要旨

本稿は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機の始まりから1年間に実施された様々な中小企業・起業関連政策措置を、これまでに得た教訓と今後実施される政策への意味合いを明らかにし、政府が中小企業の復興と危機対応能力を支援する実証に基づく政策を構築するのを支援するという観点から分析している。中小企業がパンデミック初期に経済活動の途絶のまっただ中でどのような状態にあったか、そしてそれから1年が経ち、特に創業間もない若い企業とスタートアップ、自営業者、そして女性経営者または少数者が経営者の企業がさらに不安定さが増した状態にあることを明らかにしている。政府は、中小企業と起業家への支援策を迅速に導入したが、パンデミックが始まってから1年が経ち、緊急時の流動性支援は依然として必須だが、それは長期的に持続可能ではなくマイナス影響を及ぼす可能性があるため、復興支援のためにも対処する必要があるという、複雑なジレンマを抱えている。本稿では、各国政府が次の3つの課題に対処するのを助けるための、15の教訓を解説している。1. 中小企業の流動性危機を回避するための支援策を継続しつつ、その副作用を抑える;2. この緊急支援の段階的撤廃によって中小企業が倒産の危機に陥らないようにする;3. 中小企業の復興を支援する有効な政策を採り入れる。

 
主な問題点

パンデミックが始まって1年が経ち、その間に得られた下記の15の教訓は、ポスト・コロナ時代に有効で効率的かつ一貫性のある中小企業・起業政策をどのように立案すべきか、有益な考察を与えてくれる。

  1. 1.

    中小企業・起業政策支援の利用方法を簡素化し、デジタル提供システムを有効にすることで迅速に実施しつつ、説明責任と有効性を守る;

  2. 2.

    可能な限り、政策支援の大将を採算が取れている既存の企業とスタートアップに絞る;

  3. 3.

    復興に向けて革新的な新ベンチャーの可能性を広げるようにスタートアップ政策を切り替える;

  4. 4.

    支援策を包摂的で、中小企業の中でも特に女性、少数民族の起業家など脆弱なところに届くようにすべきである;

  5. 5.

    自営業の起業家に関しては、政策アプローチを再考する;

  6. 6.

    中小企業の過剰債務と財政危機を、株式、準株式、その他の債務ではない支援によって回避する;

  7. 7.

    緊急流動性支援措置について、確かな判断に基づく撤退戦略を策定する;

  8. 8.

    創造的破壊のプロセスを機能させ、起業に再挑戦する機会を支援し、公正な移行を保護する;

  9. 9.

    「より良い復興」プログラムに、中小企業と起業家が置かれた状況とその視点を反映させ、彼らの復興を支援するのに適したものにする;

  10. 10.

    中小企業と新企業の復興の基礎として、デジタル化に焦点を当てる;

  11. 11.

    中小企業、スタートアップ、規模を拡大する企業の危機管理能力を向上させる対策を採る;

  12. 12.

    中小企業・起業政策枠組みの先見の明、危機対応能力、反応性を強化する;

  13. 13.

    多元的ガバナンス・メカニズムの有効性と包摂性を確保する;

  14. 14.

    中小企業と起業家、そして彼らを代表する組織が、政府のパンデミック対策と復興計画の策定過程に関与する;

  15. 15.

    政策のモニタリングと評価に関して、中小企業と起業のためのCOVID-19政策対応が提示する独特の課題と機会を検討する。

 はじめに

本稿は、OECD起業・中小企業・地域・都市センター(Centre for Entrepreneurship, SMEs, Regions and Cities, CFE)が、中小企業と起業に関するOECD作業部会(Working Party on SMEs and Entrepreneurship, WPSMEE)の議論に資するために作成した。1 同作業部会は、中小企業・起業政策の策定、実施のために実証に基づくガイダンスを提供している。本稿は、COVID-19によって中小企業と起業家が被っている影響を分析し、1年前のパンデミックの始まり以来実施された中小企業・起業政策措置を評価している。過去1年の経験から教訓を得て、政府が起業家と中小企業の復興支援において前進できるよう手助けすることを目的としている。

本稿はWPSMEEのために作成されたもので、COVID-19が中小企業に及ぼしている影響と、政府による政策対応に関するこれまでの研究を発展させている。そうした研究には、 “Financing SMEs and Entrepreneurs: An OECD Scoreboard Special Edition: the impact of COVID-19” (OECD, 2020[1])やCOVID-19に対する中小起業向け政策対応に関するポリシーノート (OECD, 2020[2])などがある。本稿は、中小企業と起業家が被ったCOVID-19の影響と、それを支援する政策対応の詳細な分析に基づいている。その中には、パンデミックの発生から12カ月間、2020年2月から2021年2月に60カ国で実施された中小企業・起業政策対応の概要とタイムライン、そして32カ国で行われた中小企業に関する180の調査データが含まれる。2 本稿の結論は、SME and Entrepreneurship Outlook 2021(OECD, 2021[3])にも収録されている。

本稿には、有効かつ効率的で革新的な中小企業・起業政策から得られた15の教訓が収録されている。こうした政策は、確かな判断に基づく撤退戦略、政策の焦点、中小企業の過剰債務の回避、中小企業と起業の問題を熟慮した復興戦略、有効かつ効率的な政策の実施に関する、短期、長期双方の課題に取り組んでいる。OECD中小起業・起業戦略(SME and Entrepreneurship Strategy)は、WPSMEEの旗艦プロジェクトで各国政府の中小企業・起業政策強化を支援することを目的としており、これらの教訓を元にして、2021年には指針となる原則と、ポスト・コロナ時代の有効、効率的かつ一貫性のある中小企業・起業政策のための一連の運営ツールを開発することになっている。

本稿ではまず、COVID-19が中小企業と起業に及ぼしている影響と、1年前のパンデミック発生以来導入された様々な政策措置に関する背景情報を提供している。それに続いて、2020年中に中小企業とそうした政策当局に関して得られた15の教訓を明らかにし、ポスト・コロナ時代に有効で効率的かつ一貫性のある中小企業・起業政策を実施するための課題と機会について論じている。

 背景

COVID-19危機により経済活動が大きく混乱し、世界中の国々が長期にわたり影響を受けると見られている。ワクチン接種が進み楽観論も出てきているが、短期的な見通しは不透明である。世界の生産高は、2020年は3.4%下落した (OECD, 2021[4])。経済成長は2021年には5.6%に回復すると予測されているが、その回復は、ウイルスの変異株の広がりと有効なワクチンの普及に左右される。ワクチンが普及すれば、予備的貯蓄と政府による外出制限措置の必要性が低下するであろう。

 中小企業と起業家への影響

COVID-19危機の影響をより強く受けているのは、大企業より中小企業で、その弱点が明らかになった。このような不均衡な影響には、次の理由がある。

  • 危機の影響が最も深刻だった産業部門、特に卸売り・小売り業、航空会社、宿泊・飲食サービス業、不動産業、専門サービス業、その他の対人的サービス業には、中小企業が多い。経済全体では中小企業が雇用に占める割合は約60%であるのに対して、これらの産業部門ではOECD諸国平均で75%に上る。この割合は、国ごとに大きな差がある。例えばギリシャとイタリアでは、COVID-19の影響を受けた産業部門の雇用のほぼ90%が中小企業であるのに対して、英国では約50%である(OECD, 2020[2])

  • 企業規模が小さいほど財政的に不安定であることが多く、現金保有額(cash buffer)も規模が大きい企業より少ない。そのため、小規模企業は危機対応能力が低い。例えば米国では、中小企業の半数が、27日分未満の手元資金で運営されている (JP Morgan and Chase Co., 2020[5])。さらに、規模が小さい企業ほど、市場を含め他の資金源を得ることが難しい。その一方で、こうした企業の方が留保利益と従来型の銀行負債に大きく依存している場合が多い。

  • 小規模企業は、比較的大きい企業と比べて供給網の機能が弱い。グローバル・バリュー・チェーンに直接あるいは間接的に統合されている中小企業が受けた供給網の途絶の影響は、大企業より早く深刻だった。総じて、中小企業の備蓄は少なく供給ネットワークも小さいため、供給網の途絶と価格上昇に対して脆弱である (WTO, 2020[6])。同様に、有利な支払い条件を獲得するための交渉力も弱い。2020年2月から3月に欧州の中小企業を対象に実施された大規模な調査の結果によると、回答者の51%がCOVID-19危機の最中に支払いの遅れによって流動性が圧迫されたと答えたが、2019年に行われた同じ調査では39%だった。さらに、希望するより長期の支払い期間を受け入れざるを得なかった中小企業の割合が、顕著に増加した (Intrum, 2020[7])

  • 現在のパンデミック危機において危機対応能力を構築する助けとなるデジタルツールとテクノロジーについても、小規模企業では導入が遅れている(OECD, 2021[8])。例えば、ドイツの危機前のデータによると、テレワークの普及は企業規模によって大きな差がある。比較的大きい企業の方が、信頼に基づく労働時間調整(テレワークを機能させるための必要条件)を小規模の企業より多く用いている (OECD, 2020[9])。調査結果によると、パンデミックにより中小企業のデジタルテクノロジーの利用が増加したが、それも各国間で大きな差がある。それと同時に、中小企業−特に小規模企業−と大企業との差も依然として大きく、中小企業によるデジタルテクノロジーの導入は、大企業の約半分程度である (OECD, 2020[2])

  • 既存の小規模企業は、大企業(及びスタートアップ)と比べて事業運営を現状に適応させるのが難しい場合が多く、運営スキルの制約を抱える場合が多い。例えば、中小企業は消費者と雇用者の安全を守るための新たな規制枠組みを遵守する管理能力に欠けている場合が多い。同様に、中小企業は、比較的大きい企業やスタートアップと比べて、工程においても財・サービスにおいても革新性が低い(OECD, 2019[10])

小規模企業のこうした脆弱さは、危機の発生時から、運営コストの削減より収益の急減のほうが速いペースで現れ、非常に大きな中小企業の流動性危機を招く可能性があった。

2020年1月1日から4月1日の間に、米国の中小企業の収益の落ち込みは40〜50%で(Kim, Parker and Schoar, 2020[11])3 、2021年1月の収益も対前年比で依然として31%少なかった。オーストラリアの中央銀行によると、2020年3月1日から9月30日の間の小規模企業の売上げは15%減少した。4 アイルランド中央銀行の推計では、2020年の中小企業の売上高の減少分は、103億ユーロから117億ユーロに上る(Lambert et al., 2020[12])。OECDが2020年2月以来モニターしてきた32カ国の中小企業から得られた180を超える調査結果によると、パンデミックの始まり以来、中小企業の70〜80%が収益、売上げの深刻な落ち込みを経験している。いくつかの調査によると、この収益の落ち込みは30〜50%程度である。5 スペインの中小企業機関CEPYMEが2021年2月に発表した研究によると、国全体で新たにロックダウン措置が採られた場合にスペイン企業が一週間に失う収益総額は18億ユーロで、その内の60%が中小企業の収益である。6

 政策

世界中の国々の政府は、COVID-19のパンデミックによって中小企業が抱えているかつてないほど大きな課題に、多様な刺激策、支援策で素早く強力に対応した。こうした措置は、様々な形で緊急流動性支援に注力しているが、次第に構造的な支援と幅広い復興パッケージが付随するようになった。中央政府と地方政府の双方が、この政策的取り組みに加わった。

政策の種類

中小企業向け政策対応は、注目される流動性の問題を緩和することを目的としたものと、構造支援を目的としたものに分類できる。

流動性支援措置は一般的に、次の2つのカテゴリーに分類できる。

  • 時短労働措置や賃金助成制度を含む、雇用維持措置。この政策は企業と自営業者を対象とし、失業率の急激な上昇を防ぎ、消費者の需要を高めることを目的としている。

  • 所得税と法人税、付加価値税、社会保険料、年金保険料の課税猶予、負債の返済猶予、賃料と公共料金の支払免除、金融コストと利子の支払い免除または削減は、運営コストを削減することで中小企業の流動性を維持することを目的としている。

  • 負債による資金支援。例えば、借入保証の拡大と簡略化、公的機関からの借入、銀行に頼らない資金調達、補助金や助成金、転換負債を含む株式または準株式による資金調達など。

構造支援措置は、中小企業が変化するビジネス環境に適応し危機対応能力を構築できるようにすることを目的としている。その中には、次のカテゴリーがある。

  • テレワークや電子商取引を含むデジタル化支援。

  • イノベーションと技術開発への支援。パンデミックに関連するイノベーションに焦点を当てる政策もあれば、より幅広い競争力支援に注力する政策もある。

  • スキルの向上、再訓練への支援。

  • スタートアップ支援。

  • 新たな代替市場開拓への支援。

  • 持続可能性への支援。

これらの個々の構造的支援のカテゴリーについて、各国はビジネス開発サービスと助言、バウチャー、助成、訓練、ネットワーク作りといった様々な方策を用いている。

各国は、2020年6月頃からその焦点を「より良い復興」のための政策パッケージに移行させ始め、このような構造支援措置はより幅広い公的投資制度と需要刺激策の一環になった。

図1は、55カ国で2021年2月までにCOVID-19対策として採り入れられた中小企業支援のための金融及び構造措置の概要である(多くは危機前からあった零細・中小企業支援の公的措置に追加された)。このグラフから、一部の措置が他のものより幅広く利用されていることがわかる。例えば、何らかの賃金助成は、情報収集された55カ国中51カ国で採用されており、支払い猶予は55カ国中50カ国で採用されている。3番目、4番目に広く採用されている政策は、金融措置である。具体的には直接貸付と借入保証で、それぞれ48カ国、46カ国で採用されている。借入保証は高所得国(39カ国中37カ国)と高中所得国(12カ国中8カ国)で最も広く採用されているが、低中所得国では採用されていない。自営業者向けの措置も、高所得国では広く採用されている(39カ国中30カ国)が、高中所得国ではあまり採用されておらず(12カ国中3カ国)、低中所得国では全く採用されていない。助成と債務支払いの一時停止の利用は、国によって大きな差がある。

この図からは、構造的措置の方があまり採用されていないこともわかる。ほとんどの政策について、こうした措置を中小企業向けのCOVID-19対策に盛り込んでいる国は、半数未満であった。このグループの中で最も利用されている政策はテレワークとデジタル化支援で、33カ国が採用しており、製品とサービスのイノベーション支援は、30カ国で採用されている。政策対応に最も含まれていないものは、持続可能性支援措置である。

 
図 1. COVID-19危機対策として各国で採用された中小企業支援措置、各国の所得水準別(2020年2月〜2021年2月)

注:グラフ内の棒は、その措置を採用した所得グループ内の国の数を表している。パーセンテージは、その所得グループ内でその措置を採用している国の割合を表す。所得による国の分類は、世界銀行のデータを元にしている。OECDが政策措置を追跡調査している39カ国が高所得国、12カ国が高中所得国、4カ国が低中所得国グループに分類されている。

出典: Annex A 及びOECD (2021), “An in-depth analysis of one year of SME and entrepreneurship policy responses to COVID-19: lessons learned for the path to recovery”, OECD SME and Entrepreneurship Papers, forthcoming, OECD Publishing, Paris.

支援の取り組みの強度にも、大きな差がある。IMFのデータによると、高所得国は開発途上国と比べて、対GDP比で特に貸付、株式、保証による支援に多くを費やしている。OECD諸国間でも大きな差があり、イタリアとドイツの支援はカナダ、韓国、オーストラリアよりかなり手厚く、後者は税控除措置(below-the-line measures)より歳入と支出措置を多く活用している。

優先順位付け

パンデミックの波が襲来するタイミングも外出制限措置の厳しさも様々だが7、多くの場合、中小企業向け政策対応はおおよそ同じような優先順位に従っている(図2):

  • パンデミックの第一波が襲来して外出制限措置が採られたとき、労働者と消費者の健康リスクへの対策として、各国政府は早急に中小企業向けの支援策と助言を行い、中小企業の大規模な流動性危機を回避するために様々な措置を採った。財政支援は(新規または既存の財政措置と金融政策で)それを必要とする中小企業全てを迅速に支援するために提供されることが多かった。

  • この緊急の初期支援措置は、多くの国々で2020年3月ごろに始まったが、それに続く段階では各国は支援が十分有効で、影響を受けている中小企業全てに行き渡るようにするために、支援措置を改善、拡大した。この段階は、ほぼ6月まで続いた。

  • 感染率が下がり始めても(多くの国々で2020年5月、6月頃)、中小企業が引き続き問題を抱えていることを受けてほとんどの国々の政府がその流動性支援措置を維持したが、より選択的(かつ場合によっては条件付き)になり、撤退戦略の準備を開始した。

  • しかし、この一時的な傾向は、再び感染率が上昇し外出制限措置が再開された2020年9月以降に逆転したが、タイミングは国によって異なった。多くの場合、夏の間予測された流動性支援の暫定的な改革はさらに延期され、、また−多くの場合−、例えばグラントと(準)株式の利用拡大を通じて中小企業支援が強化され、2021年第4四半期まで継続された。

  • この流動性支援と並行して、各国は中小企業向け政策対応への構造支援措置、特にデジタル化、スキル開発、イノベーション、新市場へのアクセスに関わる支援措置を徐々に追加した。危機が始まったときから、新規及び既存の措置を用いてそうしていた国もあれば、2020年4月以降に行った国々もあるが、その強度には大きな差がある。例えば、中小企業のデジタル化支援を採用する国の数は増加している。2020年7月には、パンデミック下で中小企業のデジタル化支援措置を採用している国は、60カ国中13カ国だった(OECD, 2020[2]) 。この数は、2021年第1四半期までに28カ国に増加しており、新たなロックダウン措置を背景に更なる中小企業のデジタル化が求められていることと復興パッケージが採り入れられていることの双方を反映している。

  • 2020年6月以降、様々な国々が、構造政策支援があまり含まれない緊急の流動性支援から、復興と危機対応能力を中心とした支援へと移行しており(図2の一番下の棒)、中小企業支援措置は「より良い復興」を視野に入れて、グリーン化、デジタル化、イノベーションとスキルに向けたより一般的な投資の一環となった。こうしたパッケージは、ドイツでは6月に始まり、欧州では2020年7月にNew Generation EU agreementの下で重要度を増している他、オーストラリア、カナダ、日本、韓国、米国で新パッケージに含まれたが、そこには、導入が進んでいるが特に公的投資に焦点が当てられている構造支援措置と、経済成長を再活性化するための需要刺激策が含まれており、そのほとんどは中小企業だけでなく実業界全体を幅広く対象としている。

 
図 2. 中小企業向け対策の優先順位(2020年3月〜2021年3月)

 COVID-19への中小企業・起業向け政策対応の1年:15の教訓

パンデミックが発生してから1年、世界中の多くの国々が再びロックダウンを行っている。中小企業は、この危機の発生時よりさらに脆弱になっているため、各国は流動性救済措置を延長、拡大している。「より良い復興」のための複合政策に着手する国が増加しており、また、最初の段階でパンデミックの副次現象にどう対処するかということについて得られた教訓も活用して、前進するために短期措置の必要性とより長期的かつ構造的な政策のバランスを取ろうとしている。コラム1では、短期及び長期の双方の課題に取り組む中小企業・起業政策当局向けの主要な教訓を概観している。この課題については、本節で詳細に論じている。

 
コラム 1. 中小企業・起業向けのCOVID-19政策対応から得られた教訓
  1. 1.

    中小企業・起業政策支援の利用方法を簡素化し、デジタル提供システムを有効にすることで迅速に実施しつつ、説明責任と有効性を守る;

  2. 2.

    政策支援の対象を、可能な限り既存の採算が取れている企業とスタートアップに絞る;

  3. 3.

    復興に向けて革新的な新ベンチャーの可能性を広げるようにスタートアップ政策を切り替える;

  4. 4.

    支援策を包摂的で、中小企業の中でも特に女性、少数民族の起業家など脆弱なところに届くようにする;

  5. 5.

    自営業の起業家に関しては、政策アプローチを再考する;

  6. 6.

    中小企業の過剰債務と財政危機を、株式、純株式、その他の債務ではない支援によって回避する;

  7. 7.

    緊急流動性支援措置について、確かな判断に基づく撤退戦略を策定する;

  8. 8.

    創造的破壊のプロセスを機能させ、起業に再挑戦する機会を支援し、公正な移行を保護する;

  9. 9.

    「より良い復興」プログラムに、中小企業と起業家が置かれた状況とその視点を反映させ、彼らの復興を支援するのに適したものにする;

  10. 10.

    中小企業と新企業の復興の基礎として、デジタル化に焦点を当てる;

  11. 11.

    中小企業、スタートアップ、規模を拡大する企業の危機管理能力を向上させるための対策を採る;

  12. 12.

    中小企業・起業政策枠組みの先見性、危機管理能力、対応力を強化する;

  13. 13.

    多元的ガバナンス・メカニズムの有効性と包摂性を確保する;

  14. 14.

    中小企業と起業家、そして彼らを代表する組織が、政府のパンデミック対策と復興計画の策定過程に関与する;

  15. 15.

    政策のモニタリングと評価に関して、中小企業と起業のためのCOVID-19政策対応が提示する独特の課題と機会を検討する。

 1. 中小企業・起業政策支援の利用方法を簡素化しデジタル提供システムを有効にすることで、支援を迅速に実施しつつ、説明責任と有効性を守る

各国の中小企業政策当局は、パンデミックと外出制限措置、それが中小企業に与える影響に対して、かつて例がないほど迅速に対策を採った。実際、2020年3月から4月は、最も多くの中小企業政策イニシアチブに着手された期間として、歴史に刻まれるだろう。迅速な支援提供のためには、政府支援を受けるための管理基準を引き下げることと、デジタルによる支援提供システムという2つの要素が、特に重要だったと見られる。

1つ目の要素だが、中小企業の大半が流動性不足に陥るリスクがあったため、公的支援措置を手元資金が限られているあらゆる中小企業が受けられるようにされており、迅速な支援提供のために資格基準が広げられていた。英国と米国の例から、そのような広範な制度で短期間で多数の受益者に支援を提供することができたということがわかる。例えば、英国のBounce Back Loansは、英国ビジネスバンクが実施したもので、既存の顧客に対する借入の承認が24時間から72時間以内に下りるが、借り入れた企業の35%から60%が債務不履行になると推定している(National Audit Office, 2020[13]) 。同様に、米国のPaycheck Protection Programmeの資格基準も広く設定されており、対象の絞り込みも限定されていた(Opportunity Insights, 2020[14])。他にも様々な国々がパンデミックの第一波の最中、スピードを重視して支援措置の受付を簡略化した。

2番目の支援の迅速な提供の要素は、よく開発されたデジタルインフラであった。例えば、スイスと韓国は様々な情報源からの情報をまとめ、起業家のために行政負担を軽減した支援受付のための、簡略かつ利用しやすいデジタルポータルを設け、支援要求に迅速に対応した。スイスの「信用の橋渡し(“bridging credit facilities”)」(危機対策として導入された直接融資)の申請プロセスは、完全にオンライン化されており、利用者の便宜をできる限り図っている。その結果、借入は30分ででき、プログラムが導入されて最初の数週間の申請が非常に増加した。

これら2つの側面は、いずれも教訓を与えてくれ、各国の支援のスピードの違いを明らかにしてくれる。支援の利用の簡略化は、多くの国々で目標となっており、例えば手数料の撤廃(イタリア、ポーランドなど)、承認までの期間の短縮(イスラエルなど)、個々の中小企業に合った支援の提供(フランスなど)などが実施された。このような迅速な手続きの経験は、将来的にも中小企業・起業家支援の提供に活かされるだろう。同様に、資格基準の拡大や事前の資格審査の緩和は、リスクに基づく中小企業政策支援の提供について、教訓を与えてくれる。しかし、このように迅速で利用しやすい支援は予期しない結果を招くこともあり、支援の説明責任の有効性に影響を及ぼし、国によっては支援措置が意図した人々に届いているのか、または支援を必要としていない(または受給資格がない)人々に提供されているのではないか、という疑問が提起されている。例えば、米国では一部の影響評価によると、Paycheck Protection Programme (PPP)が雇用の維持に与えた効果はそれを受給しなかった企業と比べてわずか3%に過ぎず (Opportunity Insights, 2020[14]) 、またPPPの資金が常に意図された受益者の手に渡っていたわけではない(CNBC, 2020[15])。パンデミックの発生から1年が経ち、中小企業政策当局にかかる時間的制約は依然として高く、迅速な支援提供は引き続き必須である。しかし、各国は危機の初期段階で得た教訓をすでに活かしている。例えば、米国のPPPは、初期の課題に対処するために2020年12月に更新された。説明責任の強化と迅速な支援提供、受給資格の拡大の間でうまくバランスを取る方法についての教訓を共有することが、引き続き重要である。

支援提供のスピードの差は、国のデジタルツールの活用度と密接に関連しているようである。デジタル政府の機能については、OECD加盟国間でも大きな差があり(OECD, 2020[16])、各国が中小企業と起業家向けの政策対応のデジタルによる提供をいかに備えられていたかということを表している。例えば、エストニアでは危機以前からデジタルインフラが確立されており、その中でも特に企業と市民にあらゆるデジタルサービスを提供しているデジタルIDシステムと、一度きりの企業データ収集を可能にし、それをあらゆる公共部門に利用できるようにするX-roadプラットフォームが企業への支援提供で有益あることが証明された。

もう1つの好例が英国銀行(Bank of England)で、現在中小企業のために資金利用を促すプラットフォームを開発中である。このプラットフォームは、中小企業の融資の申し込みを容易にし、貸主のために透明性を向上させるOpen Data Platformと「ポータブル・クレジット・ファイル("portable credit file")」を提供するために、許可ベースのデータ共有基準を活用することになっている。アプリケーション・プログラミング・インターフェース(APIs)を用いれば、機密事項である金融データを中小企業の意のままに、安全に第三者のプロバイダと共有することができる。その結果、貸主は保険会社と公益事業会社、格付け機関が保有するデータ、ソーシャルメディアや政府のデータ源に簡単な承認でアクセスできる。それによって、より豊富な中小企業の信用情報を構築することができ、管理プロセスが短縮され、中小企業がより多くの貸主に接触しようとするときの障壁を解消し、中小企業の資金ギャップが縮小することになる (Bank of England, 2020[17])。さらに、新規申し込みの審査プロセスが短くなると、消費者はその信用情報を他の資金提供者と共有でき、市場における選択と競争が拡充される。

これらの例から、各国がデジタルツールとデータを、中小企業への迅速な支援提供にどのように活用しているかということを相互に学ぶことには、非常に大きな可能性があることがわかる(OECD, 2020[18]) 。パンデミックから1年、「スピードが求められる(‘need for speed’)」(OECD, 2021[4])一方で、透明性、説明責任、公平性を確保することも、引き続き非常に重要である。

 2. 政策介入は、それを最も必要としている採算企業を対象とすべき

概して、パンデミック発生時の政策支援は、それを必要とする全ての中小企業に開かれており、ほとんど紐付きではなかった。その結果、その受給率は総じて高かった。例えば、米国では70%もの小規模企業が、2020年上半期に公的緊急猶予措置の支援を受けた (Foroohar, 2020[19])。アイルランドでは、2020年5月4〜31日の間に(臨時の賃金助成制度を除く)政府支援を受けた企業は10社中約6社に上り、同期間に臨時の賃金助成制度を利用したと報告した中小企業も同じくらいの数に上った (Central Bank of Ireland, 2020[20])

こうした高い受給率は、2020年中に倒産が大幅に増加するのを抑える一助になったとして、多くの点で成功と見なされている。しかし、一部の国々が融資の利用を広げ相対的に利用しやすくしたことと、破産、倒産手続きを変更したことも、予期しない結果を招いた可能性がある。まず、支援を必要としていない企業に対して支援が行われ、効率が下がったり援助提供のコストが増加したりした可能性がある。一部の実証によると、実際にそのような事例があった。(Gourinchas et al., 2020[21]) によると、支援を必要としていなかった中小企業までその支援を受けていた例があり、またリスクが大きい企業に対象を絞った場合の介入コストは妥当(対GDP比0.54%)だが、対象を絞らない助成ではコストが大幅に高くなる(対GDP比1.82%)可能性がある。しかし、世界銀行によると、世界中の小規模企業(特に開発途上国の)は、支援を受けられる可能性が最も低かった(Apedo-Amah et al., 2020[22])

第2に、支援措置によって非生産的な不採算企業8 が破綻せずに操業し続けている可能性があり (Bank for International Settlements, 2020[23])、中長期的に経済の活力と競争力にマイナスの影響を及ぼしうる。この点については、実証が限られている。(Schivardi, Sette and Tabellini, 2020[24]) は2020年6月発表の論文で、COVID-19危機における「ゾンビ融資」のリスクは限定的だと述べている。オランダで行われた調査によると、COVID-19の支援は、主に経営状態がよい企業に向けられた (Groenewegen, Hardeman and Stam, 2021[25])(Anderson, Papadia and Veron, 2021[26]) によると、ゾンビ企業のリスクは、例えば支援の手段がどのように設計されているかなど、国によって異なっている。(Abay, Tafere and Woldemichael, 2020[27]) では、パンデミックのせいで生産性が低い部門から高い部門に相当規模の再配分が行われたと指摘されている。 (OECD, 2020[28]) によると、現金不足になるリスクが高い企業のほとんどは、利益を上げられる採算企業である。企業の自己資本を評価すると、流動性不足に陥るとみられる企業のうち破産しそうな企業の割合は相対的に小さい(約10%)。さらに、たとえ支援の一部が利益を上げていない企業に渡ったとしても、中小企業の倒産が急増しないように幅広く支援を迅速に行う必要性と比べれば、避けられない代償と考えることができる (Anderson, Papadia and Veron, 2021[26])

しかし、パンデミックの発生から1年が経ち、対象を絞らない支援のマイナス影響のリスクが高まっている。特に、緩い金融政策と2020年7月以来の流動性措置の延長、例えば一部の国々で行われているローン保証の範囲を100%まで拡大することといった措置は、商業銀行が生産性や支払い能力が弱い企業に貸付を継続するのを後押しする可能性がある。さらに、危機以前に採算が取れていても、1年という困難な期間に短期的な資金不足以外にも収益性を脅かす問題を抱えた中小企業がさらに増加した可能性がある。このリスクは、今回の危機について特に顕著である。それは、この危機が転機をもたらす性質を持っており、パンデミック以前には成功していた活動やビジネスモデルの長期的な収益性に疑義が生じているからである。

前進するためには、政策当局はこうしたリスクをよりよく考慮する必要がある。ある程度復興が始まり賃金と利率が上昇すると、低採算企業は生き残りが難しくなる可能性がある (PIIE, 2020[29])。さらに、政策当局は支援を本当に必要としている採算企業向けにプログラムを調整することを検討すべきである。これは、事前の資格要件を厳しくしたり、助成の審査に条件を設定したりすることで実現できる。一例として、労働市場政策は、的を絞らない政策では労働力を拡大する企業に移行させることができない可能性があるという認識から、既存の労使関係の保護から失職のリスクがある労働者への支援(他の雇用機会を探すため)にシフトする可能性がある。支援を最も必要としている産業と活動に集中することは、より的を絞ったアプローチの一例で、例えば接客業や観光業で採用が増えている。

しかし、「もともと不採算の企業を支援するリスクは、採算が取れる生産性のある企業を拙速に清算してしまうリスクとバランスを取る必要があるため」(Demmou et al., 2021[30])、このようなプロセスは注意深く管理する必要がある。この「代償(trade-off)」(Anderson, Papadia and Veron, 2021[26]) は、パンデミックと支援措置が長期化すればするほど複雑になる(第6節も参照)。主な問題は、パンデミックで苦しんでいるが本質的には採算が取れていて支払い能力がある中小企業を倒産に追い込むことを回避することである。従来の尺度では現金不足または破産とされてしまう企業でも採算が取れている場合もあれば、一見採算が取れているように見えるけれど構造的には不健全または持続不可能なビジネスモデルの企業もある(Group of Thirty, 2020[31])。「採算が取れる」事業の特定に、従来の基準とプロセス、例えば貸借対照表のデータまたは最近の信用履歴や既存の破産取り決め(insolvency arrangements)などを用いることは、今回のような大規模なショックでは有効ではなく、再評価が必要になる可能性がある(Kamal-Chaoui, 2020[32]) (OECD, 2020[33])

フィンテックによって可能になった代替的メカニズムは、リスク評価の新しい方法を与えてくれるかも知れない。実際、企業の流動性は企業の銀行口座の決済数で測ることができる。アルゴリズムとビッグデータの解析で、様々な地域の決済を分類することができ、さらに企業の将来の採算性を推定することも可能になる (Finextra, 2020[34])

 3. 特に革新的な新ベンチャーの起業率を高める

スタートアップは、パンデミックの発生時に最も大きな影響を受けた、最も脆弱な中小企業であった。危機の結果、新ベンチャーの40%以上が、事業を3カ月維持するための現金しかない、いわゆる「レッドゾーン」に陥った (World Economic Forum, 2020[35])。こうした企業は、そのリスク特性が上昇したため、投資家のリスク回避傾向が高まったことの影響を特に受けたと見られているが、それと同時に、政府支援の利用においても特に問題に直面した。

複数の調査結果から、危機の直前に開業した若い企業が、パンデミックの影響を特に被った。危機の直後には、スタートアップ4社のうち3社が、収益の減少と流動性ポジションの問題に直面した。調査に回答したスタートアップの41%が、生き残るためには今後3カ月間資金を集める必要があると回答した(Startup Genome, 2020[36])。さらに、政府支援を受けるには、前年までに存在していて利益を上げていたという証明を求められる場合が多いため、スタートアップは危機の直後にはその支援を受けることが難しかった。

パンデミックの第一波は、起業率の大幅な減少にもつながった。2020年3〜4月の起業率は、対前年同月比でポルトガルでは70%、ハンガリーでは46%、フランスでは54%、トルコでは57%下落した(Calvino, Criscuolo and Verlha, 2020[37]) 。ドイツでは、2020年上半期に2019年の同期と比較して9.4%下落し9、英国では新事業の立ち上げ率が2020年3月には19%、4月は29%、5月は3%下落した。10

しかし2020年下半期には、国によってパターンは異なるものの開業率が回復し始めた (Djankov and Zhang, 2021[38])。オーストラリア、チリ、オランダ、ニュージーランド、トルコ、英国、米国などでは、新企業の登録数が夏の間増加し続け、2020年第2四半期には急増した。フランスと韓国では、夏季の始めには開業率が上昇したが、第二波の見通しが不明であることや秋に新たな外出制限措置が導入されたことを反映して、8月から再び下落し始めた。しかし、フランスでは2020年の開業率の伸びが5.5%と、新企業数が新記録を達成しており、2021年2月にはさらに増加した。11 ベルギー、ドイツ、ハンガリー、アイルランドなどでは開業率が全体的に若干下落したのに対して、ポルトガル、ロシア、スペインでは、20%以上落ち込んだ。新事業立ち上げのプロセスが効率的な国ほど、2020年の開業率が高かった (Djankov and Zhang, 2021[38])

開業率が今後どのように変化するか、またその上昇が2008年以降見られたような「必要に迫られた起業(Necessity-driven entrepreneurship)」12 の増加、または(世界金融危機の時よりも)革新的な起業にとってより有利な条件によるものであるのかは、まだ不明である。一部の国(イスラエルなど)で2020年末にスタートアップ資金のための市場が活況を呈したことは、より革新的な新ベンチャーの役割が増えていることを示唆している可能性がある。2020年末から2021年初頭に再び外出制限措置が採られたせいで開業率がさらに落ち込めば、若い企業やスタートアップは雇用創出に大きな貢献をしており復興のためにも重要であるため、そうした企業の潜在的な「ロスト・ジェネレーション」が雇用に及ぼす影響は大きくなる可能性がある。15カ国の企業レベルデータを用いたシミュレーションでは、市場に参入する企業の数が20%減少すると、ショックから3年経っても雇用が全体的に0.7%少なく、ショック後14年経っても0.5%少なくなることが実証された (Calvino, Criscuolo and Verlha, 2020[37])

危機の直後には、公的措置は特にスタートアップを対象としておらず、多くの流動性緩和措置は受給資格基準のせいで、新ベンチャーが容易に利用できるものではなかった。スタートアップ対象の救済措置を開始する国が増え(例えば、オーストリア、カナダ、デンマーク、ドイツ、フランス、イタリア、マレーシア、オランダ、ポルトガル、スイス、英国)、またより一般的に、初期段階の資本(early-stage equity)やスタートアップ支援など他の措置を流動性パッケージに含めた国もある(例えば、オーストラリア、ベルギー、ドイツ、ハンガリー、リトアニア、オランダ、スウェーデン、米国) (OECD, 2020[2]) 。例えば、フランスとドイツはそれぞれ40億ユーロ(45億米ドル)、20億ユーロ(22億米ドル)のスタートアップ基金を(公的ベンチャーキャピタル投資家からの追加資源で)他の政策対応の一環として含めた。スイスは、流動性問題を抱えたスタートアップを支援する保証制度を導入した(State Secretariat for Economic Affairs, 2020[39])。そしてハンガリーでは、Hiventuresという国有ベンチャーキャピタルファンドが、予算41億ハンガリー・フォリント(1億3940万米ドル)のスタートアップ救済プログラムを設置した。

しかし、緊急支援から復興支援への移行の一環として、政府はスタートアップ金融を超えて起業を後押し(イノベート)する政策に重点を置くことを検討する必要がある(Potter, 2020[40])。これは特に重要である。なぜなら、一部の国々では2020年夏以降起業率が回復しているが、その回復はより革新的な企業の増加のおかげである一方、そこには必要に迫られた起業の増加がある程度反映している可能性があるからである。実際、COVID-19によって進んだより長期的な変化は、知識、スキル、ネットワークを新興市場の機会に向け直す能力を備えた新たなスタートアップにチャンスをもたらす可能性があり、政府はそれを支援することができる(World Economic Forum, 2020[35])。様々な措置で初期段階のエクイティファイナンスをさらに刺激するべきだが、それに加えて、政府は行政手続きを簡素化するればそれがさらにスタートアップの取引コストを削減することにもなり、また、電子政府手続きを採用(例えば、オーストラリア、シンガポール)を採用しすることで規制の不透明性を軽減することができ、新たなベンチャーのイノベーション支援になる。

複数の国々が、「より良い復興」計画に、革新的な新企業に対する支援を盛り込んでいる。例えば、フランス政府は2020年9月に公表された包括的なFrance Relance 計画の一環として、特にR&Dとイノベーション、エクイティファイナンス、特定の活動に対する支援措置などの分野で起業を支援する追加措置を採った。スタートアップのエコシステムは、起業のための訓練とビジネス支援をメンタリング、アイデアシェアリングのプラットフォーム、クラウドファンディングといった形で提供するので、その育成も重要である。そのエコシステムの他の関係者を支援する政策は有益である。例えばイタリアでは、スタートアップが起業支援プログラムや促進プログラムを活用するのを後押しするために、政府が1000万ユーロの助成を開始した (OECD, 2020[2])

マレーシアでは、政府が2020年7月にNational Technology Innovation Sandbox (NTIS) を開始したが、これは、短期国家経済復興計画(PENJANA) の一環として導入されたものである (Kementerian Sains, Teknologi dan Inovasi, 2020[41])。NTISは、サンドボックス・ソリューション(より自由度の高い実験場)という形でスタートアップを直接支援するもので、スタートアップや中小企業が自社のビジネスモデルと配送機構(delivery mechanisms)を「安全な」環境で、また特定の規制がイノベーションを妨げないようにするために緩和された規制要件の下で、規制当局と協力して試せるようにすることを目的としている (Digital News Asia, 2020[42])

新しい革新的なスタートアップを後押しすることの重要性は、パンデミックから得られた教訓と見なすことができる。

 4. 支援が、中小企業と起業家の中でも脆弱なところに届くようにする

COVID-19のパンデミックにより、少数者や女性が経営する企業が不当に打撃を受けた。その理由には、このような企業がパンデミックの影響が最も深刻な業界に集中していること、余剰資金が比較的少ないこと、様々な資金源の利用が限られていることなどが挙げられる。女性経営者の企業は、平均すると男性経営者の企業より比較的小さく若い。女性経営者の企業は自己資金で経営されているか、友人や家族から資金を得ている場合が多く、金融資産が比較的少ない。さらに、女性は外部の資金源を利用しづらく、財政スキルも男性と比べて低い。女性起業家はパンデミックによる経営リスクについて、助言を得られる相談機関や専門のアドバイザーなどの専門家との連絡があまりない (OECD, 2020[43])

Facebook、OECD、世界銀行が2020年5月に集めたデータによると、女性が経営する中小企業は男性経営者のそれと比べて廃業した割合が7ポイント高かった。地域間で差はあるが、廃業率の男女差が最も大きかったのは北米(14ポイント)と南米(11ポイント)だった (Facebook, OECD and World Bank, 2020[44])。図3は、世界中の全ての地域で、廃業率において少なくとも6ポイントの男女差があることを示している。

 
図 3. 中小企業の廃業率における男女差、地域別

注:Future of Business Surveyは、2020年5月28〜31日に実施され、企業経営者3万人が参加した(Facebook, OECD and World Bank, 2020)。

女性起業家がより大きな影響を受けたことは、他の研究でも確認されている。ドイツでは、女性自営業者は男性よりも収益の減少を経験した人の割合が35%高かった(Graeber, Kritikos and Seebauer, 2020[45])。カナダでは、女性経営者の企業の方が、労働者を一時解雇した割合が高かった。労働者の80%以上を一時解雇した企業は、女性経営者の企業のうち62%であったが、小規模企業全体の平均では45%だった。13 米国商工会議所の報告によると、第一波が終息した後も、米国では女性起業家の方が復興に対してあまり楽観的ではなかった。14

米国のデータによると、少数者の起業家もパンデミックの影響が深刻だった。 (Fairlie, 2020[46]) は、米国におけるCOVID-19の影響を観察しているが、それによると、2020年2月から4月までに330万人(22%)の経営者が廃業したが、アフリカ系アメリカ人が経営する企業の廃業率は41%、ラテン系は32%、アジア系は26%だった。米国商工会議所が2020年11月前半に行った小規模企業対象の調査によると、経営者の74%がパンデミックを乗り越えるために更なる政府支援が必要と答えた。その割合は、少数者が経営する企業では81%だった。15 連邦準備制度の2021年初頭の調査結果によると、白人経営者の企業の約54%が、自社の財政状況を「まあまあ(fair)」または「乏しい(poor)」と回答した。しかしその割合は、アジア系経営者では79%、黒人経営者では77%、ヒスパニック系経営者では66%だった。16

政策当局は、継続的な支援の中で、中小企業の多様性と中小企業の中でも脆弱なグループに特有の環境を考慮して、中小企業の一部が政策対応の恩恵を受けられないというリスクを避ける必要がある。男女差、人種差を考慮した具体的な計画が、復興のための公平な機会を確保する上で鍵を握っている。政策当局は、少数者や女性経営者の企業が受けるCOVID-19パンデミックの影響がそれ以外の企業の影響と異なっていることを理解するだけでなく、こうした企業が適切な支援を受けられるように包摂的な計画を立てる必要がある。しかし、こうした計画の例は今のところ限られている。

例えば、カナダは、パンデミック救済措置の一環として女性起業家に的を絞った支援を実施している。1500万カナダドル(1170万米ドル)の基金が、女性起業戦略基金(Women Entrepreneurship Strategy Fund)に割り当てられ、女性起業家がパンデミックのリスクを管理する能力を強化できるよう幅広い支援サービスを提供している。また、カナダは2020年9月に2億2100万カナダドルの黒人企業家向けイニシアチブを開始した。17 このイニシアチブには、ナショナルエコシステムファンド(National Ecosystem Fund)、黒人起業家向け融資基金(Black Entrepreneurship Loan Fund)、黒人起業家向け知識ハブ(Black Entrepreneurship Knowledge Hub)などがある。米国では、更新されたPaycheck Protection Programmeが2020年12月に始まり、少数者の企業向けの支援が含まれている。

アイルランドでは、Women in Business 2020行動計画が、女性起業家がパンデミック後に抱えるリスクを理解し、優先すべき政策領域を明らかにしようと努めている。その中には、男女別のデータが必要な救済プログラムの把握、より多くの女性のオンラインサポートへの参加、例えばパートタイム・マネージャー助成などによるアイルランド企業へのジェンダー多様性のメリットの啓発などがある(OECD, 2020[47])。さらに、カナダの貿易委員会サービス(Trade Commissioner Service)が提供するCanExport SMEs Programmeは、「先住民と女性が経営する小規模事業向けにサービスを提供する」ことを目的としている (Government of Canada, 2020[48])

マレーシアでは、短期国家経済復興計画(Short-term National Economic Recovery Plan)の一環として、女性起業家に的を絞った2つのイニシアチブが危機対策として導入された。1つは、民間銀行2行と協力してマイクロファイナンスに資金提供するというもので、投資総額は4億リンギット(1億米ドル)でそのうち5000万リンギット(1250万米ドル)が女性起業家に特化したものである。2つ目のイニシアチブは、零細企業、特に女性起業家の資金調達を助けるために基金を立ち上げることを目的としており、5億リンギット(1億2500万米ドル)が集められた (TMF Group, 2020[49])

パンデミックの1年間で得られた女性起業家、少数者の起業家が受けた影響と、彼らの支援の利用が限られていることに関する教訓は、現在開発中の「より良い復興」パッケージに反映させることができる。

 5. 自営業者に関する制度設定の再考

自営業者は、パンデミック発生時から強い影響を受け(Block et al., 2020[50])、それから1年たった今も、彼らは依然として悪戦苦闘している。例えば、オーストラリアの2020年4月のデータによると、パンデミックが始まって以来労働時間が経済全体では9%減少しているのに対して、自営業者の場合は32%減少しており18、自営業者の80%が悪影響を受けており、その内50%はその影響が深刻だと答えた (Biddle et al., 2020[51])。このような自営業者への影響が大きいという傾向は、2020年夏季にわたって続いた。2020年9月に公表されたインドの調査によると、自営業者の86%が悪影響を受けており、25%が所得がゼロになったと回答した。19 英国のデータによると、2020年夏季には前年夏季と比較して自営業者の数が8%減少しており20 、2020年11月までに100万人の自営業者がパンデミックのせいで借金をせざるを得なくなり、第一波から回復した人はほとんどいない。21 調査データによると、EU諸国では、自営業者の大半が雇用者のいない個人事業主で、こうした人々がCOVID-19危機の間に失業する可能性(13%)は、雇用主がいる自営業者の場合(2.3%)と比較して遥かに高い (European Foundation for the improvement of Living and Working conditions, 2020[52])

自営業者は公的機関との強い関係を築いておらず、政府支援の利用が困難になる場合が多い (OECD, 2020[53])。自営業者は非常に多様で、全てのタイプの自営業者に支援を提供できるように政策当局が受給資格の基準を設定するのは非常に難しい。自営業の労働者は幅広い産業部門にわたっており、また所得分配の上位から下位まで分布している (OECD, 2020[53])。さらに、活動の仕方も様々である(例えば、フルタイム、パートタイム、季節労働者、複数の仕事をかけ持ちで働く人など)。こうした多様性により、支援を必要とする一部の自営業者のが公的プログラムの支援を受けられずにいる可能性がある。

パンデミックの発生時から、多くの国々が、既存の起業家または雇用者向け支援措置では自営業者の状況を充分に考慮できていないとして、自営業者に的を絞った措置を実施した(OECD, 2020[2]) (Biddle et al., 2020[51]) (Blundell and Machin, 2020[54])。英国では、高技能の自営業者、特に限定された企業にのみサービスを提供している人々が、政府支援を受けられず、疎外感を抱いている。自営業所得支援計画(Self Employment Income Support Scheme, SEIS) は、自営業者に平均月収の80%の課税給付を行っている。この制度には250万人の自営業者が申請しており受給率は非常に高いが、エディンバラ大学の調査データによると、自営業者の4分の3が受給資格を持っていない。実際、自営業者の73%は、個人事業主(sole trader)としてではなく有限会社(limited company)として経営されていたため、受給資格がなかった。さらに、受給要件のせいで新規の自営業者または年間の収益が5万ポンド(66500米ドル)を超える自営業者は、申請ができなかった。その一つの対策として、英国政府は受給要件を緩和し、より多くの企業が申請できるように最低所得水準を撤廃した (University of Edinburgh, 2020[55])。さらに、2020年10月に、政府は収益の20%ではなく40%を保障できるように次回のSEISの額を2倍に増やした。それにより、支給額の上限は1875ポンド(2500米ドル)から3750ポンド(5000米ドル)に引き上げられた。

しかし、感染の第1波の影響が落ち着いた後でも、自営業者の脆弱な状態が続き、イスラエル、韓国、スペイン、英国などでは2021年第1四半期まで政策支援が行われた。

自営業者を社会保障、税制、医療保険の政策枠組みに組み込むという議論はパンデミック以前からあり、多くの国々でギグエコノミーの台頭と自営業の役割と結びつけられていた。COVID-19危機により自営業者の脆弱性に注目が集まり、この議論が今後の議題になり、既存の規定をこうした起業家や労働者の実情に沿ったものにする機会になるかも知れない。

 6. 中小企業の過剰債務と財政危機を回避する

パンデミックの発生以来、各国政府は、中小企業の現金不足を緩和するために、大規模な支援を主に負債による資金調達という形で実施してきた。この支援は、中小企業の流動性危機に対処するために必要なものだったが、多数の企業、特に外出制限措置が再び実施されたときに生き延びるために引き続き負債に頼らざるを得ない企業は、その返済に苦慮する可能性が高い。

中小企業の負債の増加度合いの推定値は、様々である。フランス銀行は2020年12月時点で中小企業の負債額が5237億ユーロに達したと推定している。22 英国では、2020年7月半ばの推定ではパンデミックのせいで中小企業の負債額が500〜560億ポンド増加していた(TheCityUK, 2020[56])が、2021年1月下旬には、パンデミックの発生以降に中小企業が利用した融資額は、Coronavirus Business Interruption Loan Scheme (CBILS) とBounce Back Loan Scheme (BBLS)という2つの措置だけでもすでに682億ポンドに達したと推定している。23 カナダの小規模企業連合であるDFIBは、カナダの平均的な小規模企業のCOVID-19関連の負債額は10万米ドル、小規模企業の負債総額は1170億カナダドルに上ると推定している。24 オーストラリアでは、2020年10月の推定によると、パンデミックが終息したときに非生産的負債400億豪ドルが中小企業の貸借対照表に残ると推定されている。25 20212月に公表された英国の中小企業対象の調査結果によると、中小企業の63%がCOVID-19支援融資を返済できないと予測されており、負債として173000ポンドが残ると推定されている。26

調査結果によると債券よりも株式、準株式を利用する方がいくつものメリットがあり、復興が始まった時に投資と成長について受益者によりよい見通しを与えることができる。最も重要なことは、負債よりも株式を利用する方がレバレッジ比率が下がり、したがってデフォルトの可能性も低くなる。レバレッジ比率が低いと、受益者の信用格付けが改善され、そのため借入コストが下がり、クレジットを利用しやすくなる。最後に、株式持ち分は、民間部門からの共同投資に役立つため、中小企業により多くの資金を向けることができる(OECD, 2020[57])。しかし、中小企業の金融商品は購入が限られており、また広く受け入れられていない場合が多い(例外は高い可能性を持つスタートアップと中小企業)という点を、政策で考慮するべきである。需要サイドの問題には、中小企業の持ち主がその所有権が弱まることと投資家に投票権を与えることをためらうこと、中小企業所有者が株式に馴染みがないこと、取引コストが高いことなどから躊躇することが挙げられる。

政策的に重要な検討事項は、流動性不足に対処する方策を検討すると同時に、受益者のレバレッジ比率を高めないことである(Demmou et al., 2021[30]) 。株式、準株式を含め、可能性のある措置には次のものがある。

  • グラント支援:グラント支援の主な利点は、零細企業から、追加の負債を負わないと成長の可能性が限られてしまう中小企業まで、幅広い企業が恩恵を受けることである。賃金助成から失われた収益または固定費の保障、デジタル化やスキルの向上、再開支援など、様々な目的のグラントの利用が増えており、チリ、アイルランド、スウェーデンなどで導入されている。

  • 転換社債:転換社債は、借主が負債を返済できない場合に資本に転換することができる。この種の金融商品は、借主である中小企業にも貸主である銀行にも利益をもたらす。中小企業は流動資産を金利ゼロで手にすることができ、企業の成長可能性にも影響がなく、銀行には中長期的に資本を回収する機会がある。英国のFuture Fundは、中小企業向けに25万ポンド(33万2500米ドル)から転換社債を組んでいる。それを利用するためには、中小企業は株式投資を事前に最低25万ポンド(33間2500米ドル)まで引き上げるといったいくつかの条件を満たす必要がある。 (British Business Bank, 2020[58]).

  • 返済免除融資(loans eligible for forgiveness)貸付機関の中には、一定の条件の下でローンをグラントに転換するところがある(つまりそのローンは返済の必要がなくなる)。米国のPaycheck Protection Programme は、小規模企業に雇用を維持させるための融資である。一定の雇用維持基準を満たすと、その融資は返済が免除される。もう1つの例は、ロシアが導入した中小企業向け融資で、その企業が雇用者の90%を維持した場合に金利が消滅し融資の返済が免除される(Russian Small and Medium Business Corporation, 2020[59])

  • 劣後ローン:劣後ローンは、すでにオーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリアなどで利用されている。この融資は、清算の際に、主要な負債の返済後に支払えばよいというものである。

  • 株式ファンド/転換社債:企業の資本の配当金は、通常一部の大企業または革新的なスタートアップ専用であったが、一部の新しい制度が中小企業のために設けられたり、または既存の制度が拡大されたりしている。例えば、フランスの公的投資銀行Bpifranceは、1億ユーロ(1億2100間米ドル)近い資金を持つ中規模企業向け強化基金FDPMEを2020年3月に設立した。さらに、政府はFrench Tech Bridgeを設立した。この制度では、民間部門からの共同投資が必要で、特に高い能力を持つスタートアップ、通常は「ハイテク」部門のそれを対象としている。Bpifrance Entreprises 1という新しい基金も2020年10月1日に設立され、プロフェッショナルではない投資家が1500社の中小企業と若い企業に6年間投資することができ、それがこうした企業の新たなエクイティファイナンスの源になる。

  • エクイティ・クラウドファンディング:クラウドファンディングは、企業が株式、分配収益、転換社債などを売ることで資本を増やす資本市場債券よりも、若干幅広い中小企業の資金ニーズに対処できる。負債ではなく資本を増やすニーズに対応するために、一部の国々の政府は中小企業が一般投資家から資金を得られるように新たな規制を行った。米国では証券取引委員会が、Regulation Crowdfundingで規定されているように、募集プロセスを加速させ資金を早く利用できるようにするために、一定の資格基準を満たしている証券発行人に柔軟性を与える臨時の規定を公表した。さらに、その規定では10万7000〜25万米ドルの株式募集を行っている発行人の特定の資産報告書の審査を免除している (US Securities and Exchange Commission, 2020[61])

  • 中小企業の資本強化のための租税政策:政府は租税政策により中小企業への民間投資のインセンティブを高めることができる。ベルギーでは、COVID-19パンデミックの影響を受けているスタートアップと中小企業への民間投資を誘致する税制優遇措置が実施されている。例えば、2020年3月から4月に売上げが最低30%減少した小規模企業の新規株式を個人が直接購入した場合、個人所得税が20%控除される (Agentschap Innoveren & Ondernemen, 2020[62])。また、スタートアップから直接新株を購入、またはクラウドファンディングを行った場合、30%から45%の所得税が控除される (Agentschap Innoveren & Ondernemen, 2020[62])

中小企業の現金不足を負債を増やさずに救済する未開拓、または異例の手段もあり、政府が関心を持つ可能性がある。例えば、税金と引き換えの現金払いの仕組み(cash-against-tax-surcharge schemes)は、企業に現金を移転し、それを受け取った企業は業績が回復したらすぐ、その利益に対してより高い税を支払わなければならないというものである。債務証券と対照的に、この移転は無条件の返済義務を課しておらず、返済はその企業の実績次第である。さらに、受益者は、企業と投資家が事前に設定した価格での買い取りなどにより、この措置から早期に脱退することが可能である。年間手数料と撤退コストとのトレードオフの構造により、成功している企業には早期に買い取るインセンティブが生まれる。このような仕組みは、現在EUレベルでEuropean Pandemic Equity Fund (EPEF)を通じて試験的に導入されており (Boot et al., 2020[63])、様々な形態と状況が提案されている(Brülhart et al., 2020[64])。同様の考え方で、オーストラリアの中小企業、家内工業オンブズマンは、返済が収益によって決まる公的ローンの導入を提案した。

その他の開発中の長期ハイブリッド措置は、柔軟な分配収益方法を用いた投資ファンドで、企業の収益が返済に充てられる。これにより投資家は、返済を投資される企業の財政の健全性と結びつける一方で、準株式ファンドを相対的に幅広い小規模企業に提供できる。2020年4月8日に開始され欧州投資ファンド(European Investment Fund, EIF))が管理するEuropean Scale-up Action for Risk capital (ESCALAR)は、高い成長率を誇る拡大企業の融資格差を埋めることを目的とした株式投資を行う。これは上限を決めて、負債をエクイティ特性を分散させるリスク調整済みの返済を行うもので、それがなければこのようなリスクが高い資産に投資しないであろう投資家を誘致しようとしている。1億ユーロ(1億2100万米ドル)が一つの基金に投資され、全体として3億ユーロ(3億6300万米ドル)になる予定である (European Investment Fund, 2020[65])

中小企業の高いレバレッジと破産のリスクを軽減する別の方法が、既存の負債の返済を繰り延べることである。様々な国々が融資の満期や元本返済の猶予期間を延長している。例えば、2020年11月にシンガポールは、分割払いの金額の引き下げと、融資の返済期間の延長という中小企業の返済繰り延べに関わる2つの新たな仕組みを導入した。27 2021年3月には、スペインが110億米ドルの更なる経済対策を実施し、中小企業と自営業者に助成、コスト削減、資本強化を通じて支払い能力支援を提供している。このパッケージには、次の3つの基金が含まれている。国が保障する融資の繰り延べのための30億ユーロの基金で、銀行が管理する;中小企業の資本構成を改めるための10億ユーロの準備金で、国有金融会社、Cofidesが管理する;70億ユーロの危機の影響を受けた自営業者と中小企業に対する払戻不要の直接援助。28

最後に、中小企業の債務増加の影響に対処するには、破産した企業の返済繰り延べをうまく行うために、破産制度をさらに改革する必要があるだろう。そのためには、中小企業は公式の破産プロセスの中では清算されるリスクが高いため、非公式の負債繰り延べと和解による解決の促進を含む、中小企業向けの具体的な措置を確立する必要があるかも知れない(Demmou et al., 2021[30])

 7. 責任ある撤退戦略を準備する

2020年春のパンデミックの第一波で中小企業向け政策措置が導入された後、多くの国々の注目は、そのような支援を撤退する戦略に次第に向けられるようになった。しかし、秋に新たなパンデミックの波が襲いロックダウン措置が採られると、各国は緊急支援を延長、拡大し、撤退戦略の議論はワクチン接種が進むまで一時停止した。公的金融支援措置を拙速に撤退すると、大規模なワクチン接種が行われてロックダウンの解除が目前に迫っているのに、採算企業が倒産するリスクが高まる。それと同時に、政策対応がマイナス影響を及ぼすこと、緊急支援措置を無期限に継続することが望ましくないことも次第に明らかになっている。前節で述べたように、それは不採算企業の事業を継続させ、中小企業の負債が膨らむことにつながる可能性がある。各国政府は、支援を拙速に唐突に終わらせることのないようにすると同時に、責任ある撤退の全体像とロードマップを含む責任ある撤退戦略を準備すべきである。

そのような撤退が自明ではないということは、過去に危機の直接的な影響を回避するために策定された多くの措置が、実際にはより長期間継続したことからも明らかである。例えば、2008〜09年の金融危機の後、世界中の国々の政府は、信用保証制度、直接貸付制度、ビジネスアドバイザリーサービス、信用斡旋といった新たな政策ツールをその政策パッケージに導入した。政府による支援プログラムを長期にわたって分析した結果、こうした措置の多くが危機から10年経っても、(パンデミック前の)中小企業が資金調達をしやすかった環境下でも残っていた。公的支援へのニーズが減少し要望や利用が大幅に減少しても、大抵はその措置は撤廃ではなく、例えば資格要件などが修正されたり、量や受益者数が減少したりして残された (OECD, 2020[1])

同様に、COVID-19パンデミック対策として導入された新しい制度の中には、臨時に策定されたものでも、現在の危機が終息したときに政策の中の永続的な一部になりうるものがある。例えば、危機対策として新設された信用保証プログラムを、2020年よりは小規模であっても、維持しようとする国があるかも知れない。また、ドイツの長く続いている短時間労働制度Kurzarbeitのように、危機の時に利用できる短時間労働制度を維持し、危機対応能力を後押ししようとする国もあるだろう。

責任ある撤退戦略を準備するにあたり、各国は下記の点を考慮すべきである。29

  • 支援制度には、健康と経済情勢に基づいて調整できる期限を設ける。

  • 政府が復興に向かう道筋をどのように考えているかというロードマップを提示する。その中で、健康と経済のデータに基づいて支援をいつ、どのように定期的に評価するのかという段階、基準点を明確にし、中小企業についての長期ビジョンを含める。

  • 支援措置を段階的に撤廃したり支援の寛大さを引き下げたり、例えば就労しない時間に関して企業により多くのコスト負担を求めたりする際に、明確なタイムラインを示す。

  • 構造支援、移行支援措置による流動性支援を徐々に併用する。構造支援や移行支援措置は、雇用者向けの求職支援やキャリアガイダンス、訓練やデジタル化の支援など、COVID-19後の移行を手助けする。

  • 中小企業とその代表者を支援政策とその撤退に関する政策策定に関与させる。

 8. 創造的破壊のプロセスを機能させ、公正な移行と起業への再挑戦を可能にする

パンデミックと外出制限措置により、多くの中小企業が一時的に休業または廃業せざるを得なかった。多くの場合、これは外出制限措置の結果で生活に必須でない事業はロックダウン中は閉鎖させられた。その他にも、供給網と販売の問題により、中小企業は少なくとも短期的に休業を余儀なくされた。一部の国々のデータによると、中小企業の廃業率はパンデミックの第一波が襲来したときに大幅に上昇したが、第一波が去り外出制限措置が多少緩和された後でも下落しなかった。米国では、操業していた小規模企業数が2020年下半期に徐々に減少し、2021年1月には前年同月よりその数が33.6%減少した。30 メキシコについては、国家統計局INEGIの2020年12月の報告によると、昨年半ば以降、中小企業全体の20.8%にあたる100社以上の中規模企業が廃業した(Mexico News Daily, 2020[66])。多くの国々で2020年秋に再びロックダウン措置が採られ、それが2021年に入っても数カ月間続いたことで、こうした中小企業の廃業率は上昇し続けている。例えばカナダでは、2021年3月に小規模企業の35%が依然として閉鎖されていた。31

しかし、パンデミックにより多くの中小企業が休業した一方で、ほとんどの場合それが2020年には倒産数の上昇にはつながっていない。中には、倒産数が大幅に増加した国もあったが(イスラエル、日本、米国)、パンデミックから1年経っても、ほとんどの国ではそうなっていない。例えば英国では、2020年第4四半期の倒産率は前年同期より27%低く、2020年第2四半期以降の倒産率は1990年以降のどの四半期よりも低かった(The Insolvency Service, 2021[67])。オランダでは、2020年11月の倒産数は過去20年で最も低く、2019年と比較すると16%低く、5カ月連続で下落している (CBS, 2020[68])。ドイツでは、倒産インデックスが2020年3月から4月の間に40ポイント下落した。カナダ統計局によると、2020年の倒産率は前年より29.5%低下した。スイスでは、2020年の破産申請数は、2019年より19%少なかった(Eckert, Mikosch and Stotz, 2020[70])32 フランスでは、2020年の倒産数は、前年より24%少なかった。33

このように倒産率に違いが生じる理由は2つある。1つ目は、その差にいわゆる破産弾性(insolvency elasticity)(GDPが1%変化した場合の倒産率の変化)の各国間の差が表れているためである(Atradius, 2020[71])。2つ目は、恐らくより重要で、倒産率の下落に政府のCOVID-19対策、特に様々な形の流動性支援と倒産制度の一時的な変更が反映しているためである。

しかし、このように経済を休止状態にしている破産法からの逸脱や流動性支援の提供は、永続できるものではない。このような政策は中小企業の倒産の急増を防ぐのに有効だが、それは、その支援がなければ倒産していたであろう企業を生き残らせている可能性もある。創造的破壊のプロセスは生産的な成長を牽引する重要な役割を担っており、それが再び機能することの重要性が高まっている。そのためには、前節で論じたように、スタートアップ政策の刷新や支援の対象を採算企業に絞り込む必要がある。政府は経済活性化策の結果を時間を追って考慮すべきで、そうすることで政策が定着する可能性がある。企業や産業部門による雇用者の一時解雇を難しくしている措置については、慎重に見直すべきである。同様に、倒産の猶予または規制は、徐々に撤廃する必要がある。

その結果、今後中小企業の倒産がこれまで少なかった国々でも増加する可能性が高い。英国国家統計局のデータによると、ほぼ25%の企業(7社に1社)が2021年4月までに閉鎖するリスクが高い(Centre for Economic Performance, 2021[72])Euler Hermes とAtradiusという信用保険会社二社は、2021年に倒産数が急増すると推定している(Euler Hermes, 2020[73]) (Atradius, 2020[71])。したがって、COVID-19危機では倒産は遅れてやってくるため、最悪の状態はまだ訪れていないということになる。

この2021年にやってくるであろう倒産の波によって、中小企業の経営者と雇用者が他の経済活動でチャンスを得られるようにするための訓練・再教育支援措置への需要が高まるであろう。多くの国々で予想されている倒産数を考慮すると、本物の起業家と再出発を可能にする「セカンドチャンス」の起業を支援する必要が生じるだろう。創造的破壊の刷新は、起業家とその雇用者が公正な移行をできるようにする政策に付随して起こる可能性がある。

 9. 「より良い復興」プログラムでは、中小企業と起業家の置かれた状況とその見解を考慮に入れる

「よい危機を無駄にない」という精神で、政府は「より良い復興」措置を徐々に増やし、幅広い復興措置を実施している(例えばドイツ、オーストリア、韓国、コロンビア、スペイン、フランス、カナダ、イタリア、オーストラリア、アイルランド、日本、スロベニア、米国、英国)。持続可能性は、こうした複合政策の中核にあり、クリーンエネルギー、資源効率、環境に優しい消費への移行を重視している。また、こうした複合政策はデジタル化、イノベーション、スキルにも力を入れている。

パンデミック発生時の緊急流動性措置は、中小企業の脆弱性を考慮して非常に中小企業志向だったが、それは、企業部門全体と公的インフラ投資、需要刺激策に焦点を当てる幅広い復興政策には必ずしも当てはまらない。「より良い復興」という旗印の下、中小企業志向ではない政策支援に移行することは、復興のための成長の可能性があらゆる規模の企業に影響するという合理的な考察である。また、より全体的な支援は中小企業にもメリットになり得る。

しかし、「より良い復興」のための新たな複合政策では、中小企業の置かれた状況を引き続き考慮し、そのニーズに応える措置を含めることが重要である。中小企業がパンデミックの最初の1年間にどのくらいの影響を被ったかを考慮して、こうした企業の復興は水平的でより的を絞った支援にする必要がある。中小企業が、デジタル化と環境への配慮がもたらす課題と機会に対処する上で必要とするものは、より大きい企業のニーズとは異なる可能性がある。

中小企業の視点を復興政策に含めている国もある。ドイツの復興プログラムには、中小企業と起業を対象とした政策が含まれており、それらは危機の打撃を受けた中小企業を、例えば流動性支援措置によって支援するものと、企業の投資、国際化、イノベーション活動にインセンティブを与えるものの双方が含まれている。コロンビアでは、中小企業のために規制環境を改善する措置を盛り込んでいる。スペインは、中小企業のデジタル化支援と中小企業の支払い能力を保護する措置を含めている。フランスは、中小企業の自己資本を強化する措置を盛り込んでいる。

更なる「より良い復興」計画を策定するにあたっては、中小企業や起業家の状況とニーズをさらに考慮すべきである。中小企業の団体には、こうした企業の意見が充分に採り入れられるように、意見聴取が行われるべきである。復興計画の影響評価を、信用のある中小企業テストに含めるべきである。

 10. 中小企業と起業家のデジタル化は、複合政策の中でも特に重視する必要がある

中小企業のデジタル化支援は、緊急支援においても復興と危機対応能力を強化するための政策においても、中心的要素にすべきである。小規模企業と比較的大きい企業との「デジタル格差」が依然として存在する中で、中小企業のデジタル化支援を政策対応に盛り込む国が増えている。この分野の措置は、大きく分けて3つある。テレワーク、電子商取引、デジタルインフラとスキルである。

例えばチリ政府は、中小企業のテレワーク化を奨励するために、テレワークを規制している労働法(Labour Code)を改訂することで、規制障壁に対処している。2020年3月に承認されたこの新しい規制は、雇用主と雇用者双方にテレワークの実施と停止について柔軟性を与えており、労働時間の上限はあるものの、その時間配分については、柔軟に決定できるようになっている。また新法では、24時間のうち12時間は、雇用者が完全にオフラインになる権利を認めている(Universidad de Chile, 2020[74])

オンライン販売の採用は、いくつかの国々が中小企業のデジタル化を推進する主要な方法の1つとして支援している。例えば、カナダでは、Shopifyの協力で行われているGo Digital Canada Initiativeで、無料の訓練の提供やデジタルマーケティングチャネルの利用などによって、小規模企業のオンラインの売上げ増加を支援している (OECD, 2020[2])。マレーシアでは、政府が国のデジタル戦略の一環として設置したDigital Economy Corporationが、政府と共同出資してeコマースキャンペーンを行い、20のeコマースプラットフォームが初心者向けトレーニングと中小企業向けセールス支援サービスを提供する予定である (OECD, 2020[2])

アルゼンチンは、中小企業が特にテレワークを利用できるように、5億3200万アルゼンチン・ペソ(860万米ドル)の予算を計上した。アイルランドは、330万ユーロ(400万米ドル)相当のDigital Trading Online Voucher 制度を実施しており、零細企業は2500ユーロ(3025米ドル)相当のオンライントレーニングを受けることができる。これは、民間のイニシアチブで補完される場合が多い。例えば、Digital Team Austria Initiative は、ハイテク産業の企業で構成されており、中小企業に最低3カ月の無料サービスを提供することを公約している(OECD, 2020[2])。マレーシアでは、政府と20のeコマースプラットフォームが共同で出資するeコマースキャンペーンが、初心者向けトレーニングと中小企業向けセールス支援サービスを提供する予定である。

いくつかの国々が、より強いデジタルインフラを構築するために、幅広いデジタル複合政策に着手している。このような支援の目的は、中小企業がプロセスを簡略化し、行政コストを削減し、規制を遵守できるように支援することである。例えばオーストラリアでは、政府が、企業が行政と規制の手続きをオンラインで行えるように支援する措置を盛り込んだ、総額8億豪ドル(60万米ドル)の複合政策を開始した。このデジタル複合政策の内容は、Digital Identityシステム開発のための支出2億5660万豪ドル(1億9240万米ドル)、5G高速インターネットの展開のための支出2900万豪ドル(2170万米ドル)、オープンバンキング促進のための支出2850万豪ドルなどである。また、規制遵守のコストを削減するためにコンピュータネットワーク上に情報を保存するブロックチェーンの利用試験のための支出690万豪ドル(520万米ドル)も含まれている(Prime Minister of Australia, 2020[75])。英国政府のDigital Access Programme CyberSafe Foundationは、中小企業1500社にCOVID-19によって発生するサイバー攻撃を特定しそれと闘うための知識とスキルを身につけさせることを目指している。フランスは、小規模企業が新たなロックダウン措置が導入されたことを受けてオンラインオペレーションを構築するのを支援するために、1億ユーロの支援を行うと公表した。34 ニュージーランドは2020年12月に、政府が出資するDigital Boostスキルトレーニングと支援イニシアチブを開始した。Digital Boostスキルトレーニングは、Digital Boostプログラムの初のイニシアチブで、 企業・技術革新・雇用省と民間部門のパートナーシップの元、数千に上る小規模企業がデジタルツールとテクノロジーを事業に用いるメリットを実現できるよう支援している。35

復興支援の一環として、こうした支援措置を明確に包摂的にし、様々な種類の中小企業の能力と要件を考慮すべきである(OECD, 2021[8])

 11. 中小企業と起業家の危機対応能力を政策目標とする

今回の危機で、パンデミックと外出制限措置に対する中小企業の弱さが浮き彫りになった。前進するためには、緊急支援から復興支援への移行だけでなく、中小企業の危機対応能力強化も重要である。危機対応能力とは、ショックによりよく対処する能力と、今後起きうるショックが中小企業に及ぼす悪影響を防ぐ政策のことである。中小企業の危機対応能力には、内的要因(現金準備金、デジタルの接続性など)と外的要因(グローバルサプライチェーンへの組み込みなど)が考えられる。

中小企業・起業政策枠組みの目的は様々だが、最も焦点を当てられるのは、競争力と生産性の伸びなどである。しかし、中小企業政策の目的に危機対応能力を含めている国はほとんどない。1つの例外はドイツの中小企業戦略36 で、危機対応能力の育成を目標の中に明示している。しかし、2020年6月移行に始まった様々な「より良い復興」政策では、危機対応能力の強化が主な目標になっている。

もちろん、危機対応能力の諸側面は、長期にわたり中小企業・起業政策において役割を果たしてきた。ほとんどの国々で、このような政策には、枠組み条件と市場の機能を改善するための措置が含まれており、それによってショックに対処するインセンティブと能力が強化されている。中小企業のイノベーションとデジタル化を支援する政策は、ビジネスモデルや製品、業務プロセスを改善する能力の改善、したがって機敏性の向上を目指している。革新的なスタートアップを支援し、創造的破壊のプロセスを促進する措置も、危機対応能力の高い起業のエコシステムに寄与できる。

しかし、COVID-19対策をさらに発展させる中で、政府が中小企業全体の危機対応能力の強化にどのように寄与できるかを、そこに反映させる必要がある。中小企業の脆弱性の中には、例えばリスクを抱えた部門に属する企業が多いこと、限られた数の供給者と消費者に依存していることなど、そう簡単には変わらない側面がある。また、その脆弱性は、現金準備金が少ないことやデジタルツールの利用度が低いこと、公的支援制度に精通していないこと、パンデミックへの対処法を定めた既存の危機管理政策に含まれていないことなどにも関わっている。こうした要因の評価、と政策によってそれを強化する方法などが、中小企業の新たなショックへの対応力を強化することに寄与するかも知れない。

 12. 中小企業・起業政策枠組みの先見性、危機管理能力、反応性

危機対応能力は、中小企業と起業家自体にとって重要性が増しているだけでなく、彼らを支援する政策枠組みにとっても重要である。パンデミックは、中小企業と起業家向けの政策枠組みと、そのような大規模ショックのもとで政策を実施する能力に対するストレステストだったと見ることもできる。その一つの側面は、既存の支援計画を用いた国の方が新たな政策を設定し(なければならなかっ)た国々よりも迅速に支援ができたか、ということである。今の段階では、その完全な評価はできない。しかし、第一波の経験から、新たな措置を設定したことが、援助実施のスピードに違いがあったことの主要因ではないことがわかる。中小企業・起業政策枠組みの危機対応能力については、更なる評価が重要である。検証すべき重要な問題の一例は、一時解雇措置がある国々(ドイツなど)は、他の国々よりも賃金支援をよりスムースに実施できたか、ということである。

さらに、パンデミックによって引き起こされた大混乱の最中に、中小企業支援を迅速かつ効果的に実施するには、政府がそのプロセスの間に学習する能力と、必要に応じて方針を変えられる対応力と機敏さを持っている必要がある。COVID-19パンデミックによって引き起こされた危機で明らかになったことの1つは、政府がパンデミックの間に中小企業を支援する方法を定めた戦略を持っていなかったということである。こうした明確な戦略がなかったために、対策はほとんどが場当たり的だった。そのための前提条件の1つは、政府が「リアルタイムに」中小企業への影響と政策対応を把握する能力を持つことである。また、様々な国々で、中小企業への影響の認識と政策を把握するために、新たなデータ源が用いられた。こうした新データは、将来有効な中小企業・起業政策を実施するための重要な資源になる。

対応力のある政府とは、その政策が充分に柔軟で、変化する状況と受益者のニーズに機敏に対応できるという意味でもある。今回の危機が様々な面で空前の規模だったため、中小企業が抱える問題の変化に合わせて、公共政策をしばしば再調整する必要があった。例えば、多くの国々は、中小企業の現金不足がいかに差し迫った問題かということが明らかになったときに、その行政措置と政府支援の受給資格の確認を大幅に簡略化した。これは、フランスの“PGE”と呼ばれる公的に保障される融資制度の主な特徴である。申請プロセスを簡略化したために、フランス政府はその施行から2カ月以内に、経済危機の打撃が最も深刻だった部門を中心に約42万社を支援することができた。同様に、ニュージーランドでは、政府が既存の信用供与の弱点に気づいた2020年8月に、Small Business Cashflow (loan) Scheme (SBCS) が導入された(Deloitte, 2020[77])。この措置のもとで、中小企業は、個人保障なしで遵守基準が遥かに緩和された資金を無利子で借り入れることができた。この融資期間は長く、融資額が引き上げられた(50万米ドルから500万米ドル) (Chartered Accountants, 2020[78])。発表から48時間以内に25000件の申請があった。

中小企業・起業政策の危機対応能力、柔軟性、機敏性を向上させ危機と急激な変化に対して先見の明を持つ方法を、例えば政策策定において予測をもっと活用することによって、さらに深く考察することが重要である。

 13. 様々な政府レベルでガバナンスメカニズムの有効性と包摂性を確保する

中小企業政策のパンデミック対応からは、支援を迅速に行うために複数の政府レベル間で調整された政策アプローチを採ること、また外出制限措置の影響が国内で多様であったため的を絞ったアプローチを採ることの重要性が明らかになった。そのような国と地方自治体とで調整された対応は、緊急対策が実施されている時期より復興段階での方が重要である。有効な中小企業復興支援、危機対応能力支援は、地域ごとのエコシステムに組み込む必要があるからだ。

COVID-19以前から、各国は中小企業・起業政策に関して水平方向(省庁間)、垂直方向(国と地方政府)に様々なガバナンス・メカニズムを持っていた。水平方向のガバナンスに関して、省庁間協議会がある国もあれば(スペイン、コスタリカ、ドイツ、マレーシア)、ワーキンググループがある国(カナダ、ニュージーランド、アイルランド、ポルトガル)や、より一般的な調整プラットフォームで中小企業政策を調整している国もあった(ベルギー、英国、イタリア、スロベニア)。垂直方向の調整では、専門機関を利用している国もあれば(スペイン、メキシコ)、地域に根ざした実施機関を通して行っていた国もあった。

様々な国々がCOVID-19支援を提供するために具体的な連携体系を設定したが、重要な問題は、ガバナンス・メカニズムを中小企業の復興と危機対応能力を支援するようにいかに変革するか、ということである。様々な政府レベルで有効な中小企業政策を実施することが重要であるため、分断化されたアプローチにならないようにすることが必須である。37 政府は、部分的に相反する2つの傾向の間で、バランスを取らなければならないだろう。一方で、現在開発中の「より良い復興」政策は、特に中小企業志向というわけではなく、より一般的な水平方向、垂直方向のガバナンスで支えられているかも知れない。他方で、複数の政府レベル間で中小企業の復興措置を採る場合、一貫性を確保することが緊急支援の時よりも重要になる。

 14. 中小企業と起業家の意見聴取

パンデミックと復興への政策対応についての協議に中小企業と起業家を参加させることは、彼らの意見を反映させるために重要である。中小企業向け対策の第一段階が非常に緊急であったため中小企業テストや記述による意見聴取が難しく、つまり緊急の中小企業対策については意見聴取が行われなかったが、様々な国々が政策対応について政府に助言を行うために関係者を参加させる協議メカニズムを設定している。このようなメカニズムには、通常多様な関係者が参加しており、中小企業にのみ焦点を当てるものではなかった。

開発中の復興政策の中では、既存の中小企業テストや協議メカニズムを再び機能させることが重要である。さらに、起業家と中小企業の意見が考慮されるようにするには、中小企業の代表を既存の関係者グループに含め、更なる支援措置の協議に参加させることも重要である。

 15. モニタリングと評価の新たな課題と機会

最後に、パンデミックは中小企業・起業政策の評価に新しい課題と機会をもたらしている。モニタリングと評価について確たる文化と習慣があることは、中小企業・起業政策にとって総じて重要である(OECD, 2008[79]) が、パンデミックのような危機に対する迅速な政策対応が必要な時には、特に妥当性がある。COVID-19危機に対する中小企業政策対応の評価にあたっては、政府は同様の課題を抱えている (OECD, Forthcoming[80])。課題の1つは、支援措置が拙速に開始されたことで、目的と対象グループが必ずしも明示されず、パンデミックの最中に変更されることがあった。そのため、評価が容易ではない。また、各国は多様かつ、ある程度競合する目的を追求していた場合がある。例えば、COVID-19以前に採算が取れていた企業を支援対象にするという目的は、あらゆる既存の企業を救済して雇用喪失を防ぐという目的と競合しており、またそれは市場に存在する企業を、例えばイノベーションやデジタル化の潜在能力という点でより高い実績を上げる企業と入れ替えるという目的と合わない。現在の危機が転機をもたらす性質を持っていることも、例えば危機の前、最中、そして後に採算企業を不採算企業から開放するための政策の影響評価を複雑にしている。

政策評価のもう1つの課題は、中小企業と起業家への支援の支出(基金の支出方法)について、個々の政策レベル(より幅広い政策の中に埋め込まれている場合が多い)でも集団レベルでも資料がない場合が多いことである。そのため、政策当局は様々な支援の実際の影響を理解できず、将来実施するための効果の推定もできない。危機対策における中小企業・起業政策の影響を正確に理解するためには、政策当局は支出データと部局横断的な時系列データを集めればよい。国際協調がこの面でも有益であろう。

それと同時に、パンデミックは、評価の機会を与えてくれている。世界銀行によると、様々な国々がパンデミック対策として1600件の中小企業支援イニシアチブに着手した。38 中小企業対策を通して、政府は、それ以前は政府支援を利用していなかった多数の中小企業と起業家に接触することができた。一部の国々では、中小企業の60〜70%が既存の支援を利用した。それにより、評価に利用できる支援受給の数が大幅に増加した。さらに、外出制限措置のタイミングと厳格さには差があるものの、中小企業・起業政策のストレステストとして、パンデミックは中小企業・起業政策枠組みの有効性と危機対応能力について、国際的な教訓を与えてくれた。この点で、COVID-19危機は政策評価に対して課題と金の鉱脈の双方を与えている。

 結論

本稿では、パンデミックの発生から1年間の、COVID-19の中小起業と起業家への影響と、世界中の政府が実施した中小企業と起業家向けの政策対応の影響を分析した。パンデミックの1年目の課題と教訓を明らかにして、今後実施される有効かつ効率的な中小企業・起業政策対応を支援しようとしている。

本稿では、中小企業がパンデミックと外出制限措置の影響のまっただ中にいること、中でも特定の起業家(スタートアップ、自営業者、女性と少数者の経営者)が特に脆弱であることを明らかにしている。本稿によると、中小企業と起業家は、収益が急減した一方で固定コストが依然としてかかるため深刻な流動性危機に直面しており、多くの企業が廃業に追い込まれる恐れがある。中小企業の景況感は2020年2月から3月にロックダウン措置のせいで急速に悪化し、4月から5月に底を打ったが、夏季には再び上昇し始めた。しかし、2020年下半期に再びパンデミックの波が襲ったため景況感が悪化し、2021年第1四半期まで続いた。この危機により、何千社もの中小企業が一時的な休業、または廃業に追い込まれたが、政府の支援措置によって、2020年中はほとんどの国々で倒産の増加にはつながらなかった。開業率は危機が始まった頃には大きな打撃を受けたが、多くの国々でそれ以降回復した。その要因の1つは必要に迫られた新規の起業が増えたことである。

世界中の国々の政府が、様々な措置によって、中小企業と起業家への壊滅的影響を抑え込もうとしているが、その典型は、流動性の懸念を緩和するための緊急支援と、例えばデジタル化のような構造支援措置で構成されている。各国は、パンデミックが発生しロックダウン措置が実施された直後の2020年3月に緊急の流動性支援措置を導入し、4月から6月の間にその支援をさらに拡大した。夏季に多くの国々で感染率が下がり外出制限措置が徐々に緩和されたため、政府は支援措置を延長したが、後に措置を撤退することを念頭により的を絞ったものにしようとした。しかし、9月に入ってパンデミックの新たな波が襲い、ロックダウン措置が再開されたため、流動性支援が再び拡大された。中小企業と起業家向けの構造支援措置は、危機の始まりからいくつかの国々で採用されたが、2020年中に採用する国が増加した。2020年6月以降、諸国は「より良い復興」のための幅広い複合政策に着手し、イノベーション、デジタル化、スキル、持続可能性への投資に焦点を当てている。

危機が始まって1年間、各国は一方でロックダウン措置を行いながら、他方で復興と危機対応能力を強化する政策を立案しながら、緊急の流動性支援をする必要に迫られている。短期長期双方の支援が中小企業と起業家の復興には不可欠だが、場合によっては緊急措置が思わぬ結果を招き、長期的な復興の見通しを阻むこともあり得る。2020年中に、各国はこうした複合的な課題にどのように取り組むべきかを学んだ。本稿には、有効かつ効率的で革新的な中小企業・起業政策から得られた15の教訓が収録されている。こうした政策は、確かな判断に基づく撤退戦略、政策の焦点、中小企業の過剰債務の回避、中小企業と起業の問題を熟慮した復興戦略、有効かつ効率的な政策の実施に関する、短期、長期双方の課題に取り組むものである。

OECDは、中小企業と起業家が置かれた状況の今後の変化を引き続き把握し、政府が危機に対処して素早く復興を遂げられるように支援していく。また、ベストプラクティスを特定するために、引き続き各国の事例を精査、解明していく。

Annex 1.A. 様々な種類の中小企業・起業政策支援措置の概要

この表は、OECD諸国と非加盟国でCOVID-19危機対策として導入された措置の概要を示している。国別の政策対応のタイムライン全体は、下記資料参照:OECD (2021), “An in-depth analysis of one year of SME and entrepreneurship policy responses to COVID-19: lessons learned for the path to recovery”, OECD SME and Entrepreneurship Papers, forthcoming, OECD Publishing, Paris.

 
Annex Table 1.A.1. 国別の中小企業・起業政策対応、政策手段別(2020年2月〜2021年2月)

労使関連

繰り延べ措置

財政措置

構造政策

 

(部分的)

人員解雇

賃金助成

自営業者

所得/法人税

付加価値税(VAT)

社会保険料、年金保険料

賃料/公共料金

債務の返済猶予

融資保証

中小企業への直接貸付

グラント及び助成

株式

新市場

テレワーク/デジタル化

イノベーション

訓練と配置転換

スタートアップ

持続可能性措置

アルゼンチン

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✔ 

 

 

オーストラリア

 

 

 

✔  

 

 

 

オーストリア

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ベルギー

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✔ 

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ブラジル

 

 

 

 

 

 

✔ 

 

 ✔

 

 

 

カナダ

 

 ✔

✔ 

 ✔

✔ 

チリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中国

 

 

 

 ✔

 

 ✔

 

コロンビア

 

 

 

 

 

 

 

 

コスタリカ

 

 

 

 

 

 

 

✔ 

✔ 

✔ 

 

 

クロアチア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェコ

 

 

 

 

 

 

 ✔ 

 

デンマーク

 

 

 

 

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エジプト

 

 

 

 

 

 

 

✔ 

 ✔

 

エストニア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィンランド

 

 

 

 

 

 

 

 ✔

 

 

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フランス

 

ドイツ

 

 

 

 

✔ 

ギリシャ

 

 ✔ 

 

 

 

 

 ✔

 ✔ 

香港

 

 

 

 

 

 ✔ 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンガリー

 

 ✔

 

 

 

 

アイスランド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

✔  

 

インドネシア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ✔

 

 

アイルランド

 

 ✔ 

 

 

 

イスラエル

 

 

 

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✔ 

 

 

 

イタリア

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✔ 

日本

 

 

 

 

 

 

韓国

 

 

 

 

 

 

 

ラトビア

 

 

✔  

 ✔

✔ 

 

 

 

リトアニア

 

 

 ✔ 

 

✔ 

 ✔ 

 

 

 ✔

✔ 

 

 

 

ルクセンブルク

 

✔  

 

 

 

 

 

 

✔ 

 

マレーシア

 

 

 

 

 

 

 

メキシコ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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オランダ

 

 

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ニュージーランド

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ノルウェー

 

 

 

 

 

 

✔  

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ペルー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポーランド

 

 

✔ 

✔ 

 

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ポルトガル

 

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ルーマニア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシア

 

 

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 ✔

✔ 

 

 

 

 

 

 

サウジアラビア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ✔  

 

 

 

 

シンガポール

 

 

 

 

 

 

 

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 ✔

 

 

スロバキア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スロベニア

 

 

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南アフリカ

 

 

 

 

 

 

 

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スペイン

 

 

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スウェーデン

 

 

 

 

 

 

 

 

スイス

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✔  

✔ 

 ✔   

 

 

タイ

 

 

 

 

 

 

✔   

 

トルコ

 

 

 

 ✔

 

 

 

 

英国

 

✔ 

米国

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベトナム

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注記:この表は、公的情報源とメディアの報道を元に作成された。状況と措置は急速に変化しているため、この表の情報は必ずしも包括的または最新のものではないかも知れない。最終更新日:2021年4月6日

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[49] TMF Group (2020), Government support schemes for COVID-19, https://www.tmf-group.com/en/news-insights/coronavirus/government-support-schemes/.

[74] Universidad de Chile (2020), Teletrabajo: la ley que la crisis del Covid-19 ayudó a aprobar, http://palabrapublica.uchile.cl/2020/04/08/teletrabajo-la-ley-que-la-crisis-del-covid-19-ayudo-a-aprobar/.

[55] University of Edinburgh (2020), Falling through the cracks: the economic costs of the coronavirus pandemic fro the UK’s freelancers, https://www.ipse.co.uk/static/3163bde1-425a-4cac-909057c58a066aab/e3f2b6c0-8d52-4573-86c6d909ec05cc86/Covid-19Report-2020.pdf.

[61] US Securities and Exchange Commission (2020), SEC Provides Temporary, Conditional Relief to Allow Small Businesses to Pursue Expedited Crowdfunding Offerings, https://www.sec.gov/news/press-release/2020-101.

[76] Vanguard (2020), Cybersecurity: Cybersafe, UK target 1500 SMEs, 4500 employees with start-up grants, https://www.vanguardngr.com/2020/09/cybersecurity-cybersafe-uk-target-1500-smes-4500-employees-with-start-up-grants/.

[35] World Economic Forum (2020), Discovering the real impact of COVID-19 on entrepreneurship, https://www.weforum.org/agenda/2020/06/how-covid-19-will-change-entrepreneurial-business/.

[6] WTO (2020), Helping SMEs navigate the COVID-19 crisis, https://www.wto.org/english/tratop_e/covid19_e/msmes_report_e.pdf.

担当

Stephan RAES (✉ stephan.raes@oecd.org)w

1.

本稿の執筆者は下記の通り:Kris Boschmans (Policy Analyst, CFE), Maria Camila Jiménez (Junior Policy Analyst, CFE) , Stephan Raes (Policy Analyst, CFE) 。 監修:Céline Kauffmann (Head of Division, CFE), Lucia Cusmano (Deputy Head of Division, CFE) and Miriam Koreen (Senior Counsellor, CFE)。テクニカルサポート: Heather Mortimer-Charoy。

2.

OECD (2021), “An in-depth analysis of one year of SME and entrepreneurship policy responses to COVID-19: lessons learned for moving forward”, OECD SME and Entrepreneurship Papers, forthcoming, OECD Publishing, Paris.

5.

OECD (2021), “An in-depth analysis of one year of SME and entrepreneurship policy responses to COVID-19: lessons learned for the path to recovery”, OECD SME and Entrepreneurship Papers, forthcoming, OECD Publishing, Paris.

7.

例えばいくつかのアジア諸国では、外出制限が始まったのは2020年3月以前だった。南米では3月に始まったが7月まで続き、他の地域では5月/6月までに緩和された。一部の国々(イスラエルなど)は、2020年9月にすでに第2波に対して新たな外出制限措置を講じ、2020年12月までに第3波も経験したが、その他の国々(ニュージーランドなど)はさらなるロックダウンを回避できた。外出制限措置の概要は、下記ウェブサイトを参照: https://ig.ft.com/coronavirus-lockdowns/.

8.

通称「ゾンビ企業」 (Andrews, McGowan and Millot, 2017[82]).

12.

必要に迫られた起業(機会によってもたらされる企業(opportunity-driven entrepreneurship)に対する)とは、人が他により良い就労の選択肢がないために新事業を始める状況を指す。

29.

これらは一部下記を元にしている: (OECD, 2020[81]) “Job retention schemes during the COVID-19 lockdown and beyond”

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