理的分散化(特に非EU諸国向け)が進んだことである。

 
図 3. 2021年に欧州連合からのCOVID-19ワクチンの輸出が急増
10億ユーロ、2020年1月‒ 2021年8月

注:縦線は、EUのCombined Nomenclature(CN)において、COVID-19ワクチンを分けて分類することが初めて採用された時期を示している。COVID-19ワクチンのEU CNコードは3002.20.10。

出典:EUROSTAT (2022[9]).

COVID-19ワクチンの製造と配布6 に必要な投入物の輸出入データは、貿易とグローバル・サプライチェーンがワクチンに対して果たした役割と、幅広い資材と原料を安定的に確保する役割を果たしたことを浮き彫りにしている。例えば、ワクチンの製造に使用される細胞培養地やフィルターなどの消耗品の世界全体の輸出量は、ワクチンの臨床試験の開始からワクチン接種キャンペーンまでの2020年第1四半期から2021年第1四半期の間に、66%以上増加した(図 4)。7 こうした材料の3分の2以上は、一部のCOVID-19ワクチンメーカーから調達された(充填と仕上げの工程に携わる国々を含む)。8 COVID-19ワクチンの包装材についても、同様のパターンが見られる。この場合、COVID-19パンデミックの第1段階(2020年第1四半期)に世界の輸出が一時的に減少したにもかかわらず、主要メーカーや充填・仕上げを担った国々の輸入は18%以上増加した(図 4)。

原材料を確保する上で貿易が果たす役割は、特殊な材料を供給する新しいサプライヤーの出現によっても明らかになった。より細かい製品分類を用いて(図 5)、mRNAワクチン(ファイザー/ビオンテックとモデルナ)の製造に不可欠な特殊材料である脂質ナノ粒子の米国による輸入を例示している。2020年1月から2021年11月にかけて輸入量が5倍に増えたが、それを大きく支えたのはドイツなどの新規のサプライヤーである。

COVID-19 ワクチン に関するこの分析から、2021年のこうした貿易の増加は、前例がないだけでなく、年間を通じて持続していたことがわかる。貿易は、グローバル・サプライチェーンを通じて生産の増加を支えるという重要な役割を果たした。実際、COVID-19ワクチンの製造に必要な特殊な投入物の貿易は5倍以上に増加した。COVID-19の新ワクチンの製造により、EUからの他のワクチンの輸出が減少したが、それも一時的な事象にすぎなかった。総じて、グローバル・サプライチェーンには、記録的な速さで増産し生産を持続させる能力があり、生産が困難な国々でも新たな必需品を利用できることが明らかになった。多くの国々が依然としてワクチンの入手が困難であることを考えると9、 貿易は、各国がCOVID-19ワクチンとその製造に必要な投入物を入手する上で、今後も重要な役割を果たすと思われる。

 
図 4. COVID-19ワクチン貿易の拡大を支えているのは、ワクチンの製造に必要な材料の輸出入の増加
10億米ドル、四半期データ、2017年第1四半期~2021年第2四半期

注:5種類のワクチン(ファイザー/ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノババックス)の生産国および充填・仕上げ工程に携わる国の一覧は、Brown and Bollyky (2021[3]) の分析に基づいている(附属表1.A.1)。このリストには、次の国々が含まれている:米国、ベルギー、ドイツ、アイルランド、フランス、スイス、イタリア、スペイン、オランダ、韓国、オーストリア、英国、インド、オーストラリア、日本、アルゼンチン、タイ、メキシコ、ブラジル、チェコ。製品カテゴリーは、WTO Joint Indicative List of Critical COVID-19 Vaccine Inputs に基づいて特定され、附属表 1.B.3 に記載されている。

出典: ITC Trade Map (2021[7]) およびインドについては UN COMTRADE (2021[8]) のデータ。

 
図 5. 貿易により、COVID-19ワクチンの製造に必要な特殊な投入物が入手できた
米国の脂質ナノ粒子(LNP)の輸入額、100万米ドル、2020年1月〜2021年11月

注:LNPs とは、米国 HTS コード 2906.13.10 「ステロール」を指す(WTO Joint Indicative List of Critical COVID-19 Vaccine Inputs)に基づく HS6-digit分類を使用)。

出典:USITC (2022[10]).

 2. フェイスマスク:貿易により一時的な供給不足が緩和される

フェイスマスクは、COVID-19の感染拡大から身を守るための重要な製品である。フェイスマスクの世界的な需要に対応するためのグローバル・サプライチェーンの対応には目を見張るものがあった (OECD, 2020[4])。米国の例から、いざという時の貿易の重要性がわかる。フェイスマスクの輸入額は、2020年3月の月間約2億4000万米ドルから、2020年5月には37億米ドルへと、わずか3カ月で15倍以上(+1 449%)に増加した(図 6)。 数量で見ても同期間の輸入枚数は6億枚から94億枚へと447%増となり、この輸入増が価格効果によらないことを示している。10

より詳細なデータによると、2020年7月~10月の輸入品目の中では、N95保護マスクと使い捨てマスクが最大のシェアを占め(それぞれ35%、25%)、次いで非使い捨てマスク(16%)のシェアが大きかった。データによると、フェイスマスクの輸入は最初に急増したが、その後2021年の1年間を通してみると月あたり3億5000万米ドル程度で安定しており、危機以前の水準をわずかに上回る程度であった。11 また、供給元が多様化していることもデータから読み取れる。2020年7月の米国の使い捨てマスク輸入額のうち、約94%は中国からの輸入が占めていたが、その後新たな供給者が出現し、使い捨てマスクの産地は多様化している。2021年11月には米国のマスク輸入額のうち、メキシコが11%、韓国が5%、その他の国が4%を占めている (図 7)。

 
図 6. パンデミック発生時、急増した需要に対応するため、貿易で大幅な不足を補った
10億米ドル、2017年1月~2021年11月

注:図は、2017年1月から2020年7月までのすべての輸入相手国からの米国へのHTSコード6307.90.98.89(「その他の既製繊維製品で他に分類ができない、または含まれていないもの」)の輸入額と、使い捨てマスク(6307.90.98.70)、非使い捨てマスク(6307.90.98.75)、N95保護マスク(6307.90.98.45)、非N95保護マスク(6307.90.98.50)、その他の既製繊維製品で他に分類ができない、または含まれていないもの(2020年7月以降、コード6307.90.98.91)の輸入額を掲載している。四半期平均値は、2017年から2019年のもの。

出典:USITC (2022[10]).

 
図 7. 米国向けの使い捨てマスクの供給が徐々に多様化
米国に輸入される使い捨てマスクの原産地、輸入全体に占める割合(%)、2020年7月〜2021年11月

注:米国の新しいHTSコード6307.90.98.91は2020年7月に導入された。

出典:USITC (2022[10]).

米国で観察されたフェイスマスクの輸入急増とその後の減少は、カナダ、欧州連合、日本など他の主要国にも共通して見られる(図 8)。これらすべての国々で、輸入額の急増と同時に輸入の集中化(より少ない供給源からより多くのフェイスマスクを輸入された)が進み、中国が主な輸入元となった。しかし、N95、FFP2保護マスクなど特定の品目の輸入はそれほど集中せず、各国はその後、韓国、チュニジア、ベトナムなどの供給国に調達先を分散させている(図 9)。12

 
図 8. フェイスマスクの輸入により、多くの国々で需要の急増に伴う一時的な不足が補われた
100万米ドル、6桁のHSコード6307.90で把握されるフェイスマスク輸入額

注:フェイスマスクは、2019年以降の輸入を観測するために、6桁のHSコード6307.90を集計対象としている。

出典: ITC Trade Map (2022[11]) .

 
図 9. COVID-19のパンデミックの初期段階を過ぎた後は、フェイスマスクの輸入の集中が緩和された
保護マスク(N95、FFP2など)の輸入品に対する集中度指数

注:この図は、カナダ、欧州連合、日本、米国のフェイスマスク輸入のHH指数(HHI)で、次の項目の合計で算出される:ある相手国(例:カナダ)へのフェイスマスクの総輸出量に対する各国の輸出量の割合を2の累乗で算出。N95(米国、日本)、FFP2(欧州連合)、一般用マスク(カナダ)の輸入品に対するHHI指数。集中度は、米国、欧州連合、日本は輸入枚数で、カナダはフェイスマスクの輸入kg数で表示。カナダでは、NIOSH認可の呼吸器系保護マスクは他の繊維製品と異なる通関コードで分類されているため、HSコード6307.90.99.20(フェイスマスク)が使用されている。カナダのコード6307.90.99.20は、COVID-19のパンデミック以前のものである。欧州連合の指標では、EU域外の貿易のみを考慮している。集中度指数は、4か国について入手可能な期間限定の税関品目について示している。広義の関税コードは、欧州連合は6307.90.90.98、日本は6307.90.29、米国は6307.90.98.89を指す。

出典:Statistics Canada (2022[12]), EUROSTAT (2022[9]), Statistics of Japan (2022[13]) and USITC (2022[10]).

総じて、フェイスマスクについて分析すると、パンデミックの初期段階における未曾有の需要急増に対応するため、一時的とはいえ、輸入が大幅に増加したことがわかる。米国では3ヵ月間でフェイスマスクの輸入が金額、数量ともに15倍以上に増加し、カナダ、EU、日本など他の主要国でも同様の急増が観測された。このフェイスマスクの需要急増への対策として、中国からの輸入が大幅に増加したが、これは一時的なもので、輸入は最初の急増の後大幅に減少し、輸入先も多様化した。このことは、必需品の需要の急増によって引き起こされる一時的な供給制約を各国が緩和する上で、貿易とグローバル・サプライチェーンが重要な役割を果たしたことを表している。

 3. COVID-19の検査キット:貿易により一時的な不足が解消され、持続的利用が可能になった

COVID-19検査13 はCOVID-19との闘いにおいて重要な要素であり、ウイルスを検出し、その拡散を防ぐための行動を可能にした。検査キットは、鼻腔用綿棒、実験用試薬(ウイルスと接触すると変色する液体)、ウイルス輸送用媒体(サンプル検査を汚染なく実験室に運ぶために必要な「包装」)、より単純なプラスチック消耗品(例えば、綿棒の包装用品;容器;チューブ;キャップ;カセットケース)など多くの製品で構成されている(USITC, 2021[14])。つまり、「COVID-19検査キット」を識別する単一の税関コードは存在しないということである。また、一般的に他のCOVID-19関連項目と比べても、異なる構成要素を各国の関税分類で追跡することが難しい。14

実験用試薬は、COVID-19検査キットの取引分析のための代理指標になりうる。このデータから、検査キットのパンデミック期の貿易は、マスクなどの製品に比べるとより緩やかで持続的な増加を示していることがわかる。パンデミック前の水準と比較すると、実験用試薬の輸出は、米国(39%増)、ドイツ(33%)、オランダ(77%)、ベルギー(67%)など、これまで上位だったいくつかの国で33%から77%増加していた (図 10)。15

輸出の顕著な増加に加え、パンデミック発生以降、投入資材の世界市場において新たな供給者が出現している。例えば、2020年2月以降、韓国と中国からの実験用試薬の輸出が10倍以上に増加している(図 11)。韓国は、2019年には実験用試薬の輸出の約1%を占めていたが、16 2020年には世界第5位の供給国となり、世界輸出のほぼ6%を占めるようになった。17

 
図 10. 実験用試薬の輸出上位国は、輸出の伸びを持続的に増加させた
100万ユーロおよび100万米ドル、2017年1月~2021年11月

注:青破線はサンプル期間(2018年第1四半期~2021年第3四半期)の各国の平均輸出額を指す。HS6桁コード3822.00で識別される実験用試薬。

出典:EUROSTAT (2022[9]) and USITC (2022[10]). Creative Commons for the flags.

 
図 11. 韓国と中国は、パンデミック前の上位輸出国と比較して、実験用試薬の輸出を大幅に増加させた
January 2019=100

注:HS6桁コード3822.00で識別される実験用試薬。CEPII BACIデータベースによると、2019年の実験用試薬の輸出国上位4カ国は、米国、ドイツ、英国、オランダだった。

出典:ITC Trade Map (2021[7]).

検査過程で必要とされる様々な品目の貿易から、COVID-19関連製品の入手可能性における貿易の役割を支える、相関の一部を説明することができる。米国においてCOVID-19検査に必要な鼻腔用綿棒が不足した際(図 12) (USITC, 2021[14]) 、あるいは英国で2020年第4四半期から2021年第1四半期のCOVID-19の感染者が増加した時期にウイルス輸送用媒体の需要が高まった際に、輸入によって補完資材を利用できるようにすることが重要であった(図 12)。

 
図 12. 貿易は、COVID-19検査キットの特定部品の短期的な需要圧力の影響を軽減した
a. 米国のフロック式鼻腔用綿棒の輸入額、100万米ドル、2018年第1四半期〜2021年11月

注:*フロック加工された鼻腔用綿棒(flocked nasal swabs)は、プラスチックの棒に一定の形状で繊維が取り付けられたもので、COVID-19検査に特に適している(USITC, 2021[14])。図は、2021年1月以前のHSコード5601.22と2021年1月以降(青線、HTSにこのコードが導入された時期)のHTS 5601.22.50 (flocked swabs)で捉えた米国の鼻腔用綿棒輸入の推移を示している。2018~2019年までの四半期平均値を表示している。

出典:USITC (2021[14]) and USITC (2022[10]).

 
 
b. 英国のウイルス輸送媒体の輸入額(100万米ドル)、2019年1月〜2021年11月

注:HS6桁コード3821.00で把握されるウイルス輸送媒体。

出典:ITC Trade Map (2022[11]).

COVID-19検査に関する分析から、各国がCOVID-19と闘う上で貿易が必須投入物の供給を通じてより大きな役割を果たせることがわかる。一部の製品は、パンデミックの初期段階に持続的に増加した―実験用試薬の輸出は、多くの国々で危機以前の水準と比較して最大で77%も増加した。その一方で、鼻腔用綿棒やウイルス輸送用媒体などの製品は、当初は需要が急増したものの、その後はパンデミック前の水準をやや上回る程度の水準で安定した。全体として、貿易は需要急増に伴う一時的な供給不足の緩和と、これらの必須製品の持続的な入手の双方を可能にした。

 4. 結論

COVID-19パンデミックは、それと闘うために必要な物資などの供給における貿易の役割について、幅広い議論を巻き起こした。この議論に情報を提供するために、OECDは、COVID-19のパンデミックの初期段階において、パンデミック以前のデータを用いてCOVID-19医薬品、ワクチンおよび関連投入物の国際貿易をマッピングした (OECD, 2020[4]; OECD, 2020[1]; OECD, 2021[2])。それによって、パンデミック以前の国際市場の需給状況の全体像が描き出され、COVID-19医薬品、ワクチンおよび関連投入品の生産における相互依存関係が浮き彫りになった。しかしデータの制約から、パンデミックが広がるに連れて変化する貿易の役割について、洞察を得ることはできなかった。

本稿では、新しい国際貿易データを用いて、COVID-19パンデミック期の貿易の役割について、COVID-19との闘いの鍵を握った特定の製品であるワクチン、フェイスマスク、検査キットに焦点を当て、予備的洞察を示している。

この分析により、貿易とグローバル・サプライチェーンが、各国がCOVID-19対策の必需品を入手する上で重要な役割を果たしたことが確認された。貿易によって、COVID-19ワクチンを製造できない多くの国々でもワクチンが入手できるようになった。貿易とグローバル・サプライチェーンにより、パンデミックの初期段階におけるフェイスマスクの深刻な供給不足が解消された。また、COVID-19検査キットの製造に必要な実験用試薬を継続的に入手できるようにし、鼻腔用綿棒などの関連製品の供給不足に対処する上でも、貿易は重要な役割を果たした。この分析から、グローバル・サプライチェーンが機能していることがわかる。グローバルな貿易によって可能になった機敏で弾力性のあるサプライチェーンは、COVID-19対策に必要な製品に対する前例のない需要の変化を受け、その入手を支えた。

また、本稿は、COVID-19 との闘いにおける貿易の役割を強調することで、今後のリスク管理および広範な危機対応戦略において、パンデミック期のサプライチェーン全体の動向を反映した新しい最新データをより有益に活用できるということを強調している。

あらゆる国々が、自国民のワクチン接種、防護、検査を確実に行うという課題を抱えているが、すべての国がそのために必要なすべての物資を生産しているわけではない。貿易により、その供給を支える最終財と中間財が入手できるようになる。開かれた市場、透明性、貿易の円滑化により、これらの製品の入手がより容易になる。

参考資料

[15] Bown, C. (2021), How COVID19 Medical Supply Shortages Led to Extraordinary Trade and Industrial Policy, https://doi.org/10.1111/aepr.12359.

[3] Bown, C. and T. Bollyky (2021), How COVID-19 vaccine supply chains emerged in the midst of a pandemic, https://www.piie.com/publications/working-papers/how-covid-19-vaccine-supply-chains-emerged-midst-pandemic.

[5] CEPII BACI (2021), CEPII BACI 2019 dataset, http://www.cepii.fr/cepii/en/bdd_modele/presentation.asp?id=37.

[9] Eurostat (2022), EU trade since 2015 of COVID-19 medical supplies by categories, https://ec.europa.eu/eurostat.

[11] ITC Trade Map (2022), ITC Trade Map 2022 database, https://www.trademap.org/.

[7] ITC Trade Map (2021), ITC Trade Map 2021 database, https://www.trademap.org/.

[2] OECD (2021), Using trade to fight COVID-19: Manufacturing and distributing vaccines, https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/using-trade-to-fight-covid-19-manufacturing-and-distributing-vaccines-dc0d37fc/.

[4] OECD (2020), The face mask global value chain in the COVID-19 outbreak: Evidence and policy lessons, https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/the-face-mask-global-value-chain-in-the-COVID-19-outbreak-evidence-and-policy-lessons-a4df866d/.

[1] OECD (2020), Trade interdependencies in Covid-19 goods, https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/trade-interdependencies-in-covid-19-goods-79aaa1d6/.

[12] Statistics Canada (2022), Canadian International Merchandise Trade Web Application, https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/71-607-x/2021004/imp-eng.htm.

[13] Statistics of Japan (2022), e-Stat: the portal site of official statistics of Japan, https://www.e-stat.go.jp/en.

[8] UN COMTRADE (2021), UN COMTRADE database, https://comtrade.un.org/.

[10] USITC (2022), USITC DataWeb: the premier source of free U.S. trade & tariff data, https://dataweb.usitc.gov/.

[14] USITC (2021), COVID-19 Testing Supplies One Year into the Pandemic, https://www.usitc.gov/publications/332/working_papers/wp_id_21_076_covid-19_testing_supplies_compiled_052121-compliant.pdf.

[16] USITC (2020), COVID-19 Related Goods: The U.S. Industry, Market, Trade, and Supply Chain Challenges, https://www.usitc.gov/publications/332/pub5145.pdf.

[6] WTO-IMF (2022), WTO-IMF COVID-19 Vaccine Trade Tracker, https://www.wto.org/spanish/tratop_s/covid19_s/vaccine_trade_tracker_s.htm.

Annex 1.A. COVID-19ワクチン製造におけるグローバル・サプライチェーン

 
附属表 1.A.1. COVID-19ワクチンの製造は幅広い国々で行われている
ワクチンの種類別

COVID-19ワクチンタイプ

COVID-19ワクチン製造元

特殊な投入財

製造国

充填・仕上げ

プロセス

mRNA

ファイザー/ビオンテック

脂質ナノ粒子: 米国、

英国、オーストリア、ドイツ

米国、ベルギー、ドイツ、アイルランド、ブラジル1

米国、ベルギー、ドイツ、フランス、スイス、イタリア

モデルナ

脂質ナノ粒子: 米国、フランス、スイス

米国、スイス、スペイン、オランダ

米国、スペイン、フランス、韓国

アデノウイルス

アストラゼネカ

英国、米国、ベルギー、オランダ、インド、オーストラリア、日本、アルゼンチン、タイ

英国、米国、イタリア、ドイツ、オーストラリア、日本、メキシコ、ブラジル

ジョンソン・エンド・ジョンソン

オランダ、米国、インド

米国、イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、インド、南アフリカ

プロテイン

ノババックス

チェコ、スペイン、米国、英国、韓国、インド、日本

ドイツ、米国、英国

注: 1 生産開始は2022年の予定。

出典: Brown and Bollyky (2021[3]).

Annex 1.B. COVID-19製品とワクチンのHSコード

 
附属表 1.B.1. WCOのCOVID-19関連物品リストにおけるフェイスマスクと保護メガネのHS6桁コード

製品グループ

製品名

HS6桁コード

顔面及び目の保護具

セルロース/紙製マスク

4818.90

顔面及び目の保護具

繊維製のフェイスマスクで、交換可能なフィルターや機械部品を持たないもの。外科手術用マスク、不織布製の使い捨てマスクなど。これには、N95粒子状物質用保護マスクが含まれる。

6307.90

顔面及び目の保護具

生体防御のための機械部品または交換可能なフィルターを備えた防毒マスク。また、保護メガネまたはフェイスシールドを内蔵したマスクも含まれる。

9020.00

顔面及び目の保護具

保護メガネ、ゴーグル

9004.90

顔面及び目の保護具

プラスチック製フェイスシールド

3926.90

 
附属表 1.B.2. WCOのCOVID-19関連物品リストにおけるCOVID-19検査及び診断検査に用いる器具のHS6桁コード

製品グループ

製品名

HS 6桁コード

COVID-19 検査キット / 診断検査に使用される機器・装置

COVID-19検査キット ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)核酸測定に基づく診断用試薬

3822.00

COVID-19 検査キット / 診断検査に使用される機器・装置

COVID-19検査キット 免疫反応に基づく診断試薬

3002.15

COVID-19 検査キット / 診断検査に使用される機器・装置

COVID-19診断検査機器・装置 臨床検査室で体外診断に使用される機器

9027.80

COVID-19 検査キット / 診断検査に使用される機器・装置

綿棒とウイルス輸送用培地のセット(ウイルス試料を維持するための培地が入ったバイアルと試料を採取するための綿棒のセット)

3821.00

 
附属表 1.B.3. 必須COVID-19ワクチン投入財のWTO共同指標リストに基づく一部のワクチン投入財

製品グループ

製品名

HS 6桁コード

COVID-19ワクチン

ワクチン

3002.20

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン

2923.20

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

SM-102: ヘプタデカン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシロキシ)ヘキシル)アミノ)オクタン酸エステル

2922.50

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)

2922.50

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

コレステロール(LNP)

2906.13

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

一塩基性リン酸カリウム

2835.24

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

二塩基性リン酸ナトリウム二水和物

2835.22

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

トロメタミン;トロメタミン塩酸塩

2922.19

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

酢酸

2915.21

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

酢酸ナトリウム

2915.29

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA

塩化カリウム

3104.20

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA、アデノウイルス

塩化ナトリウム

2501.00

COVID-19ワクチン:不活性成分 - mRNA、アデノウイルス

化学的に純粋なショ糖、固形状

1701.99

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

ポリソルベート-80

3402.13

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

2-ヒドロキシプロピルシクロデキストリン

3505.10

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

クエン酸一水和物

2918.14

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

クエン酸三ナトリウム二水和物

2918.15

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

エタノール

2207.10

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

水酸化ナトリウム、固体

2815.11

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

水酸化ナトリウムの水溶液(ソーダリーまたは液体ソーダ)

2815.12

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

塩酸

2806.10

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

L-ヒスチジン;L-ヒスチジン塩酸塩一水和物

2933.29

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

塩化マグネシウム六水和物

2827.31

COVID-19ワクチン:不活性成分 -アデノウイルス

エデト酸二ナトリウム二水和物

2922.49

COVID-19ワクチン:消耗品

使い捨てバイオリアクター用バッグ

3926.90

COVID-19ワクチン:消耗品

液体保存袋、エチレンのポリマー製

3923.21

COVID-19ワクチン:消耗品

バイオ医薬品液の無菌ろ過、保存、移送用のフィルター内蔵プラスチックバッグ、エチレン系ポリマー

3923.21

COVID-19ワクチン:消耗品

液体保存袋、その他のプラスチック製

3923.29

COVID-19ワクチン:消耗品

バイオ医薬品液の無菌ろ過、保存、移送用のフィルター内蔵プラスチックバッグ、その他のポリマー

3923.29

COVID-19ワクチン:消耗品

三角フラスコ、石英などの溶融石英製

7017.10

COVID-19ワクチン:消耗品

エルレンマイヤーフラスコ、0℃から300℃の温度範囲において、線膨張係数が5×10-6/ケルビンを超えないその他のガラス製

7017.20

COVID-19ワクチン:消耗品

三角フラスコ、その他のガラス製

7017.90

COVID-19ワクチン:消耗品

細胞培養地

3821.00

COVID-19ワクチン:消耗品

PETG滅菌ボトル

3923.30

COVID-19ワクチン:消耗品

試薬、試薬パック、実験キット

3822.00

COVID-19ワクチン:消耗品

滅菌コネクター、プラスチック製

3917.40

COVID-19ワクチン:消耗品

保護材に組み込まれた微多孔性プラスチック膜材料

8421.29

COVID-19ワクチン:消耗品

流体用フィルター

8421.29

COVID-19ワクチン:消耗品

多様なバイオプロセス工程で使用されるフィルター、チューブ、プラスチック部品からなる使い捨ての組立品

8421.29

COVID-19ワクチン:設備

バイオリアクター(生物反応器)、熱制御機構付き

8419.89

COVID-19ワクチン:設備

バイオリアクター(生物反応器)、機械的装置を備えているが加熱又は冷却を行わないもの(加熱またはは冷却用流体を循環させる二重壁システムでないものを含む)。

8479.89

COVID-19ワクチン:設備

医療用・外科用・実験用滅菌器

8419.20

COVID-19ワクチン:設備

ボトル、缶、箱、袋、その他の容器への充填、閉栓、密封、ラベル貼付用機械、ボトル、瓶、チューブ、その他の容器へのカプセル用機械

8422.30

COVID-19ワクチン:設備

マイクロ流体・ナノ流体ミキサー

8479.82

COVID-19ワクチン:設備

培養撹拌機

8479.82

COVID-19ワクチン:設備

クロマトグラフィーシステム

9027.20

COVID-19ワクチン:設備

クロマトグラフィー装置の一部

9027.90

COVID-19ワクチン:設備

温度自動調節器、マノスタット、油圧・空圧機器を除く、調整・制御用機器・装置

9032.89

COVID-19ワクチン:包装用品

バイアル瓶

7010.90

COVID-19ワクチン:包装用品

ガラス瓶用金属製圧着シール

8309.90

COVID-19ワクチン:包装用品

ストッパー、加硫ゴム製(硬質ゴムを除く))

4016.99

COVID-19ワクチン:輸送と保管

プラスチック製保冷容器

3923.10

COVID-19ワクチン:輸送と保管

チェスト型冷凍庫、容量800リットル以下

8418.30

COVID-19ワクチン:輸送と保管

直立型冷凍庫、容量900リットル以下

8418.40

COVID-19ワクチン:輸送と保管

ドライアイス

2811.21

COVID-19ワクチン:投与

粘着剤層を有する粘着包帯およびその他の物品

3005.10

COVID-19ワクチン:投与

注射器

9018.31

COVID-19ワクチン:投与

針、金属製

9018.32

出典:WTO joint list of critical COVID-19 vaccines inputs (Version1.0), https://www.wto.org/english/tratop_e/covid19_e/vaccine_inputs_report_e.pdf .

担当

Andrea ANDRENELLI (✉ andrea.andrenelli@oecd.org)

Javier LOPEZ-GONZALEZ (✉ javier.lopezgonzalez@oecd.org)

Silvia SORESCU (✉ silvia.sorescu@oecd.org)

1.

例えば、検査キットとフェイスマスクとの明らかな違いは、検査キットの場合、消費する瞬間に様々な材料を組み合わせるのに対して、フェイスマスクの投入物(例えば、製紙用パルプ、石油、ポリプロピレン、アルミニウムなど)は、製造のより早い段階で組み合わされ、最終製品の一部となる (OECD, 2020[4])

2.

広範な国々で利用可能な最新のデータを記録する上で、利用可能な貿易データベースの間に差がある。フランスの研究機関、CEPIIのBACIデータは、輸出入国の申告を調整したHS6桁の貿易データを提供しているが、現在データが入手可能な最新年は2019年である。ITC Trade MapやUN COMTRADEなどのデータベースは、2021年第4四半期までの月次の貿易データを提供しているが、国別データの収録内容は異なる場合がある。CEPII BACIデータベースの推計では、2019年の世界全体のワクチン貿易額は324億米ドルであるのに対して、ITC Trade Mapでは(利用可能な国のサンプル数は少なく)313億米ドルである。ITC Trade Mapによる2020年の試算は、325億米ドルである。2021年の数値は、2017年1月から2021年6月までの月次データが入手できた52カ国をもとにしている。これらの国は、CEPII BACIデータによると、2019年のヒト医療用ワクチン(HS 3002.20)の世界貿易額の99.4%、世界貿易量の98.7%を占めており、世界動向を表す代表サンプルとなっていることが分かる。

3.

この分析では、ワクチンの貿易額に 焦点を当てる。ワクチン数の貿易のマッピングについては、WTO-IMF Vaccines Trade Tracker (WTO-IMF, 2022[6])を参照されたい。

4.

附属表 1.A.1 は、Brown and Bollyky (2021[3])の分析に基づいて、ファイザー/ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカ/オックスフォード、 ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノババックスなど一部のCOVID-19ワクチンについて2020~21年に出現した製品別、地域別製造サプライチェーンを示している。

5.

これには、EU域内(25億ユーロ)およびEU域外(23億ユーロ)の輸出が含まれている。

6.

OECD (2021[2])は、COVID-19ワクチンの製造、輸送、投与には様々な材料、原料が必要であることを強調していた。そうした投入物には、細胞培養地、化学成分、様々な種類の脂質ナノ粒子、使い捨てリアクターバッグ、フィルター、バイアル瓶などが含まれる。

7.

WTO Joint Indicative List of Critical COVID-19 Vaccine Inputs の HS6 桁レベルに基づくグループ分け。「消耗品」には、使い捨てのバイオリアクター用バッグ、フィルター、細胞培養地などが含まれる。「包装材料」には、バイアル瓶、金属製圧着財、ストッパーなどが含まれる(附属書表1.B.3)。

8.

充填・仕上げ(Fill and finish) は、バイアル瓶にワクチン原体を充填し、医薬品を包装して流通させる仕上げの工程を指す。多くのワクチン製造会社は、ワクチンの充填と仕上げに第三者を利用している。

10.

これらの数値は、2020年7月に10桁レベルに改良される前の、フェイスマスクを含む8桁コード(6307.90.98)における変化を参照している。

11.

これらの数字から明白なのは、あまり目立たない国内供給の役割である(コラム 1で解説)。ビジネスステートメントによると、米国における年間生産量は2019年と比較して2020年には3~4倍になったと推定される (Bown, 2021[15]; USITC, 2020[16]) 。しかし、フェイスマスクの国内供給量の変化に関する正確な情報は、比較できるほど詳細には得られない。

12.

これらの国がこれらの品目に専用の税関コードを導入したタイミングが異なるため、危機の初期段階におけるマスクの貿易を詳細にマッピングすることはできない。

13.

COVID-19 検査は、RT-PCR検査と(迅速)抗原検査を指す。

14.

米国は例外で、フロック加工された鼻腔用綿棒(HTSコード5601.22.00.50)、PCR実験試薬(HTSコード3822.00.50.50)専用の税関コードを作成した。抗原実験用試薬のコード(HTS コード 3822.00.10.10 、3822.00.10.90) は、COVID-19 よりも前のものである。

15.

増加率は、2020年3月~2021年11月と2018年3月~2019年11月の期間の差として算出される。CEPII BACIデータベースによると、2019年の実験用試薬の輸出国としては米国が1位、ドイツが2位、オランダが4位、ベルギーが12位であった。

16.

CEPII BACI データベースによる推計。

17.

ITC Trade Map データベースによる推計-期間内に入手可能な国々のサンプルに基づく。

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