OECD加盟国閣僚は、パリで開催されているOECDの年次閣僚理事会にて、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック期に安全な海外渡航を推進するための新たなイニシアチブを承認した。このイニシアチブには、安全な渡航のための計画(ブループリント)と知識を共有するための臨時の業界横断的な国際フォーラムが含まれている。このフォーラムでは、各国政府と利害関係者が人の移動を促進するための計画とアプローチについて、リアルタイムに情報を共有することができる。この安全な渡航のためのブループリントでは、本格的に人の移動が再開したときに渡航の確実性と安全、セキュリティを高めることを求めている。それは、既存のイニシアチブに立脚し、様々な渡航形態の相互運用性を高めることを目的としており、各国が自発的に実施するものである。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック期における安全な海外渡航のためOECDイニシアチブ(ブループリントを含む)
Abstract
1.1. 背景
2020年12月14日に行われたOECD条約署名60周年記念に際し、スペインのペドロ・サンチェス首相が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の懸念がない国際的な人の移動を可能にする国際的枠組みの構築をOECDに求めた。
現在、OECD諸国のほとんどの人々がまだワクチンを接種しておらず、開発途上国の状況はもっと悪い。いくつかのOECD諸国では、パンデミックの第3波が襲来しており、緊急医療体制が逼迫し、毎日数千人が死亡している。侵襲の少ない非医学的介入では、ウイルスの蔓延を抑えられず、多くの国々が日常生活を制限している。このような中で、各国は、国境を越える人の移動を制限する追加措置を採用している。
しかし、重要なことは、パンデミックの現状だけでなく将来について検討し、国際的な人の移動が大幅に拡大するというシナリオに備えることである。ワクチンの有効性は証明されている。地域の供給問題にも関わらず、何百万人もの人々が毎日ワクチン接種を受けている。ほとんどのOECD諸国のほとんどの人々がワクチンを接種する日が来ると考えることが妥当である。COVID-19の流行はまだ続くであろうが、重症化や死亡のリスクは、少なくとも変異種によって復興が後退することがない限り、急激に低下するだろう。ある時点で、政策目標は「COVIDとの共生」へと移行する。それは、ここ1年間OECD諸国の人々が余儀なくされた生活様式の変化から、海外渡航も含め可能な限り多くの制約がなくなる生活への移行である。
多くの国々が、そのような状況について公然と計画を立てており、今年中に多くのOECD諸国がワクチン接種証明を渡航政策の一環として含める可能性がある。これまでのところ、渡航の条件にワクチン接種を挙げている国はないが、接種証明がなければ現状とほぼ同様に、各国は検査と可能な限り隔離を求めるだろう。これが、例えばアイスランド、イスラエル、EUの‘Digital Green Certificate’提案の本質である。
国際的な人の移動を制限することによる人的、経済的コストは大きい。グローバル経済が密接につながっているため、渡航と観光を禁止すると、幅広く経済全体に連鎖的な影響を及ぼす。例えばOECDの推定では、国内経済で創出される観光業の付加価値の3分の1は、間接的な影響によるものである。
コラム 1. 国際的な人の移動を制限することの経済的コスト
海外渡航を制限すると、旅行者数が激減し、下記のいくつもの産業部門に破壊的な影響が及ぶ。
国際運輸産業では、収益が激減した。国際旅客航空は、産業全体の旅客キロで測ると、2020年4月以降対前年比で90%以上減少した。クルージング産業は、パンデミック以前には2020年の旅客数として3200万人を見込んでいたが、実際には2500万人の旅客を失った。2020年には、欧州の国際鉄道サービスの旅客数も約90%減少した。
国際運輸産業では、収益が激減した。国際旅客航空は、産業全体の旅客キロで測ると、2020年4月以降対前年比で90%以上減少した。クルージング産業は、パンデミック以前には2020年の旅客数として3200万人を見込んでいたが、実際には2500万人の旅客を失った。2020年には、欧州の国際鉄道サービスの旅客数も約90%減少した。
渡航と観光が止まると、これらの産業部門の相互に結びついた性質のために、マクロ経済的なマイナス影響が大きくなる。特に影響が大きかったOECD諸国−ギリシャ、アイスランド、ポルトガル、メキシコ、スペインなど−では、2020年のGDPの落ち込みが最大だった( 図 1)。実際、旅行・観光業の危機前の規模は、パンデミックに対して特に脆弱な他の部門の影響や幅広いロックダウン措置の平均的な厳しさと比べて、GDPの伸びがいかに異なっているかをよく表している。さらに回帰分析によると、2020年には旅行・観光業がGDPに占める割合が10ポイント高いと、損害の対GDP比が約3ポイント増大する(ロックダウン措置などの他の要素を調整済み)。
したがって、現状は変化しており海外渡航の既存の制限を緩和することはできないが、準備が整って必要なシステムが運用可能になる未来のために計画を立てることは理に適っている。渡航者は様々なワクチンや検査に依存することになるだろう。しかし、渡航政策について何らかの国際的な枠組みがなければ、各国や地域のルールの継ぎ接ぎとなり、相互に一貫性がなく、人々が国境を越える時に様々なワクチンや検査の結果証明を提示することになる。これは、渡航者も交通・観光会社も混乱しコストがかかるもので、不確実性のために旅行や観光が抑えられたり管理が複雑になったりする。また、偽の承認を悪用する事件が増え、公的機関が公衆衛生上のリスクを軽減できなくなる恐れがある。
OECDのイニシアチブは、こうした問題に対処し、国際的な人の移動に関する政策の一貫性を高めようとしている。これは、他の国際的なイニシアチブに取って代わるものではなく、それらを加速させるか幅広い国々でそれが採択されるよう支援することで補完しようとしている。
1.2. プロセス
このイニシアチブの第一歩として、OECD事務局は、渡航規制の経済的帰結、検査手続き、データの交換とプライバシー、合意の考えうる形態という4つのテーマの背景文書を作成した。一連の二者会談及び国や国際機関、その他の関係者が参加する複数当事者会談では、これらの論文が提起した問題が議論された。議論をできるだけ迅速に進めるために、「ブループリント」案が作成された。これは、既存の枠組みを直接的に明示して、他のフォーラム、中でも国際民間航空機関(ICAO)、世界保健機関(WHO)、EUですでに実施されている作業との重複を避け、既存の枠組みに立脚しようとしたものである。
この案は、2021年2月5日に次の委員会とその他の機関にも提出された。
デジタル経済政策委員会(Digital Economy Policy)
保健委員会(Health Committee)
規制政策委員会(Regulatory Policy Committee)
観光委員会(Tourism Committee)
貿易委員会(Trade Committee)
交通管理委員会(Transport Management Board, ITF)
交通研究委員会(ITF)(Transport Research Committee, ITF)
移民作業部会(Working Party on Migration)
委員会との協議に加えて、各国政府代表部には国レベルでの立場の調整と全政府レベルでのOECDへの関与に責任を持つ国の連絡窓口(national contact point)の設置が奨励された。各国による対応は、下記文献に収録されている:DELSA/HEA(2021)2/REV2 (Blueprint framework for safer international travel during COVID 19 pandemic: comments from committees)。
ブループリント案への回答を議論するために、各国連絡窓口やこの分野に携わる国際機関(ECAC- 欧州民間航空会議, ICAO- 国際民間航空機関, IMO- 国際海事機関, UNWTO- 世界観光機構, WHO- 世界保健機関, WTO- 世界貿易機関)や、利害関係者(ACI- 国際空港評議会, CLIA- Cruise Lines International Association, ETOA- European Tourism Association, IATA- International Air Transport Association, IBMATA- International Border Management and Technologies Association, ICC- 国際商業会議所, WEF- 世界経済フォーラム, WTTC- 世界旅行ツーリズム協議会)を交えて、様々な会合が開かれた。ボーイング、エアバスなどの企業も、パンデミックに関わる専門的モデリングを我々と共有している。二者協議も多くの国々、国際機関、団体の間で開かれている。特に緊密な協力関係があるのはICAOとOECDとWHOで、OECDはCARTの議論と関連作業部会に参加している
ブループリントの改訂版は、2021年4月1日に上述の全てのOECD組織に共有され[DELSA/HEA(2021)1/REV1 – Blueprint framework for safer international travel during COVID‑19 pandemic: comments from committees 参照]、 それに続いて、EPCの作業部会1にも共有された。様々な国々から寄せられたコメントは統合され、主な懸案事項は企業関係者(2021年4月16日)、関連の国際機関(2021年4月19日)、各国の連絡窓口(2021年4月20日)との会合で議論された。この各国連絡窓口との最後の会合で、代表者は閣僚理事会(MCM)で懸案事項を公表できるよう文書を作成することで合意した。この文書は、4月29日にExecutive Committeeで、5月6日に理事会で議論され、閣僚理事会に提出された。
1.3. その後の展開
パンデミックの状況は急速に推移し、疫学的状況も各国の対応と国際社会の対応も、いくつもの変化が見られ、ブループリントのいくつかの側面で調整が必要となっている。
ワクチン接種は一部のOECD諸国で急速に進んでいる。特にイスラエルでは、成人人口の半数以上がすでに1回目の接種を終えており、チリ、英国、米国もまもなくそのようになる。その他のOECD諸国の多くも、同程度になるまでにあと2〜3カ月程度しかからないと推定されている。ワクチンは死亡と重症化を防ぐ上で有効であることが明らかである。また中等症の予防にも有効で、地域感染の削減にも有効という実証が増加しているが、感染予防のレベルはワクチンごとに違いがあり、実証ベースはまだ開発途上である。ワクチン接種により、渡航よって生じるリスクだけでなくリスクの認識と国民の選好も変化する。これは、ブループリント改訂版にも反映されている。
新たな懸念すべき変異株。初版のブループリント案が起草されたとき、各国は懸念すべき変異株(new variants of concern, NVoC)を反映した渡航手続きの採用方法を決定しているところだった。懸念すべき変異株とは、健康に深刻な影響を及ぼしたり感染力が高かったりワクチンや治療方法への耐性が強い可能性があるものである。これらいずれの場合でも、変異株は海外渡航のリスクのバランスを変化させる。
国際的な動向。ブループリントの初版以来;
ICAOは、Council Aviation Recovery Task Force (CART) の3番目の報告書と、Take‑off Guidance Document第3版、ICAO Manual on Testing and Cross-Border Management Measures第2版を併せて発表した。1 この一連の文書は、政府に戦略的な提言と国際民間航空の復興ガイドライン、多層リスク管理戦略設定のための最新のテクニカル・ガイダンスを提供している。さらに、ICAOマニュアルは、Public Health Corridors (PHCs)の実施に関するガイダンスを提供しており、政府は相互に個別の公衆衛生リスク管理枠組みを認め、空の旅を再開できるようにする二国間または多国間の臨時協定を結ぶことができる。PHCで交換される情報にも、海外渡航を目的とした検査証明文書の要件と詳細が含まれるだろう。ICAOプロセスは、海外渡航のための検査証明文書に収録される情報に関する提言も収録している。
さらに、3月17日に、EUは「ワクチン接種、検査、復興までを網羅したDigital Green Certificateのための共通枠組みを設立する」法的措置を発表した。「これは、EUレベルでそのような証明を発行、確認、承認するアプローチを採用し、証明書を保持する人のEU域内を自由に移動する権利を認めるとともに、EU法に基づいて導入されたCOVID-19規制の緩和をしやすくする」2 この提案は世界的なイニシアチブにも開かれており、WHOやICAOのような国連の専門機関で現在進んでいる取り組みを考慮に入れて、ワクチン接種の有無を文書化するためにデジタル技術活用の方法論と指針を収録している。
WHOは最近、「スマートワクチン証明開発のための中間指針(Interim guidance for developing a Smart Vaccination Certificate)」(2021年3月19日)を発表した。「このアプローチは、COVID-19ワクチンの普及と把握を支援する有効かつ相互運用性のあるデジタルソリューションの実施を促進するために、デジタル・ワクチン証明の主な仕様、基準、信頼枠組みの構築に焦点を当てており、他のワクチンへの採用も念頭に置いている」これは今のところ、渡航目的に活用することを意図しているわけではなく3 、ワクチンの普及と政策に情報を与えるものである。しかし原則として、ワクチン接種の有無を渡航政策に採り入れようとしている各国当局が利用することもできる(WHOの提案は、新たな科学的実証に照らして3カ月ごと、またはそれより短期間で更新されることに留意する必要がある)。
ICAO CARTガイドラインは、2021年3月12日に承認され、各国に実施するよう伝達された。欧州委員会(EC)とWHOのイニシアチブは現在進行中で、更なる承認が前提条件となっている。これらのイニシアチブは、パンデミックを抑え込む取り組みの中で情報をもっと効率的に活用するという目標に集中しているが、いずれも特定の目標と対象となる人々を念頭に置いている。ICAOのイニシアチブが、加盟193カ国間の国際航空旅行のための検査証明活用に関するものであるのに対して、ECのイニシアチブは、EU域内の移動にのみ適用され、EU市民の「自由移動を促進する」という文脈で構成されている。それに対して、WHOのイニシアチブは人の移動のためのものではなく、「暫定手引き」となっている。つまり、各イニシアチブはそれぞれ異なる情報セットと認証メカニズムを提案しており、その中には、誰が証明を発行できるか、これの正当性をどのように立証するかといった問題が含まれている。コラム 2参照。
コラム 2. 新たなイニシアチブの情報フィールド
COVID-19に関わる証明に含まれる情報要素に言及する国際的なイニシアチブが3件進行中である。ICAOのイニシアチブは、国際航空旅行を検査証明を用いて促進するという目的で開発された。EUでは、EU市民が域内を自由に移動する権利を行使できるように、検査、回復、ワクチン接種の証明を含む"Digital Green Certificate"が設計されている。それに対してWHOは現在、「スマートワクチン接種証明(Smart Vaccination Certificates)」に何を含むべきかということについて暫定手引き(interim guidance)を発行している。それぞれのイニシアチブの目的が異なるため、情報要素も異なる。
ICAO |
EU 検査証明 |
EU 回復証明 |
EU ワクチン証明 |
スマートワクチン接種証明のためのWHO暫定手引き |
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氏名(姓名) |
氏名:姓名の順に |
氏名:姓名の順に |
氏名:姓名の順に |
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生年月日 |
生年月日 |
生年月日 |
生年月日 |
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対象となる疾病または病原体 |
その人が回復した疾病または病原体 |
対象となる疾病または病原体 |
対象となる疾病または病原体* |
検査の種類 |
検査の種類 |
検査で最初に陽性反応が出た日付 |
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検査センターまたは施設 |
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レポート発行日時(必須) |
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検査結果 |
検査結果 |
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問い合わせ先 |
検査センターまたは施設 |
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検査を実施した加盟国 |
検査を実施した加盟国 |
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証明発行者 |
証明発行者 |
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注:*はオプションのフィールド。
各国の政策。各国は、国際的な人の移動によってCOVID-19の感染が拡大することに対して適切な安全確保をするという課題を抱えている一方で、移動制限が特定の経済部門と経済全体に及ぼす影響を懸念している。ブループリントの最初の草案が作成されて以来、いくつもの国々が新たな感染の波に襲われており、多くの場合それの原因は感染力の高い懸念すべき変異株が広がったことにある。それによって、特定のごく限定された目的以外の全ての海外渡航を新たに、または再び制限した国もある。さらに、出発前検査の有効性のモデリングにより、一部の国々は渡航政策を厳格化する必要があるという結論に至った。いくつもの国々が、目的地の国に到着後、移動を認められる前に数日間ホテルで監視下に置くという厳重な検疫機関を導入している。現在、海外渡航は依然として厳しく制限されている。
1.4. OECDのイニシアチブ
こうした中、また最新の検査及びワクチン証明イニシアチブとの相補性と相乗効果を最大化するという観点から、OECDのイニシアチブは下記の提案を行っている。
安全な海外渡航に関する知識共有のための臨時の部門横断的フォーラムの設置。
海外渡航のためのブループリントは、自発的に実施され、経済が再開されたときに渡航の確実性、安全性、セキュリティを確保するためのもので、最近の証明イニシアチブと一貫性(及び相補性)がある。
1.4.1. 知識共有のためのフォーラム
イニシアチブに関わる国々と関係者との協議の中で繰り返し提起された問題は、各国が政策とその実施の問題についての経験を交換できる臨時のフォーラムがないことである。OECDのイニシアチブは、経済、交通政策、医療、貿易、情報システムに関する専門知識を、他の国際フォーラムにはない形で結集しており、協議から得られるフィードバックによると、各国は一連の共通の判断枠組みに立脚して継続的に見解と各国のアプローチ、用いているツールについて情報を交換できるそのようなフォーラムを極めて有益だと考えている。したがって、OECDは安全な渡航に関する定期的な議論の実施を提案している。そうした議論があれば、各国の様々な省庁から専門家が参加するであろう。代表者の賛同が得られれば、関連する国際機関やその他の関係者も特定のセッションに招待することができる。情報をより幅広いグループと書面で共有することを希望する国々のために、代表者のためのウェブサイトを設置することもできる。そのようなフォーラムで議論されるべきトピックの例は、次の通りである。
パンデミックによる移動制限が国際的な相互連携に及ぼす影響の定量化
海外渡航を制限する様々な措置が、旅客、交通機関、幅広い経済にもたらすコストと便益の評価
二国間、多国間、その他様々な関係者の航空路における公衆衛生の経験
様々な検査及び隔離措置の効果のモデル化とシミュレーション
渡航という観点でのCOVID-19感染抑制のための政策措置の活用
認証メカニズムの経験
強制力と不正の防止
渡航制限の経済的影響の実証
警告システム内での懸念すべき変異株のリスクの定量化
渡航者への要件の変更の周知
加盟諸国・機関などは、この議論を継続すべきかを2021年末に再検討することになっている。
1.4.2. 安全な海外渡航のためのOECDブループリント
The OECD Blueprint has been revised, in light of comments received. The OECD Blueprint is based around the following principles:
OECDブループリントは、既存のイニシアチブに明示的に依拠している。WHOの関連するリスク枠組みと多角的リスク管理を反映し、空の旅の衛生に関わるあらゆる側面でICAOガイドラインの採用を検討し、EUが用いているモデルに沿って信号機システムを採用し、データ、安全性、認証システムをEUのそれの上に構築し、ICAOの提案に沿ったものにする。
OECDブループリントは、既存のイニシアチブ、ルール、法律、合意と競合しない。ICAOは、空路による渡航を対象としたルールの枠組みを作るのに妥当なフォーラムである。ICAOの枠組みに統合されていないイニシアチブは、海外渡航の規則を分断させるリスクがあり、それによって各国当局が国境を効率的に管理できなくなり、旅行会社と旅行者にコストが課されることになる。したがって、OECDのイニシアチブは、ICAOの提言と指針と一貫して、密接に統合されなければならない。それを念頭に、OECDのイニシアチブは行政力、ワクチン政策の状況、検査政策の利用、その医療・ガバナンス制度の強さという点で同程度の国々によって実施されるように立案されている。そうした類似性により渡航政策の実施をさらに促進できるようになるかも知れない。そうした政策は、今のところ全ての参加諸国がで導入できるわけではないが、(ICAO枠組みで予見されているように)他の国々もそれに適合するよう準備ができる。
OECDブループリントは、パンデミックの動的変化と、各国固有の状況を考慮に入れている。パンデミックの性質は、全ての国々がしばらくの間海外渡航を実施できるわけではないということである。そのため、ブループリントでは、決まった時期に全ての国々が採用できる提言を提案するのではなく、次の2つの状況に対応する提言を行っている。1つ目は、(2021年4月と同様に)ほとんどの国々が海外渡航を通じてCOVID-19の感染が拡大することと変異株が国内に入り込むことを予防しようとしているときである。2つ目の状況は、各国がある程度の感染の輸入リスクを受け入れるときである。これは、地域感染の可能性が低い場合である(例えば、ワクチン接種率が上昇したり人口レベルで集団免疫が確立した場合)。1つ目の状況では2番目のそれよりも厳格な制限を行うことが妥当である。自国が1つ目の状態にあるのか、2番目の状況なのかを判断するのは、各国に任されている。
OECDブループリントは、自発的なものである。ブループリントはガイドラインであって、法律ではない。実施したい国は一方的に、または二国間または多国間合意に基づいて実施するであろうし、また他の機関、特に国際民間航空機関(ICAO)のPublic Health Corridorなどが提供するメカニズムによって実施するところもあるかもしれない。
OECDブループリントは、暫定的なもので、ワクチン接種率の伸びと共存するよう設計されている。OECDブループリントは、ワクチン接種が(全員とまでは行かなくても)幅広く進んでいるときの暫定的な枠組みとなるよう設計されている。またこれは、いくつかの国々がワクチン証明で渡航者が一部の制限を回避できるようにしているが、証明が必ずしも渡航の必要条件ではなく、したがって検査証明が引き続き必要であるという状況になった場合に、各国が渡航を管理する一助となるよう設計されている。
COVID-19パンデミック期の安全な海外旅行のためのブループリント
1. 適用可能性
本稿で論じられる渡航手続きは、航空、鉄道、長距離バス、船舶による海外渡航に適用される。プライベートな交通手段は除外されているが、国によってはこの措置をプライベートな交通手段にも拡大する可能性がある。
この渡航手続きの適用は、各国当局と渡航者を越境させる交通機関、そして渡航者自身の共同責任である。
2. 一般的提言
次の渡航者向け提言は、WHOとICAOのガイダンスに沿っており、ワクチン接種済みの渡航者にも適用される;4
i. 具合が悪いときには渡航しない。感染している、感染の可能性が高い、または(接触の)疑いがある場合を含む。
ii. 手指と呼吸器の衛生を保つ。
iii. 手術用マスクまたは全面形面体呼吸用保護具を着用して口と鼻を覆う(必要に応じて例外を認める)。
iv. 感染リスクを下げられる程度に物理的距離を取る。
v. 港湾または運送会社のスタッフの指示に従う。
3. 原則
次の原則によりシステムが支えられている。
i. 相対的リスクアプローチ:この手続きは、リスクの影響を各国当局が受け入れられ、WHOに沿ったレベルまで引き下げることを目指している。5
ii. 疫学的状況の検討:渡航の制限は、出発国及び到着国の疫学的状況に釣り合ったものにすべきである。
iii. 渡航者の公平な扱い:全ての渡航者は、上記の疫学的状況に鑑みて、平等かつ公平に扱われなければならない。安全な渡航は、(国の政策が認める場合は)ワクチン証明または回復証明の提示によって、または渡航者が感染していないことを示す検査結果によって円滑に進められる。
iv. 隔離政策の適切な利用:ブループリントは、隔離措置の適切な利用を目指している。疫学的リスクが低い場合には、検査、陽性者のゲノム配列決定、接触者追跡のための適切なデータ収集により、渡航者全体の罹患率や新たな懸念すべき変異株の出現に関する妥当な情報が提供できる。隔離は、疫学的リスクが高い場合に適した手段で、診断検査の結果によっては隔離を早く終わらせるというオプションがある。個人のワクチン接種が完了し国の渡航政策にワクチン接種状況が反映されれば、隔離は不要になるだろう。
v. 国の認定制度への依拠:WHO、ICAO、EUで国際システムについて現在行われている議論を念頭に、この制度の参加諸国は、他の参加国の当局が承認したワクチン証明、回復証明、検査結果を正当なものとして受け入れる。
vi. 簡素化と既存のシステムへの依拠:手続きの複雑さ、収集及び国境を越えて転送される情報量は、最小限に抑えるべきである。このシステムは、厳密に必要なデータのみ収集するという原則に基づき(データの最小化とプライバシーバイデザイン(privacy by design))、適用可能なデータ保護規則を遵守して、情報供給のための既存のツールとシステムを可能な限り活用する。
vii. 相互運用性、安全性、ブライバシーバイデザインの原則に基づくプライバシー保護:このシステムは相互運用が可能で、情報転送について共通の用語体系と形式に基づくべきである(要承諾)。また、このシステムは「プライバシーバイデザイン(privacy by design)」の原則に則るべきである。この原則は、システムの設計時にコンテンツ、収集方法、収集の目的、収集されたデータの一部または全部の保管期間を、データ主体に明らかにするというものである。
viii. 他の国際合意の認識:諸国がEUのような超国家組織のに加盟している場合、ブループリントはその機関に加盟する国々の間の旅行に関する合意より優先すると見なすべきではない。特に、EU加盟諸国が人の自由移動を認めていること、そして理事会勧告(EU)2020/147 を改訂した2021年2月1日の理事会勧告(EU)2021/119がEU域内で適用されることが認められている。
ix. 各国法制の優先:ブループリントは政策的指針を提供するものであって、法的文書ではない。
第1部 安全な旅行のための措置
4. 疫学的基準
参加国は;
i. COVID-19の新患者報告率(case notification rate)、検査率、陽性率は共通の疫学的基準を用いる。国際保健規則(International Health Regulations)に基づいて、WHOの定義を反映して、WHOコロナウイルス・ダッシュボードに公表されるからである。6 各国は、必要に応じて欧州疾病予防管理センター(ECDC)が公表するデータを利用することもできる。締切日は、データを収集、公表する機関(WHOまたはECDC)の裁量に任されている。
ii. 次の疫学的基準を考慮する:
a) 新患者報告率:国、または必要に応じて準政府レベルで、過去14日間に新規に感染が報告された人数の人口10万人当たりの数。
b) 検査陽性率:過去1週間に実施された全てのCOVID-19感染検査のうち、陽性の結果が出た割合。
c) 検査率:前の週に実施された検査数の人口10万人当たりの数。
iii. リスク・カテゴリーは、2週間ごとに算出される各国または地域のSARS-CoV-2の地域感染の深刻度に応じて、緑(green)、オレンジ(orange)、赤(red)、えんじ色(dark red)に色分けされている。それぞれの色が表すリスクは次の通り。
a) 緑:新患者報告率が25未満、検査陽性率が4%未満。
b) オレンジ:新患者報告率が50未満だが検査陽性率が4%以上である場合、または新患者報告率が25から150の間だが陽性率が4%未満の場合。
c) 赤:新患者報告率が50以上で検査陽性率が4%以上、または新患者報告率が150を超える場合。
d) えんじ色:新患者報告率が500、または新規の懸念すべき変異株の罹患率が高い場合。
e) 灰色(grey):十分な情報がない場合、または検査率が300以下である場合。
iv. 可能な限り、リスクレベルの変更可能性について十分な警告を行う。2週間ごとに計算されるリスクレベルの変更の上限または下限が近づいていることを知らせる警告システムは、次の通り。
a) オレンジの警告:新患者報告率が18.75から25の間。
b) 赤の警告:新患者報告率が37.50から50の間で、検査陽性率が3%から4%の間の場合、または、新患者報告率が112.50から150の間だが、検査陽性率は3%未満の場合。
c) えんじ色の警告:新患者報告率が375から500の間。
v. SARS-CoV-2の変異株の感染状況とリスクを考慮に入れて基準を設定するとうい現在進行中の取り組み(EU Early Warnings and Response Systemなど)と調整する。変異株は、感染性、毒性が強く、異なる症状を示す場合があり、あるいは公衆衛生、社会的措置、または診断方法、ワクチン、治療法の効果を下げるという実証がある。7
5. 旅行の要件
参加国は;
i. 各国の規制に則って、ワクチン証明またはCOVID-19からの回復証明を提出した渡航者は、渡航中の調査目的以外の検査または隔離、あるいはその両方を免除される場合がある。8 ワクチン証明とは、各ワクチンに必要な回数を全て投与されていることを証明するものである。証明が認められるワクチンに含まれるのは、WHOが緊急使用リスト(Emergency Use Listing, EUL)で奨励しているもの、またはWHOの暫定手引きに従って厳格な規制当局(Stringent Regulatory Authority)によって承認されたものである。9
ii. 有効なワクチンまたは回復証明を提出できない渡航者には、上述の疫学的リスクの色分けされた基準に沿って、COVID-19感染リスクのレベルに適した検査と隔離の要件が含まれる渡航手続きを適用する。RT-PCR検査の利用が適している場合、各国は出発国で承認された検査結果を受け入れる。抗原検査が適している場合は、各国は出発国で承認された検出率が最低80%で高い特異度(迅速抗原検査では最低97%以上で99%を超えることが望ましい)の抗原検査の結果に依拠する。10 11 12
iii. 全ての渡航者に、渡航前にできればデジタル形式で旅客の位置特定フォームを提出するよう要請する。
iv. マスクの着用、ディスタンシング、手洗いなど、一般的な公衆衛生措置を常に行う。
6. 渡航手続き
参加諸国は、COVID-19感染の輸入に関わるリスク、地域のワクチン接種率、その他の独自の要素の影響を受けて、後述する渡航手続きの一つを採用する。手続きは表 1にまとめられている。
下記の手続きは、移動中の渡航者が追加要件の対象とならないように、また到着から48時間以内に帰国する渡航者が帰途につく前の再検査を免除されるように、各国が変更する場合がある。
また、手続きは渡航を対象として、必須機能(essential functions)については隔離が免除される場合がある。必須機能の定義は、各国に任されるべきであるが、WHOは下記のように提案している:緊急・人道的行動、必須要員の移動、本国送還、食料や薬品、燃料などの生活必需品の貨物輸送。
i. 渡航手続き A。ある参加国が感染の輸入に関わる潜在的な医療への影響を、医療制度の能力やワクチン接種率、世界や地域のウイルスの流行傾向などを検討して高いと推定した場合、次の要件及び条件が適用される:
レベル1 の要件:出発国のリスクカテゴリーが緑、または出発国がオレンジで到着国が赤の場合に適用:
抗原検査で陰性(認められる場合)または出発時間から72時間以内(望ましいのは48時間以内)に行われたRT-PCR検査の結果が、検査から出発までの間に自主隔離を推奨された渡航者から求められる。検査結果が陽性だった渡航者は、渡航を認められない。渡航者は、陽性者の接触状況を追跡できるように、そして可能であればRT-PCRサンプルの場合ゲノムシークエンシングのために、2回目の抗原検査(認められる場合)またはRT-PCR検査を到着から2日目に受けるよう求められる。ワクチン証明または回復証明を提出すると後者は、こうした検査要件を免除される場合がある。
レベル2の要件:出発国のリスクカテゴリーがオレンジで到着国のそれが緑またはオレンジの場合に適用:
渡航前72時間以内(望ましいのは48時間以内)に行われたRT-PCR検査の結果が、検査から出発までの間に自主隔離を推奨された渡航者から求められる。検査結果が陽性だった渡航者は、渡航を認められない。渡航者には、到着日を含む5日間の隔離と隔離最終日に2回目のRT-PCR検査を受けることが求められる。到着から2日目以降に行われたRT-PCR検査の結果が陰性の場合、渡航者の隔離期間が短縮される場合がある。ワクチン証明または回復証明を提出する渡航者は、こうした検査と隔離の要件を免除される場合がある。しかし、検査結果が陽性になった渡航者は全て、症状がある場合はその症状が出てから、また無症状の場合は陽性の検査結果が出た日から10日間の隔離を要求される。
レベル3の要件:出発国のリスクカテゴリーが赤の場合に適用:
渡航前72時間以内(望ましいのは48時間以内)に行われたRT-PCR検査の結果が、検査から出発までの間に自主隔離を推奨された渡航者から求められる。検査結果が陽性だった旅客は、渡航を認められない。渡航者は、到着日を含めて10日間の隔離を要求される。到着から7日目以降に行われたRT-PCR検査の結果が陰性の場合、渡航者の隔離期間が短縮される場合がある。ワクチン証明または回復証明を提出する渡航者は、こうした検査と隔離の要件を免除される場合がある。しかし、検査結果が陽性になった渡航者は全て、症状がある場合はその症状が出てから、また無症状の場合は陽性の検査結果が出た日から10日間の隔離を要求される。
レベル4の要件:出発国のリスクカテゴリーがえんじ色または灰色の場合に適用:
必須機能を持つ渡航者、または市民または永住権を持つ人々の帰国のための渡航のみ認められる。その他レベル3の全ての要件が適用される。
ii. 渡航手続きB。 ある参加国が感染の輸入に関わる潜在的な医療への影響を、医療制度の能力やワクチン接種率、世界や地域のウイルスの流行傾向の減少などを検討して低いまたは中程度と推定した場合、次の要件及び条件が適用される:
レベル1の要件:出発国のリスクカテゴリーが緑の場合に適用:
渡航者は診断検査の証明や隔離による観察を求められない。マスクの着用や物理的距離といったその他の一般的な衛生措置は適用される。
レベル2の要件:出発国のリスクカテゴリーがオレンジで到着国のそれがオレンジまたは赤の場合に適用:
抗原検査で陰性(認められる場合)または出発時間から72時間以内(望ましいのは48時間以内)に行われたRT-PCR検査の結果が、検査から出発までの間に自主隔離を推奨された旅行者から求められる。ワクチン証明または回復証明を提出する渡航者は、こうした検査と隔離の要件を免除される場合がある。検査結果が陽性だった旅行者は、渡航を認められない。
レベル3の要件:出発国のリスクカテゴリーがオレンジで到着国のそれが緑、または出発国のそれが赤の場合に適用:
抗原検査で陰性(認められる場合)または渡航前72時間以内(望ましいのは48時間以内)に行われたRT-PCR検査の結果が、検査から出発までの間に自主隔離を推奨された渡航者から求められる。検査結果が陽性だった渡航者は、渡航を認められない。渡航者は、陽性者の接触状況を追跡できるように、そして可能であればRT-PCRサンプルの場合ゲノムシークエンシングのために、2回目の抗原検査(認められる場合)またはRT-PCR検査を到着から2日目に受けるよう求められる。ワクチン証明または回復証明を提出する渡航者は、こうした検査と隔離の要件を免除される場合がある。入国後に検査結果が陽性になった渡航者は全て、症状がある場合はその症状が出てから、また無症状の場合は陽性の検査結果が出た日から10日間の隔離を要求される。
レベル4の要件:出発国のリスクカテゴリーがえんじ色または灰色の場合に適用:
必須機能を持つ渡航者、または市民または永住権を持つ人々の帰国のための渡航のみ認められる。その他レベル3の全ての要件が適用される。
表 1. 健康への影響とリスクレベルに沿って提案される渡航手続き概要
ワクチン証明またはCOVID-19からの回復証明を提出できない渡航者に適用される検査と隔離の要件
手続き |
リスクレベル |
リスクカテゴリー |
必要な検査 |
必要な隔離期間 |
||
---|---|---|---|---|---|---|
出発国 |
到着国 |
出国前 |
入国後 |
|||
A (感染の輸入によって生じる潜在的な医療への影響が大きい) |
1 |
緑 |
どこでも |
抗原またはRT-PCR、渡航の72時間前 |
不要 |
なし |
オレンジ |
赤 |
|||||
2 |
オレンジ |
オレンジまたは緑 |
RT-PCR、渡航の72時間前 |
到着当日または2日目のRT-PCR。渡航者は入国後の検査結果が陰性の場合、2日目以降に隔離期間が短縮される場合がある。 |
5 日 |
|
3 |
赤 |
どこでも |
RT-PCR、渡航の72時間前 |
RT-PCR、渡航の72時間前 到着日または7日後のRT-PCR。渡航者は入国後の検査結果が陰性の場合7日目以降に隔離を解除される場合がある。 |
10 日 |
|
4 |
えんじ色 |
どこでも |
必須の渡航または市民、永住権者の帰国のみ。その他のレベル3の要件が適用される。 |
|||
B (感染の輸入によって生じる潜在的な医療への影響が小さいか中程度) |
1 |
緑 |
どこでも |
不要 |
不要 |
なし |
2 |
オレンジ |
赤またはオレンジ |
抗原またはRT-PCR、渡航の72時間前 |
不要 |
なし |
|
3 |
オレンジ |
緑 |
抗原またはRT-PCR、渡航の72時間前 |
Antigen or RT-PCR on or after day 2 from arrival. 抗原またはRT-PCR、到着日または2日後 |
なし |
|
赤 |
どこでも |
|||||
4 |
えんじ色 |
どこでも |
必須の渡航または市民、永住権者の帰国のみ。その他のレベル3の要件が適用される。 |
注:出国前の検査は渡航の48時間前に実施することが望ましい。
第2部. 情報とセキュリティ
7. 渡航のために必要な情報
参加諸国は、次の項目に合意する;
i. ある国がワクチン証明または回復証明を利用して渡航を可能にする場合、それはICAO CARTの提言に沿って共通の情報要素と合意された安全保障、促進、マシンリーディング、相互運用の措置に基づくべきである。既存の国際的イニシアチブ(EU Digital Green CertificatesとWHO Smart Vaccination Certificate)は、それらのあり方を検討している。13 こうしたイニシアチブはそれぞれの期間で依然として議論されているところだが、その中には下記の情報が含まれる:
(1) 必要な個人情報:
a) 氏名(姓、名)
b) 生年月日(西暦、月、日)
c) (オプションだが推奨される)ID文書の種類
d) (オプションだが推奨される)ID文書番号
(2a) ワクチン証明に含めるべき追加情報(EU Digital Green Certificates とWHO Smart Vaccination Certificateに基づく):
a) 対象となる疾病または病原体
b) ワクチン/予防薬
c) ワクチン医薬品
d) ワクチン市販承認取得者または製造業者
e) ワクチン接種/投与数
f) ワクチン接種日(最近の接種日)
g) ワクチン接種した国
h) 証明発行者
i) (オプション項目)WHO Smart Vaccination Certificatesには、上記の全情報の他、次の項目が収録される:医療従事者の署名;医療従事者のID、次のワクチン接種期限
(2b) 回復証明に含めるべき追加情報(EU Digital Green Certificatesに基づく):
a) 個人が回復した疾病または病原体
b) 最初に要請の結果が出た検査日
c) 検査を実施した国
d) 証明発行者
ii. 検査証明のための共通の情報は共通の用語体系でICAOの「COVID-19検査結果報告に関わる推奨されるデータセット」に基づき、他のイニシアチブ (EU Digital Green Certificates)に沿っている。この証明には、最低限次の情報が収録される:
(1) 検査に必要な個人情報:
a) 氏名(姓、名)(必須)
b) 生年月日(西暦、月、日)(必須)
c) ID文書の種類(必須)
d) ID文書番号(必須)
(2) サービス提供者:
a) 検査施設またはサービス提供者の名称(必須)
b) 検査を実施した国(必須)
c) 検査施設またはサービス提供者の連絡先(必須)
(3) 検査と報告の日時:
a) 検体回収日時(必須)
b) レポート発行日時(必須)
(4) 検査結果:
a) 実施された検査の種類:分子診断検査(PCR);分子診断検査(その他);抗体検査(必須)
b) 検査結果(正常/異常または陽性/陰性)(必須)
c) サンプリング方法(鼻咽頭、口腔咽頭、唾液、血液、その他)(オプション)
iii. この情報を渡航者に目に見える、印刷可能な形式14 で提供すると同時に自動生成された「機械可読」のQRコードまたはバーコードにコード化された共通の順序と形式の情報も提供する。QRコードまたはバーコードを生成できない場合、渡航者が検査結果に自分のIDをリンクさせられるようにする。
iv. 渡航者に結果を共通の合意された形式で発行することが認められた提供者の種類の定義。
v. 独自の相互運用可能な識別子または同様のメカニズムを含めることで、証明の真正性の立証が可能になる。これは、ICAO Visible Digital Seal、EU Digital Green Certificate、WHO Smart Vaccination Certificateなど、既存のイニシアチブに依拠し、相互運用が可能なものであるべきである。
8. データの保護と認証のメカニズム
全てのいかなる種類の証明についても、参加諸国は:
vi. 渡航者に求める情報量を、上述の情報要件に基づいて合意された量に制限する。
vii. 証明の分権化されたメカニズムを優先して、個人データ及び繊細なデータの収集と保存を避ける。
viii. データが収集されたら、各国はデータが関連の国内の規制に沿って保護されるようにする。
ix. 個人データ、または個人を特定できるデータの国境を越える転送を制限し、必要に応じてデータ保護と転送ルールを守って既存のメカニズム(例えば、インフォームドコンセント)に依拠する。
x. 渡航者が携行する印刷可能な、または既存の官民のデジタあるソリューションに統合できるQR/バーコードを使用する分散的アプローチを優先して、状況に関する情報の返送を既存のメカニズムに依拠する。15
xi. ICAO Visible Digital Seal、EU Digital Green Certificate、WHO Smart Vaccination Certificateなどが提案している証明の検証のために、既存の相互運用可能なメカニズムに依拠する。
9. その他
提案されているシステムは、そのシステムへの参加に自発的に合意した国々に適用される。つまり、これは普遍的な制度ではなく当事者間の合意である。
合意に参加していない国々が含まれる渡航には、追加の要件が適用される場合がある。
参加諸国は、国の法規制に沿って、検査と隔離を免除された渡航者リストを作成する場合がある。
このシステムは、一方的、二者間、または多者間で、またはICAO Public Health Corridorのメカニズムを通じて実施することができる。
担当
Stefano SCARPETTA (✉ stefano.scarpetta@oecd.org)
Janos BERTOK (✉ janos.bertok@oecd.org)
Julia NIELSON (✉ julia.nielson@oecd.org)
Mark PEARSON (✉ mark.pearson@oecd.org)
Frederico GUANAIS (✉ frederico.guanais@oecd.org)
Javier LOPEZ GONZALEZ (✉ javier.lopezgonzalez@oecd.org)。
注
← 3. 実際、その暫定手引きの中で、WHOは次のように述べている。「それは「免疫パスポート」として利用されるべきものではない。“Interim position paper: considerations regarding proof of COVID‑19 vaccination for international travellers”より(暫定手引き参照)
← 4. ICAO, CART Take‑off Guidance for Air Travel through the COVID‑19 Public Health Crisis. https://www.icao.int/covid/cart/Pages/Public-Health-Risk-Mitigation-Measures.aspx.
← 5. World Health Organization. Considerations for implementing a risk-based approach to international travel in the context of COVID‑19.
← 6. WHOは新型コロナウイルスダッシュボードのデータを定期的に更新している。下記ウェブサイト参照: https://COVID-19.who.int/.
← 7. WHOはSARS-CoV-2の関心のある変異株(Variants of Interest)と懸念すべき変異株(Variants of Concern)の実用的な定義を、2021年2月25日のCOVID-19 Weekly Epidemiological Updateで提案している。 https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20210225_weekly_epi_update_voc-special-edition.pdf?sfvrsn=1eacfa47_7&download=true.
← 8. ワクチン接種が完了した人々は、SARS-CoV-2を他の人に移す可能性が低くなっていることを示す実証が増えている。下記参照: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/fully-vaccinated-people.html.
← 9. 厳格な規制当局(Stringent Regulatory Authority, SRA)のWHOの暫定的な定義は、下記ウェブサイトに掲載されている。 https://www.who.int/medicines/regulation/sras/en/.
← 10. 検出率は、ある検査で感染者を正しく特定できる能力と定義されており、スクリーニング検査で特定されている症状を持つ人々の割合で表される。特異度は、関心のある症状がない人々を除外する能力あるいは検査と定義されており、スクリーニング検査でそれと正しく特定された症状を持たない人々の割合で表す。 https://www.cdc.gov/csels/dsepd/ss1978/glossary.html.
← 11. EUは、EU域内で検査結果が相互に認められているものなどCOVID-19迅速抗原検査のリストと、COVID-19検査結果証明に含まれるべき共通の標準化データを公開している。 https://ec.europa.eu/health/sites/health/files/preparedness_response/docs/COVID-19_rat_common-list_en.pdf.
← 12. 検出率と特異度のこれらの基準を満たす医療機関で行うことができるRT-LAMP検査は、抗原検査と同じ方法で用いられる可能性がある。
← 13. 上述のように、WHOの「スマートワクチン接種証明(Smart Vaccination Certificates)」は渡航目的の使用のために設計されたのではなく、ワクチン接種状況の監視と政策のためのものである。しかし、原則として、これはワクチン接種の状況をと高政策に採り入れたい当局も利用できるものである。
← 14. 障碍者がウェブコンテンツを利用しやすくする方法を述べたWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1 からの下記ガイダンスを含む。(Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1 (w3.org)).
← 15. これは、次のものを含むが、それに限定されているわけではない: IATA Travel Pass, the ICC AOK Pass, the Common Trust/WEF Common Pass, the SICPA Certus myHealth Pass, the IBM Digital Health Pass。