要旨

この報告書では、外出制限措置を解除しウイルス感染の第二波に備えるための改革の一環としてのCOVID-19検査の役割について論じている。ワクチンまたは有効な治療法が開発される前に新規の感染を抑える措置を何も採らずにすべての外出制限措置が解除されると、感染率は再び急上昇すると予測されている。重要なことは、感染を早急に抑えるには、より多くの人々に対して検査を行い感染者を特定すること、感染が拡大しないように感染者を追跡すること、感染者が誰と接触したかを追跡することである。本報告書では、下記の3つの目標を達成するために検査戦略をどのように用いるかを論じている。1) 地域の感染再発を抑制する;2) 何らかの免疫を獲得し安全に仕事を再開した人を特定する;3) 集団免疫の閾値が達成された時期を含め、流行の動向についての情報を集める。本報告書では、各目標の達成に用いることができる検査の種類と、この文脈におけるデジタルツール活用の機会とリスクを含め、検査戦略とともに実施上の問題について考察している。

 
主な問題点
  • 外出制限措置の緩和と経済活動再開の背後にある主な問題は、コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな感染拡大によってさらなる経済封鎖を余儀なくされる事態をどのように避けるかということである。感染者数が十分に抑えられた後は、新規感染の波を早期に抑えることが鍵となる。検査はそれを達成するための中心となる措置である。

  • 検査は2種類ある。1つは、分子診断検査(RT-PCR)で、検査時に感染している個人を特定する。検査し感染者を追跡とその感染経路を特定する戦略(Test-Track-Trace, TTT戦略)が有効であれば、ウイルスの拡散を抑えその基本再生産数を1未満に抑えることができる。

  • 無症状患者が多く感染率が高いというこの新型コロナウイルスの性質を考慮してウイルスの拡大を有効に抑えるには、TTT戦略を幅広く用いるべきで、ウイルスの新たな流行を防ぐには全感染例のうちの非常に多く(70~90%)を追跡する必要がある。そのためには、検査能力を大幅に高め、感染の可能性がある人々が隔離を破らないように厳格な措置を実施し、感染経路を特定する必要がある。しかしそれは、現在開発中のデジタル追跡の新たなアプローチが導入されない限り、プライバシー保護への懸念が残る。

  • 正確な検査サンプルを採取できる技師の確保から、実験室分析に必要な時間と試薬の入手まで、重要な計画と能力の逼迫により、今のところ、多くの国々で検査の拡大が妨げられている。RT-PCR分子診断検査のスピードが最近速くなり、医療現場でも導入できるようになったことで、各国の有効なTTT能力が拡充されるべきである。デジタル技術によって可能になった感染経路の追跡は、TTT戦略のスピードと有効性を改善する可能性がある。このことは、すでに一部の国々ですでに見られている。

  • 2種類目の検査は、血清検査と呼ばれるもので、感染したことがある抗体保持者人を特定する。この検査の目的は、免疫を獲得した人々を仕事に復帰させることと、人口全体の流行の動向についての情報を得ることである。簡易血清検査キットを開発し、大規模な実施の前に臨床効果の裏付けを得る必要がある。

  • これまでのところ感染者数が比較的少なく集団免疫の獲得には程遠い状態ではあるが、血清検査を大規模に実施できればウイルスの拡散を抑えTTT戦略を補完することができる。そのためには、以下のような取り組みが必要である。1) 検査、特に簡易血清検査の臨床効果を実証する;2) 検査数を増やすために調達とロジスティクスの手配に備え、特にRT-PCR検査技師を育成、配置する;3) デジタルアプリによる追跡戦略を実施する一方で、市民権とプライバシーを保護するために適切な安全策を講じる。

  1. 治療法とワクチンが開発されるまでの検査の役割

昨年末以来、世界は SARS-CoV-2ウイルスに支配されており、新型肺炎COVID-19による死者数は数十万人に上る。このパンデミックと闘うために、多くの国々は厳格な外出制限措置を実施し、伝染のリスクを抑え、ウイルスの拡散を減らし、医療制度が多数の患者を受け入れるとともに多くの命を救えるように時間を稼ごうとしている (OECD, 2020[1])

COVID-19対策の一環として、ウイルス感染者が出たすべての国々が、ソーシャル・ディスタンシング、完全封鎖など、社会経済生活を厳しく制限している。現在の大きな問題は、こうした規制をどのように管理し、SARS-CoV-2と共存する新たな生活様式にどのように戻るか、ということである。感染者数の第2のピークと医療崩壊を避けるために、ワクチンまたは有効な治療法が見つかるまでは、感染率を引き続き抑える必要がある。しかし、あらゆる外出制限措置が解除されれば、感染率は数週間で元に戻ってしまう(Ferguson et al., 2020[2])。いつ、どのように制限を解除すべきか、そしていつ、どのように必要に応じてそれを再度強化すべきか、という戦略が必要である。これは感染の更なるピークを最小限に抑えるか、少なくともピークとピークの間の時間を稼ぐために必要とされる。

#コロナウイルス感染者数が減少してきた今、新たな感染の波を早急に抑える必要がある。検査戦略は、その中心となる。 #COVID19

この目標を達成するためには、いくつもの要素を採り入れる必要がある。

第1に、医療能力と資源を高め、更なる重篤なCOVID-19の患者を安全かつ有効に管理する (OECD, 2020[3])。

第2に、ウイルスをより良く理解する必要がある。具体的には、潜伏期間と様々なステージにおける感染力;無症状感染の広がり;感染者の免疫性とその持続期間;体温変化が病気の広がりに及ぼす影響などである。

第3に、これが本報告書のトピックであるが、人々の間にSARS-CoV-2が存在し伝染しているかという情報を大幅に改善する必要がある。そのために、無症状または軽症者を含め、検査を広範囲にわたって実施し、接触者追跡を行うことが、ロックダウン後の戦略の中心となる。より良い情報こそが、以下の三つの目標達成を助ける。

  • 地域的な再発をなるべく早く抑えるために新規感染者を追跡し、新たなピークを避ける;

  • 感染したが安全に職場復帰できる状態にある人々を特定し、経済を再開し医療現場を強化する;

  • 集団免疫の閾値が達成された時期を含め、流行の動向についての情報を集める。COVID-19の場合、感染拡大を止めるためには、人口の50〜60%が免疫を獲得している必要があると推定されている (OECD, 2020[1]).

本報告書では、コロナウイルス検査の進捗とそれによって集められた情報の利用方法について論じている。

 2. COVID-19検査の種類と目的

COVID-19を検出するための検査は、以下の二つのカテゴリーに区別できる。

  • 子診断検査:ウイルスを検出する検査;

  • 血清検査:ウイルスへの免疫反応を検出する検査。

2種類の検査が、#コロナウイルスに正しく対処する鍵を握っている

-- 分子診断検査:感染者を特定するもの

-- 血清検査:すでに感染したことがある抗体保持者を特定するもの

 2.1. 分子診断検査

RT-PCR検査は、今のところ、生体の中でCOVID-19を引き起こすウイルス因子であるSARS-CoV-2を検出する唯一の方法で、検体標本の中のウイルス遺伝物質の存在を追跡するものである。

標本は、ウイルスが集中しているとされる鼻腔または口腔内からスワブで、または肺の内部から気管吸引によって採取される。RT-PCR検査では、ウイルスの中でのみ検出される遺伝物質の結合配列を増幅させる。この増幅が何度も繰り返され、増幅が起こると蛍光信号が生成され、その信号が閾値に達すると検査結果が陽性と見なされる。ウイルス遺伝物質が存在しないと増幅が起こらず、陰性という結果になる (Hadaya, Schumm and Livingston, 2020[4])。

この技術は一般に非常に繊細(真陽性を検出できる)かつ明確(偽陰性を避けられる)である。RT-PCR検査で陽性になった場合、その結果はほぼ正しいと考えられる(偽陽性が起こりうるのは、陰性の検体が、例えば検査過程でウイルス物質によって汚染された場合のみである)。RT-PCR検査では偽陰性もあり得るが、例えば、患者の鼻咽頭にスワブをしっかり入れなかったといった、検体採取方法の誤りによるものがほとんどである(Patel et al., 2020[5]).

RT-PCR検査の主な制約は、ロジスティクスに関わるものである。その実施には多くの労働力と長い時間がかかる(検査自体にかかる時間は2時間程度だが、患者一人の結果を得るためにかかる検体採取、輸送、結果の伝達などのロジスティクス全体にかかる時間が長く、場合によっては2日もかかることがある)。特に問題なのは、検体の収集に多くの医療物資(スワブ、試薬)が必要だということで、これらは世界的な需要の高まりにより供給が逼迫している(図1)。様々な種類の試薬がRP-PCR検査に用いることができ、様々な企業がこうした試薬を生産している。それらの試薬は、ウイルス遺伝物質の異なる配列をターゲットとしている場合が多い。しかし、利用できる試薬が多様でも、RT-PCR検査の原理は同じで、それによる制約も変わらない。

一部の企業は、標準的な検査方法より早く結果が得られ、専用の施設に送らなくても病院などの医療現場で用いることができるRT-PCR検査方法を開発した(コラム1参照)。

ウイルス物質を検出するその他の方法は、今のところ開発段階である。例えば、直接抗原検出法は、抗原と呼ばれるウイルスのタンパク質を検出する方法である。これは、専用の施設でウイルスの抗原の特定の抗体を検出、生産し、それを検査キットに含める必要がある。開発が完了すれば、その検査は現在のRT-PCR検査と同じようにスワブで検体を採取することになる。検査キット内の抗体は、サンプルから得たウイルスの抗原と結合している。このテストは実施に時間がかからず(15分未満)、医療機関で行うことができる(専門機関に送らなくて良い)。しかし、キット用に抗体を生産するのが複雑なので、このテストの開発に時間がかかり、実際に開発された数は非常に少なく、実績の評価がまだ必要である(2020年4月8日の段階で、5件のウイルス抗原検査がCE IVD1マーキングを取得している)。

 
コラム 1. 検査結果を早く得られるRT-PCR検査は、検査能力拡大に有益

早急なRT-PCR検査は、医療現場(救急センター、患者の病室など)で30分以内に実施でき、専門機関に送る必要がない。

こうした検査を開発している企業は、遺伝物質の増幅を加速させるために標準的なRT-PCR検査を最大限活用している。こうした検査のマイナス面は、専用の機器が必要だということで、そうした機器が導入されている場所でしか実施できない(標準的なRT-PCR検査はどのような種類のPCR検査機器でも実施できる)。こうした検査機器の利用の最たる例が、インフルエンザ簡易検査である。

しかし、スピードが上がると正確性が多少損なわれることになる。一部の研究(Chartrand et al., 2012[6]; Chu et al., 2012[7]) によると、インフルエンザ簡易検査は感度が低く、陽性患者のかなりの割合を見落としている。COVID-19に対するこうした検査の実績はまだ確立されていないが、こうした技術が各国の検査戦略の一環として広く採用され始めると、偽陰性の水準が上がることが問題となるだろう。

いくつかの企業がこの種の検査に取り組んでいる。2020年4月8日時点で、米国の食品医薬品局(FDA)は、2つのRT-PCR簡易検査方法に緊急使用許可(Emergency Use Authorization (EUA)1 )を発行した。その一つはCepheid社のXpert Xpress SARS-CoV-2、もう一つはAbbott 社のID Now COVID-19である。

1.

EUAで使用可能とされた体外診断薬(IVD)は、FDAが認めた、または認可したIVDと同じ種類の審査は受けていない。FDAがEUAを発行するのは、適当な承認されて利用可能な代替薬が存在せず、入手できる科学的実証全体に基づいて、そのIVDがCOVID-19の原因となるウイルスの検出に有効と考える理由がある、といったいくつかの基準がを満たしている場合である。

 2.2.血清検査

患者が回復すると、ウイルスは患者の体から消え分子検査ではその人が感染していたかどうかを判断できなくなる。以前感染していた患者を検査する方法は、そのウイルスに対する免疫状態を調べることである。感染したことがある人と、免疫を持つ人の割合に関する知識が、広範囲なロックダウンを行わずに感染拡大を管理するための重要な情報となる。

感染に対する抗体反応の開発にはまだ時間がかかり、宿主依存的である(検査を受けた人の健康状態、類似の病原体に曝露したことがあるかといったその人の一般的な性質に左右される)。SARS-CoV-2の場合、初期の研究によると、患者の大半がウイルス感染後7〜11日の間に抗体を生成し始めたが、中にはもっと早く抗体を作った患者もいた(Wölfel et al., 2020[8]) 。つまり分子検査とは異なり、血清検査は感染拡大を防ぐために隔離すべき人を特定するのには向いていないということである。

免疫検査は以下の2つの異なる技術で行うことができる。ELISA(酵素免疫測定法)と免疫クロマトグラフィー検査(ラテラルフローイムノアッセイともいう。妊娠検査にも用いられる)である(表1)。どちらも血液を採取し、SARS-CoV-2感染に対して患者の免疫システムによって生成される抗体(IgGとIgM)を検出しようとする。現在開発中の検査は主に免疫クロマトグラフィー検査に対応しており、しばしば「簡易検査(rapid tests)」と呼ばれる。現状では、こうした「簡易検査」は専門家のみ使用できることになっているが、いずれは一般の人々が自分で利用できるよう販売することも可能になる。

こうした検査はまだSARS-CoV-2に対しては充分に開発されておらず、その臨床実績についてはほとんどわかっていないということを、念頭に置く必要がある。したがって、検査結果が陰性でもその人が感染している可能性を排除することはできず、逆に陽性でも感染していない可能性を排除することはできない。大規模な利用が可能と判断する前に、これらの検査結果を解釈するために相当量の分析が必要である。それにも関わらず、一部の国々の規制当局は最近、指針を変更して承認されていない検査を実施できるようにしている。

2020年4月8日の時点で、米国の食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(Emergency Use Authorization, EUA)を受けた血清簡易検査は1つしかない。2さらに64の製薬会社が類似の検査の有効性を確認しており近い将来市場化することを当局に申し出ている。FDAはこれらの検査の市場参入に反対はしないが3、企業が緊急使用許可(EUA)を要求した場合には、検査方法を審査することになる。欧州では、86の血清簡易検査がCE IVDマーキングを取得しており、理論上は使用のための販売ができる。しかし、CE IVDマーキングは必ずしもこれらの製品がEU市場ですぐ購入できるという意味ではない。製造業者がEU域外の国々で市場化するかも知れないし、全加盟国でこれらの機器を販売する業者がいないかも知れないからである (European Centre for Disease Prevention and Control., 2020[9]).

 
表 1. COVID-19に対して利用できる検査方法

分子診断検査

血清検査

検査の目的

生体の中のウイルスの検出

ウイルスに対する免疫反応の検出

検査技術

RT-PCR検査

SARS-CoV-2直接抗原検出法(開発中)

ELISA検査

免疫クロマトグラフィー検査(簡易検査)

検出対象

患者から(通常は鼻咽頭スワブで)採取した検体内のウイルス遺伝物質(RNA)

患者から採取した検体内のウイルス抗原

患者の血液内のウイルスに対する免疫反応(抗体)の存在

陽性の意味

患者の体内にウイルスが存在している。

患者がウイルスに感染したことがあり、回復中またはすでに回復している。

検査の使用目的

患者が現在SARS-CoV-2に感染しているかを知ること。

患者がSARS-CoV-2に感染したことがあり、したがって新たな感染の可能性が低い(そして疾病を広げる可能性が低い)かを知ること。

利点

適切に行えばこの検査は非常に感度が高く明確である。

「RT-PCR簡易検査」は、医療現場で使用できる。

平易

迅速

医療現場で利用できる。

免疫クロマトグラフィー検査より正確。

量的情報を提供する(抗体の集中)。

ELISA検査より利用資源が少ない。

検査技術の有効性が完全に認められれば、医療現場で実施できる(一般の人々への販売もできる)。

迅速(10〜30分)

欠点

労働力が必要。

検査の大半を専用の施設で行う必要がある。

偽陰性のリスクがある(主にサンプリングの不良)。

全ての施設でRT-PCR検査が実施できるわけではない(適切な検査機器と有害物質を扱うための許可が必要)。

スワブと試薬が不足する可能性がある。

-複雑で開発が難しい。

偽陰性の可能性がある(感染過程の最初期に実施すると抗体がまだ生成されていない)。

偽陽性の可能性がある(他の疾患との相互作用)

専門機関で実施する必要がある。

労働力と時間を必要とする(1〜5時間)。

まだ検査されていないキットが生産される。

試薬が不足する可能性がある。

質的情報のみ得られる(抗体の有無)。

まだ検査されていないキットが生産される。

試薬が不足する可能性がある。

 3. COVID-19の管理に検査をどのように利用するか

COVID-19の管理に検査を利用する方法は3つある。

  • 第1に、強力で有効な検査、感染経路の追跡、接触者追跡(testing, tracking and tracing, TTT, 3.1節) が必要である。正しく実施すれば、TTTが、社会経済生活を広範囲にわたって封鎖することなく流行を抑え−そして抑え続ける−最も有効なアプローチである。この種のアプローチも、感染拡大に関する重要な知識を与えてくれる。

  • 第2に、優先すべき人口グループ(例えば医療その他の必須インフラ従事者)に対する血清検査は、彼らの免疫を調べるために必要で、血清検査を用いて彼らを繰り返し隔離することなく働いてもらうことができる。このアプローチは、対象をさらに広げることで、経済活動の再開を後押しできる。(3.2節)

  • 血清簡易検査が大規模な使用に耐えられるほど信頼できるならば、広範囲にわたって検査を行うことで集団免疫までどのくらいかかるかを推定できる。これは、ソーシャル・ディスタンシング措置の調整にとって必須の情報である。(3.3節)

感染の疑いがある人々に検査を実施し、感染者と感染経路を追跡する(TTT)有効な戦略があれば、#コロナウイルスの感染拡大を減らすことができる

 3.1. 新規感染者の検査と追跡で地域的な発生を抑える

SARS-CoV-2の拡大を抑えるために感染を防ぐことが、外出制限措置の主な目的である。検査、感染経路の追跡、接触者追跡(testing, tracking and tracing, TTT)アプローチは、この目的達成のための中心的なツールで、多くの国々が断固として実施しているか、その規模を拡大しようとしている。同様に、WHOは「積極的で徹底的な発見と早急な検査と隔離、綿密な感染経路特定と濃厚接触者の厳格な隔離を優先する」ことを提言している (WHO, 2020[10])。

TTTアプローチは、病原体の初期の発生または再発を防ぐために用いることができ、感染を集団的に抑えられるように早急に地域的な発生を抑え込むことができる。発症と同時に感染が始まる疾病については、TTTは非常に有効になり得る。例えば、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)や2012年の中東呼吸器症候群(MERS)、2014年のエボラ出血熱が発生した際にもTTTが採用された。

COVID-19の場合、ウイルスの二次伝播の相当な割合が、無症状患者または発症前の患者の発病前に起こった可能性があることが、研究から明らかになっている (Nishiura, Linton and Akhmetzhanov, 2020[11]) 。したがって、TTT戦略を有効にするには、感染経路の追跡を全ての感染者について発症の数日前にまで広げるべきである。そして大規模に実施する必要があるが、それは特に大国ではいくつかの問題をもたらす。さらに発症と感染者の隔離とのタイムラグを短くするために早急に実施する必要がある。韓国とシンガポールの例から、これらの国々が、TTTが主要な方法とされた一連のイニシアチブを実施することで、初期のCOVID-19の発生を比較的短期間にどのように管理したかがわかる。コラム2では、これらの国々のTTT戦略について詳述している。

COVID-19の場合、TTTには以下の措置が含まれる。

  • 検査:SARS-CoV-2の感染者を特定するための診断検査の使用。今のところ、基準はRT-PCR検査だが、RT-PCR検査と同じ原則に依拠しているが検査結果がより早く得られ労働力が少なくて済む分子簡易検査を導入している国もある(コラム1)。簡易分子検査は、確証的に用いることができ、検査のスピードアップと手順の簡略化のためにRT-PCR検査の非常に良い代替方法になりうる。SARS-CoV-2の場合、発症までに時間がかかる場合があるため、感染者と接触したことがある無症状または発症前の人々に検査対象を拡大することが重要である。

  • 感染経路の追跡(Tracking):感染者の最も適切な管理とウイルスの更なる伝播を防ぐために、人々がどこで感染したかを特定する。COVID-19の場合、軽傷者の管理には隔離と自然治癒のための対症療法を提供し、重症者の管理には、対症療法をより徹底し、場合によっては救急医療を含め病院で支持療法を提供する必要がある。感染者の正確な追跡と隔離措置の遵守を監視することが、感染を抑える鍵を握っている。

  • 濃厚接触者の追跡(Tracing):COVID-19への感染が確認された人が少なくとも発症以降、可能であればその数日前に遡って接触した全ての人を見つけ出す。これらの接触者は、可能であれば少なくとも14日間(COVID-19の潜伏期間の上限)は自宅または特定の施設に隔離すべきである。これはまた、接触者の症状と感染の兆候を監督し追跡して、検査するという意味もある。

SARS-CoV-2ウイルスの特徴(感染力の高さ、潜伏期間の長さ、無症状患者の存在)のせいで、TTTの有効性はこのアプローチが実施されるスピードと正確さに左右される。最近の発生モデル研究(Hellewell et al., 2020[12]) によると、接触者の追跡と隔離は、非常に高い割合で接触を発見できない限り、COVID-19の発生を抑えられない。例えば、基本再生産数(またはウイルスの感染拡大能力、いわゆるR0)を1.5とするシナリオの大半は、接触者の50%未満を発見できれば3カ月以内に制御できるが、R0が2.5や3.5の場合には、接触者のそれぞれ70%、90%以上を発見しなければならない。SARS-CoV-2の場合、R0は当初約2.2から2.7と推定されていたが、実際は結論はまだ出ておらず、最近の研究によると、3前後から5.7というものまである(Sanche et al., 2020[13]) 。季節性インフルエンザは1.3である。発症から隔離までの期間が長く、接触者の発見数が少なく、発症前の感染が増加すると、制御の可能性は下がる。

#コロナウイルスの流行の「第2波」のリスクを減らすには、1人の感染者が接触した全ての人々のうち70〜90%の人々を追跡、検査し、感染していた場合には隔離する必要がある。そのためには、検査数を遥かに増やす必要がある。それを行う場合の課題とコストは、再び経済封鎖を行う場合の結果と比べれば、大したことはない。

TTTは、流行の制御と多くの国々で実施されている外出制限措置の段階的解除のための介入措置に主用途として採り入れなければならない。その主な目的は、国境を越えて地域的な発生をできる限り発見、抑制することで、そのためには有効なTTTを実施する取り組みを継続する必要がある。さらに、TTTは感染の動向を監視するのにも役立つ。有効な検査の実施とデジタル技術によって可能になる接触者の追跡により、感染拡大を追跡することができるからである。それにより、ある国のある時点におけるCOVID-19の基本再生産数をリアルタイムに推定するために必須の情報が得られる。その他の医療情報(例えばICUの病床数)と組み合わせることで、ソーシャル・ディスタンシング措置の解除や再導入の決定を導くことができる。4

 
コラム 2. COVID-19の感染制御への検査・追跡戦略の採用
韓国の広範囲デジタルTTT戦略1

アジア地域におけるSARSとMERSから得た教訓に従って、韓国はCOVID-19の感染を制御するために世界でも最も厳格なTTT戦略を含む顕著な取り組みを行った。

  • 検査:2020年4月6日時点で、韓国は居住者1000人当たりほぼ10件のRT-PCR検査を実施していた。これは、人口5000万人を超える国の中ではドイツ、イタリアに次いで3番目に多かった。2このパターンは、戦略的、ロジスティクス的、能力的、規制的、さらには文化的配慮の組み合わせによって説明できる。韓国は、最も感染可能性が高い症例を非常に厳格に追跡するという戦略的な早期の決断後に、検査キットの生産、配布、実験室分析について強力なインフラを敷いた。人々が乗車したまま検体を採取できるドライブスルー方式のCOVID-19検査センターのような、画期的な方法が開発された。600以上の検査センターが設置され、その内いくつかでは透明な「電話ボックス」の中で医療従事者がそのブースの壁に埋め込まれた分厚いゴム製の手袋で咽頭スワブを行った。多くの事業所、ホテル、その他大型施設には体温が高い人々を特定するための熱探知カメラが設置され、多くのレストランでは入店前に客の体温を測定した。

  • 感染者の追跡(Tracking):感染の疑いのある人を検査した後、陽性の人々を追跡し、無料で治療を施した。そのコストは中央政府と地方政府、そして医療保険の公益法人が負担する。韓国はまた、隔離が必要な個人に対して(自宅などでの隔離と入院の双方について)、その生活費を支援するために助成金を支給し、感染の疑いがある人が診断検査や治療を拒否したり、自宅などでの隔離を破ったりした場合には罰則を科している。隔離命令を受けた人々は、患者が隔離を破った場合に当局に警告するアプリケーションを携帯電話にダウンロードしなければならない。これらのツールは全て、患者を有効に追跡するのに有益である。

  • 感染経路の追跡(Tracing):韓国は、クラウドソーシングによる感染経路追跡戦略を開発している。

    • 携帯電話の位置情報は自動的に記録されるので、ほぼ全ての人々の位置情報を追跡できる。これは、携帯電話会社が全ての顧客の氏名と国民登録番号を把握しているために可能となっている。

    • CCTVカメラでCOVID-19感染者の接触者を特定する。2018年には、韓国では公共施設に100万代以上のCCTVカメラが設置されていた。3

    • クレジットカードとデビットカードの履歴で、カード利用者の動きが地図上に表示される。韓国では世界で最もキャッシュレス決済が進んでいるために、可能になった。.

    • 検査で陽性反応が出た人の全ての接触が特定できない場合は、その人の動向に関する詳細な情報が、近隣住民にテキストメッセージで送信される。

    • こうした追跡スキームの結果は、国及び地方政府のウェブサイト、感染者の位置情報を示すスマートフォンの無料アプリ、地域の新規感染者についてのテキストメッセージによる更新などで公開される。

隔離違反に対する罰金は約2300ユーロに上る。

この追跡システムの欠点は、その方法をめぐるプライバシーの問題で、そのせいで感染者が名乗り出ない可能性があることである (OECD, 2020[14])。

シンガポールのユニバーサルTTT戦略

シンガポールも、強力なTTT戦略を実施しているが、日常生活を大幅に制限することなくCOVID-19の流行を制御した (Lee, Chiew and Khong, 2020[15])4

  • 検査:シンガポールは、発生の初期以降全ての感染の疑いがある人々に対して検査を行う大規模な戦略を採用し、570万人の人口に対して1日当たり2200件のRT-PCR検査を実施した。検査は一次医療(プライマリーケア)、病院、ドライブスルー方式の検査所で行われた。さらに、感染が原因のインフルエンザのような疾患で死亡した人々については、センチネルクリニックで検査が行われた。

  • 感染者の追跡(Tracking):一次医療の環境で800を超える公的予防クリニックのネットワークが動員され、住民が治療を受けて多くの感染例を追跡できるように助成が拡大された。呼吸器症状がある患者には最長5日間の病欠を取って自宅待機させるよう、医師に指導した。感染が確認された人々は全て即座に病院に隔離され、感染を防いだ。治療費は、外国籍の患者のものを含め、政府が負担した。

  • 接触者の追跡(Tracing):症状が見られる全ての接触者は病院で隔離されて検査を受け、曝露した日から14日間隔離された。指導の遵守を促し生活困難を削減するため、「隔離命令給付制度(Quarantine Order Allowance Scheme)」で経済支援を行い、「感染症法(Infectious Disease Act)」で感染経路追跡と隔離を命令し従わない人々には罰則(6400ユーロの罰金または6カ月間の拘留、もしくはその両方)を科す法的権限を与えた。防疫官、軍隊、警察が協力して、例えばCCTVカメラの映像やデータビジュアル化などを用いて、人員をつぎ込み探偵のような捜査を行っている。後者には、患者やその接触者全員に対する電話による面談が含まれ、発症前の7日間の行動履歴を詳細に報告させている。直接訪問によって、法的隔離命令は各人に託されている。捜査には、領収書やカード払いの履歴による感染者の動向追跡が含まれる。

2.

Our World in Data COVID-19 Testing dataset. https://ourworldindata.org/covid-testing. Accessed on 13 April 13 2020.

 3.2. 誰に対して検査を行うべきか

検査をもっと広範に実施すれば、SARS-CoV-2の存在、そして感染と増殖のパターンについて重要な情報を得ることができる。例えば、例えば2週間ごとに大多数の人々に対して検査ができれば、全ての感染者を隔離し、それ以外の人々は通常の生活を送ることができる。それには莫大な費用がかかるが、それでもロックダウンのコストと比べれば大したことはないと言える。しかし、ロジスティクスの問題も大きい。実際、医療現場で実施できるRT-PCR簡易検査(コラム1)でさえ、検査能力は人口全体に検査を実施するには不十分である。つまり、当局は誰に検査を実施するかを決めなければならないということである。

検査戦略は、検査能力の制約の中で実現可能で、起こりうる感染拡大シナリオを考慮に入れたものでなければならない。WHOは一国で達した感染者数に応じて、実験室検査戦略提言を行っている(WHO, 2020[16]) 。つまり、誰に先に検査するかは、流行のステージに応じて明確な基準があるということである。

現段階のほとんどのOECD諸国の感染者数に鑑みて、分子診断検査で優先すべきは引き続き安全で適切な医療を確保することであり、したがって入院患者、入院が必要になる可能性がある弱者医療従事者への検査が優先される。検査能力が充分に高まれば、検査対象を感染の疑いがある軽症の患者感染者と接触があった人々にも拡大することができる。それにより無症状患者を含む感染者に的を絞って隔離ができる。分子診断検査では、検査時点で感染者かどうかがわかる。上述のように、RT-PCR検査は最も正確な検査方法だが、人的資源と時間がかかり、したがって検査能力は逼迫している。

ドイツは、施設ベースの分子診断検査能力が感染発生の初期に構築された例である。幅広く検査を行ったため的を絞って無症状を含む感染者を隔離することができた。それと同時に、感染している弱者は入院して、重症化する前に呼吸補助を受けることができたため、生存率が高まった。こうしたことから、ドイツでは比較的死亡率が低かったと考えられるが、その他、初期の感染者の多くが比較的若く健康だったことも、死亡率が低かった一因である。4月11日時点で、ドイツにおけるCOVID-19感染者の27%が60歳以上である。イタリアでは、感染者の63%が70歳以上の高齢者であった。5

感染者とそれ以外の人々との接触に関する信頼できる情報がない中で、日常生活の中で大勢の人々と接触するいわゆる感染拡大者(super-spreader)も繰り返し検査を行う対象となり得る。医療従事者を除くと、スーパーマーケットや食料品店、公共交通機関、宅配業者などが他者にウイルスを拡散するリスクが高いと考えられる。

免疫システムによって生成される抗体を特定する血清検査は、異なる目的に資する。そのためには、適切な検査設備が使用できる(上述)だけでなく、免疫反応とその期間について、より良く理解することが望ましい。例えば、一度罹患すると何らかの免疫を獲得することは明らかだが、その免疫力がどのくらい持つのかはわからない (Petherick, 2020[17]). 血清検査は、感染拡大者のようなグループに優先的に実施することもできる。血清検査には、経済活動再開を支援する戦略の一環として関心が高まっている。医療従事者に検査を行うことで、不必要な自主的隔離を制限し、医療部門の能力を高めることができる。さらに、在宅勤務ができない職業の人々に検査を実施したり、免疫を持っている人を特定するために、労働者の一部を優先することで、より多くの人々が安全に就労できる。優先すべきグループへの的を絞った検査だけでなく、流行の度合いを推定するためにランダムサンプリングを実施し、集団免疫に向けた進展を評価することができる(後述)。

人々を経済社会活動に復帰させるために血清簡易検査が利用されれば、ドイツや英国で検討されている「パスポート」のように、またはWHOが海外渡航に必要としているワクチン証明のように、人々の免疫力を記録することができる。免疫反応がある人々は、できれば活動性感染症がないことを証明する血清診断検査結果と同時に、移動制限を解除される。新たな感染を追跡、隔離して感染を減らすことができれば、免疫力を持っていない人々の移動制限も徐々に解除することができる。

しかし、「パスポート」の使用は意図しない深刻な結果を招く可能性もある。免疫を持っていない人々がそれを獲得して通常の生活と仕事ができるように、自らウイルスに感染しようとするかも知れない。これは、多くの人々がロックダウンのせいで自分の暮らしと家族を支えるための収入を得る機会を失っている状況では、理解できる反応である。残念ながら、こうした行動のリスクは、感染症が再び非常なスピードで拡大し、医療崩壊が起こるということである。このリスクを抑えるには、この「パスポート」を、誰が仕事に復帰できるか−地域、年齢、職種など−を規定する別の規制と併せて導入する必要がある。

 3.3. 流行の動向についての知識収集:人口調査のための検査

検査は、優先すべきグループに的を絞って実施されるだけでなく、一般の人々の集団免疫を推定するためにも用いられる。これは、「共同体の構成員が以前の感染または予防接種から能動免疫を獲得した結果、共同体がある感染症の影響を受けやすいか否かを示す度合い」を表す (Reid and Goldberg, 2012[18]) 。COVID-19の場合、ワクチンがまだないため、免疫を獲得する唯一の方法は、感染することである。

集団免疫は主に以下の二つの方法で測ることができる(Reid and Goldberg, 2012[18]):

  1. 1.

    臨床的に異なり、ある程度一般的であるならば、疾病の年齢分布と発症パターンから間接的に測定する。これは、COVID-19のように無症状患者がいる感染症については感度が低く適切な方法とは言えない。

  2. 2.

    血清検査を実施することで、特定の人口グループの免疫を評価することで直接測る。

人口レベルの免疫評価(血清調査 (sero-surveillance)とも呼ばれる (Wilson et al., 2012[19])) では、集団免疫の達成、感染しやすい人口グループの特定(「免疫ギャップ」)、防御抗体の残留期間の評価に必要な抗体のレベルを決定することができる。将来的に、血清調査は、抗体保持者に予防接種をするのを避けるワクチン戦略の策定に、妥当な情報を提供できるようになるだろう。

「集団免疫による消滅(herd immunity for elimination)」とは、感染症が人口の中で伝染できないレベルを指す(Williams, 2006[20]) 。免疫がこのレベルに達すると、いくらかの二次感染または感染の短い連結(「クラスター」)は発生するかも知れないが、そうしたクラスターは最終的には壊れ、ウイルスの拡散は止まり、流行は根絶される。つまりそのような状況では、ある時点(Rt)の有効基本再生産数が1.0未満になる。COVID-19の場合、当初は、人口の50%から60%がウイルスに対する免疫を獲得すると、集団免疫が達成されたと推測されていたが、再生産数が高い場合、この割合はほぼ75%にまで上昇する可能性がある(OECD, 2020[1]).

SARS-CoV-2に対する免疫をより良く推定するために、一国ごとの確率的サンプル集団または一国の地域の結成の有病率調査が実施できる(Wilson et al., 2012[19]) 。これは、少なくとも免疫が能動的な期間に、集団免疫への進展を評価する一助となり(COVID-19の場合、免疫継続期間は不明)、将来の監視をするベースラインにもなりうる。これらはまた、どの程度制約(例えばソーシャル・ディスタンシング措置)を緩和、または解除するか(例えば、あるグループの人々は他の人々より外出制限措置を長期間維持した)を決める際の重要なパラメータにもなる。

2.2節で述べたように、検査は徐々に発展する(試験と承認が行われる)ので、すでにそのような血清による免疫研究が計画されている国もある。例えば、ドイツの研究者は、10万人6に対して定期的に免疫検査を実施することを提案しており、そうすることで、将来的に「免疫証明(immunity certificates)」が提供できるようになる。それに対して英国政府はすでに350万件の免疫検査を実施し、さらに数百万件の検査を実施しようとしている。7しかし、血清検査の信頼性は依然として大きな問題で、政府は最も適切な検査を選ぶことに苦慮しており、妥当性確認テストの結果が待たれている。

他にもウイルスそのものの性質と同行をより良く理解するための要因がある。これまでのところ、研究者はこのウイルスがかなり安定的で大幅な変異はしないことを確認している。8しかしこれも、政策当局に情報提供するためには、あらなる研究が望まれる分野である。

集団免疫は流動的で、免疫記憶の衰え、免疫保持者の死亡、新生児や移民といった感染しやすい人の登場などによって、時間と共に失われる可能性がある(Reid and Goldberg, 2012[18]) 。2002年のSARS-CoVに感染して回復した人が17年後に依然としてウイルスを中和できる抗体を保持していることが実証されている(Petherick, 2020[17]) 。SARS-CoV-2はSARS-CoV-1と多くの性質が共通であることから、COVID-19の免疫も長期間継続するのではないかと期待されている。しかし、インフルエンザに毎年新しいワクチンが必要であるように、ウイルスが変化すれば免疫は失われる可能性もある。従って、SARS-CoV-2への免疫の性質については、血清検査そのものの厳格な評価と併せて、更なる研究が必要である。

 4. 最終段階:検査戦略の実施

OECD諸国における検査の実施状況は急速に変化している。2020年4月28日時点で、OECD諸国の人口1000人当たりの検査数は、数件の国から100件を超える国まで差がある(図1)。

 
図 1. OECD諸国におけるCOVID-19の診断検査
1.

検査を受けた人数または検査数。 2. 実施された検査数または検査されたサンプル。 3. 検査単位が不明確または一貫性がない。検査の実施数か検査を受けた人数か、官民双方の専門機関での検査か否か、データのどのくらいの頻度で更新されているかなどの違いが各国間で存在する。図中の検査データは、4月26日から5月3日の間のものである。

出典: Our World in Data. https://ourworldindata.org/covid-testing accessed 4 May 2020.

検査戦略を成功裏に実施するには、いくつか解決しなければならない問題がある他、データのプライバシーを巡って発生しうる問題にも取り組む必要がある(OECD, 2020[14])。

#コロナウイルス 検査の実施状況は国ごとに大きく異なる。新規感染のリスクを軽減するためには、各国はその検査能力を大幅に拡大する必要がある。

 4.1. COVID-19による制限の管理に情報を与えるための検査戦略の実現可能性

現在のロックダウン措置から移行するための要素としての検査の実現可能性については、いくつかの必須条件がある。その中には、科学的知識、必要とされる機材の需要計画と調達調整、検査実施能力の構築、情報管理などが含まれる。

第1に、免疫と免疫の検査方法に関する科学的研究を継続する必要がある。感染した全ての人が免疫を獲得していることと、その免疫がどのくらいの期間継続するかを確認しなければならない。これまでのところ、免疫についての仮説は動物モデル(Bao et al., 2020[21]) 、観察研究(Wölfel et al., 2020[8]) 、類似のウイルスに対する免疫反応(De Wit et al., 2016[22]) を元にしている。免疫の迅速な検査のための正確で信頼できる血清検査を生産するための研究開発を継続しなければならず、最近開発された検査については規制当局が頑健なデータを用いて評価する必要がある。2.2節で述べたように、現在数多くの検査が開発されており、その内のいくつかはすでに販売されているが9事例証拠によると、現在利用できる血清検査の多くは必ずしも正確ではない(Cassaniti et al., 2020[23]).

第2に、政府は大規模な検査戦略を実行するのに必要な資材について現実的な予測をし、国及び国際レベルで調達の調整をする必要がある。需要予測と購入の確実性は、製造業の生産能力構築に役立つ。PCR検査にはサンプルを集めるための鼻咽頭スワブ、ウイルス遺伝物質を分離するための試薬を入れた検査キット、分析を行うための検査機器、医療従事者のための防護用品などが必要である。

調達を国際レベルで調整すれば、最も必要とされているところが確実に入手できるようにし不足を避けることが容易になるだろう。EU共同調達制度は、それを地域レベルで行う方法を示す一例である。しかし、一部の国々は一方的な輸出制限を行い、自国民による調達を優先するために調達に介入している。10

第3に、人材を含め地域の検査能力を構築しなければならない。PCR検査を実施するには検査技師、明確な手順、施設のインフラが必要である。韓国は、検査能力の早急な向上方法を示している。それは、国内生産に向けて検査キットを早急に認可すること、地方の生産者に資源を供給すること、ドライブスルー方式の検査場のように多数の人々が検査を受けられるような画期的な解決策の導入などである。各国政府はまた、市場に出回る血清検査の供給ルート(pipeline)を把握して、正確な検査の規模を拡大できるかとその方法を評価する必要がある。

最後に、プライバシーの問題に対処しつつ感染、免疫、人々の接触の情報を実効的に管理しなければならない。感染と免疫の状態を証明する紙の書類や個人の「パスポート」のような従来型の方法に加えて、デジタル技術による解決も有益である。こうした技術により、人々の接触を追跡して、その情報を感染や免疫状態のそれと統合することができる(Ferretti et al., 2020[24])。政府はデータの保護とガバナンスの枠組みを早急に決めて、個人のプライバシーを適切に保護しつつ個人情報を公衆衛生に利用できるようにしなければならない。この問題は次節で詳しく論じる。

開発途上国で検査戦略を成功裏に実施するには、財政上の制約、医療施設の能力と検査機器と医療用品の調達力が低いこと、検査施設の能力が低いこと、検査技師が少ないこと、遠隔地への物流が複雑であることなどの課題を解決しなければならない。追跡戦略の実施にもデータガバナンス枠組みの弱さや未開発の医療情報システムなど課題がある。財政面及び技術面の開発協力は、開発途上国におけるTTTの実現可能性を改善する上で、重要な役割を果たす。

 4.2. プライバシーと公衆衛生、安全確保の目的のバランス

民主主義社会では、プライバシーや市民の自由と公共の安全確保との間に葛藤がある。その葛藤は、危機的状況で特に深刻になる。SARS-CoV-2は、目に見えない、国境も尊重しない敵である。その拡散と人々の健康や医療システムの機能への影響を抑えることが、何よりも重要である。プライバシー保護の度合いをある程度引き下げる必要があるとしても、それは当然のことではなく、プライバシーの権利を保護するデジタルツールやデータの有望な用法がある(OECD, 2020[14]).

OECD諸国においてそれと比肩する最近の脅威は、テロリズムである。テロリズム攻撃に対応するには、セキュリティを強化するために政策対応がプライバシーと衝突した(Jones, 2009[25]) 。例えば、多くの国々でCCTVカメラが公の場だけでなく私的な場所でも用いられるようになった。ロンドンではCCTVカメラが非常に多く設置されているため、個人が普通に市内を移動する様子が何百枚もの写真に撮影されることになる。米国では、9.11攻撃の後、捜索と監視に関する法律と手続きが変更され、警察が市民の物理的移動と電子的なフットプリントをリアルタイムに監視できるようになった(Bloss, 2007[26]) 。監視についての新たな権限が導入されると、直近の脅威が消えてもその権限は残る傾向がある。

COVID-19については、ソーシャルディスタンシングや隔離政策に対応して人々の移動の変化を監視するための数々の監視技術が登場した。利用者が位置情報へのアクセスを認めている場合、携帯電話からのデータを追跡に利用する場合もある。その例がGoogle COVID-19 Mobility ReportとUnacast Social Distancing Scoreboardである(Google, 2020[27]) (Unacast, 2020[28]) 。携帯電話から得た情報の利用については、情報に基づく合意に関わる懸念がある。特に、データの利用と第三者への開示についてアプリの利用者が読まないであろう長いサービス利用規約の中で説明されている場合がそれに該当する。ベルギーでは、同様の監視が、通信接続会社3社から得られる個人除法が非特定化されたデータを集積することで可能になっている (Cloot, 2020[29])。

モバイルデータとGPS監視用ブレスレットなどの関連の技術は、個人が隔離措置に従っているかを確認したり、感染者と接触した個人を特定したりするなど、特定の個人の追跡にも利用できる(Barrett, 2020[30]; Zastrow, 2020[31]) 。欧州委員会は、モバイルアプリケーションとモバイルデータの利用に対するEU共通のアプローチを開発するための段階的な措置に関する提言を採択した。112019年6月時点で、OECD加盟国の居住者100人当たり113件のモバイル・ブロードバンド契約があり12、大多数の人々が個人の位置情報の詳細なログを生成するために利用できる端末を持ち歩いていることになる。様々な個人の位置情報を追跡できれば、接触経路を追跡し曝露した可能性のある個人に情報を与えることもできる。

SARS-CoV-2に曝露した可能性があることを個人に知らせる方法(Raskar et al., 2020[32]) は、感染者が訪れた位置情報を幅広く(公的)共有する方法から的を絞った(特定のグループまたは個人)方法まで様々である。位置情報は、個人の同意の有無にかかわらず共有できる。原則として、デジタル技術と位置情報を用いた接触者追跡は、呼吸器感染症の拡散を抑え込む取り組みに有益だが、実際には、そのようなアプローチの真のリスクと便益については、不明確な部分が多い。

匿名化されたデータであっても、個人情報の公開とその結果烙印−感染が確認されたか、感染の疑いがあるか、感染しやすいか−が押されることには、リスクが伴う(Rocher, Hendrickx and de Montjoye, 2019[33]) 。感染の疑いがある、または感染している個人が訪れた企業の情報も、漏洩すると、その場所が閉鎖され消毒されても、収入の減少につながる可能性がある (Zastrow, 2020[31]) 。恐喝者は地元の事業者に対して、自分の感染やその事業者を訪問したことを報告しない代わりに身代金を要求する目的で、デジタルの接触者追跡システムを悪用することもできる(Raskar et al., 2020[32]) 。また、どのような情報システムにも当てはまることだが、サイバーセキュリティのリスクと、データ漏洩、ランサムウェアによる攻撃に晒される恐れがある。最後に、感染した個人に明確で実践可能な提言を与えないことで、誤報、逆効果の行動、パニックさえ引き起こす可能性がある。

しかし、プライバシーを侵害することなく接触者の追跡を行うことは可能である。Pan-European Privacy- Preserving Proximity Tracing (PEPP-PT) と呼ばれるイニシアチブは、プライバシーを保護しつつ感染経路の特定ができるようにすることを目指している(PEPP- T, 2020[34]) 。個人の携帯電話は、近接した他の携帯電話とのBluetoothハンドシェイクを記録している。そのデータは暗号化され、その電話機に蓄積されている。ある人が検査で陽性とされたら、医療機関はその人にコードを提供し、その人は自発的にそれをPEPP-PTアプリを管理する国のサービス機関に提供することができる。国の機関は感染者と近接していた携帯電話に警告を送る。感染者も接触者も特定されない。Future of Privacy ForumはSARS-CoV-2感染を追跡するために用いられる様々なアプリの情報をまとめている。13

重要なことは、デジタル追跡の費用対効率については実際の実証が限られており、現在のSARS-CoV-2に対する実用性に関してはいくつもの疑問があるということである。デジタルによる感染経路の追跡は比較的新しいため、その影響の研究はシミュレーションに基づいているか (Ferretti et al., 2020[24]) 少ない資源で行われる実現可能性を示すデモンストレーションのいずれかである(Danquah et al., 2019[35]) 。そのシミュレーションによると、COVID-19の流行についての知識を前提にすると、デジタルによる接触者追跡の実効性を確保するには、それがほぼ完全に適用され、ほぼ完全に遵守される必要がある(Ferretti et al., 2020[24]) 。上述の通り(Hellewell et al., 2020[12]) 、ウイルスの実効再生産数が3.5であれば、それを1未満(流行がほぼ制御された状態)にするためには、感染経路追跡は感染者の90%に対して有効である必要がある。

感染者数が増加している時には、感染者及び感染の疑いがある人の全ての接触を追跡することは難しくなっていく(ECDC, 2020[36]) 。疑いのある感染者それぞれを追跡するのに必要な資源は重要で、資源に限りがあるために実効的な広域追跡が持続不可能になるポイントがある(ECDC, 2020[36]) 。デジタルによる接触者追跡に用いられる基本データの正確さが不明である場合、このことは何より重要になる。モバイルの位置情報の正確さは、携帯電話の基地局の位置からスカイラインまで、多くの要因に左右される。米国で行われたある推定によると、電話の位置情報と実際の位置との平均距離は約30メートルであった(PlaceIQ, 2016[37]) 。人々が屋内や人口密度が高い場所にいるとその正確さはさらに下がる。これはいずれもロックダウンの時に起こりうることである。Bluetoothのほうがプライバシーを保護しやすい(位置情報がないので)が、より正確だというわけではない。

さらに、OECD諸国全体で55〜74歳の人々では、2016年14にインターネットを実際に利用していた人の割合は、わずか63%で、COVID-19の追跡において最も重要な人々の一部(高齢者)がそのデータに現れない可能性がある。

モバイルデータに加えて、ドローンもプライバシーに立ち入る技術である(Doffman, 2020[38]) 。監視用ドローンで人々の撮影をしたり、自宅待機の必要性についてのメッセージを放送したり、発熱、咳、呼吸数、心拍数の監視を含む観察措置を採ったりしている、またはそれを検討している国もある(Pennic, 2020[39]) 。ドローンも監視カメラも、顔認証アルゴリズムを用いている(O’Donnell, 2020[40])。

全てのOECD諸国が、公衆の安全への脅威に対してプライバシーの侵害を可能にする法律をすでに設けているか、または検討している。新しい法律の制定または対策の実施にあたっては、個人は司法救済の権利を有するべきで、対策には期限を設けるべきである。そうすることで監視は永続的なものにならない。国連の専門家(OHCHR, 2020[41]) が強調しているように、「コロナウイルスへの緊急対策は相応で必要な、差別的でないものでなければならない。」対策は、特にデータ利用の公的透明性に関して、OECD Privacy GuidelinesとOECD Council Recommendation on Health Data Governanceに適合しているべきである (OECD, 2013[42]; OECD, 2019[43]) 。監督機関は監視技術の実施を監視し、新しい監視技術と人々の権利について、人々に情報を与えることが推奨される。

多くの国々がデジタル技術でTTTを実現する方法を開発、展開する方向に急速に移行している中で、それに伴うリスクと利点を天秤に掛ける必要がある。データ保護の重要性に関して国際機関と政府が声明を発表しているにも関わらず、未だに多くの疑問が残っている。例えば、こうしたデジタルイニシアチブによりどのようなデータを集めるべきか、そのデータを誰にどのように共有すべきか、データへのアクセスと複製許可をどうするか、データ分析にどのようなアルゴリズムを用いるべきか、ロバスト性と妥当性はどうか、これらの分析に基づいてどのような決定がなされるべきか、といった問題である。デジタルツールによる幅広い包摂的な監視が人権侵害となる恐れが高いことについて、幅広く支持されているガイドラインが国際レベルで存在するにもかかわらず、これらの疑問に明確な答えを与えてくれるものはほとんど、または全くない。TTTの広範な利用へのデジタル技術によるアプローチは、出口戦略の重要な部分を占めているが、広範にわたる人々の信頼を獲得し、デジタルツールとデータを受容し利用するためには、そのリスクと便益を人々によく理解させ、議論を尽くさなければならない。

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[28] Unacast (2020), Unacast Social Distancing Scoreboard, https://www.unacast.com/post/unacast- updates-social-distancing-scoreboard (accessed on 2020).

[16] WHO (2020), Laboratory testing strategy recommendations for COVID-19, World Health Organization, Geneva, https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/331509/WHO-COVID- 19-lab_testing-2020.1-eng.pdf (accessed on 3 April 2020).

[10] WHO (2020), Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID- 19), World Health Organisation, https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who- china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf (accessed on 2 April 2020).

[20] Williams, J. (2006), “Models for the Study of Infection in Populations”, in Conn, P. (ed.), Handbook of Models for Human Aging, Academic Press, http://dx.doi.org/10.1016/B978- 012369391-4/50016-3.

[19] Wilson, S. et al. (2012), The role of seroepidemiology in the comprehensive surveillance of vaccine-preventable diseases, Canadian Medical Association, http://dx.doi.org/10.1503/cmaj.110506.

[8] Wölfel, R. et al. (2020), “Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019”, Nature, pp. 1-10, http://dx.doi.org/10.1038/s41586-020-2196-x.

[31] Zastrow, M. (2020), “South Korea is reporting intimate details of COVID-19 cases: has it helped?”, Nature, pp. -, http://dx.doi.org/10.1038/d41586-020-00740-y.

担当

Stefano SCARPETTA (✉ stefano.scarpetta@oecd.org)

Mark PEARSON (✉ mark.pearson@oecd.org)

Francesca COLOMBO (✉ francesca.colombo@oecd.org)

Frederico GUANAIS (✉ frederico.guanais@oecd.org)

1.

CE IVD マーキングとは、そのテストが関連するEU法、Directive 98/79/EC on In Vitro Diagnosticsに準拠していることを意味している。

3.

コロナウイルス疾患-2019のための臨床検査に関するFDA政策で述べられている通り、FDAは、検査の有効性が認められ、FDAに通知されれば、商業生産者によるSARS-CoV-2への抗体を特定するための血清検査の開発と普及、または実験室での開発と利用に反対する意図はない。 https://www.fda.gov/media/135659/download.

5.

https://www.statista.com/statistics/1105465/coronavirus-covid-19-cases-age-group-germany/ accessed on 11 April 2020, and https://www.statista.com/statistics/1103023/coronavirus-cases-distribution-by-age-group-italy/ also accessed on 11 April 2020. 各国は、感染者の年齢分布を異なる年齢グループを用いて報告している。

6.

https://www.thelocal.de/20200327/germany-plans-mass-immunity-study-to-track-virus

9.

完全に網羅されてはいないが定期的に更新されている検査のリストと、開発と規制の状況は以下のサイトに掲載されている。 https://www.finddx.org/COVID-19/pipeline/.

10.

例えば、欧州の医療機器製造業者の貿易協会であるMedTech Europeが公表する欧州諸国政府の調達追跡ツールは、以下のサイトで定期的に更新されている。https://www.medtecheurope.org/resource-library/covid-19-procurement-actions/.

11.

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_626.

12.

OECD, Broadband Portal, www.oecd.org/sti/broadband/oecdbroadbandportal.htm.

14.

OECD, ICT Access and Usage by Households and Individuals (database), http://oe.cd/hhind (アクセス日:2017年6月).

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