AI(最近の生成AIモデルを含む)の急速な開発と普及が進む中、AIを職場で使用するリスクは、労働者の基本的権利とウェルビーイングに対するリスクに適切に対処しながら、AIが職場にもたらす便益を享受するための確固たる行動が必要であることを明示している。既存の法律(例えば、差別、データ保護、労働者の団結権)は、職場におけるAIの利活用を管理するための重要な基盤であるが、関連する事例が限られているため、それらがAIにどの程度対処できるのかは不透明である。そのため、各国はAIに特化した法律とソフト・ロー(例えば、AI戦略、倫理原則、基準)の整備を進めている。
AIがタスクと雇用に及ぼす影響は、スキルニーズの変化も生じさせるだろう。AIを利活用している企業は、AIに対する研修を提供していると主張するものの、依然としてスキル不足はAI導入の大きな障害となっている。そのため、雇用主への研修のインセンティブ付与だけでなく、実施される研修の大部分がフォーマル教育に限られることから、公共政策は重要な役割を担うだろう。AIそのものは、研修に関する内容、対象範囲、提供方法(特に、企業規模の差異に応じて必要とされる研修を適切に提供する機会)について改善の機会をもたらしてくれるかもしれない。しかし、研修でAIを利用することは、不平等を拡大するとともに、人間によるバイアスを助長する可能性もあり、こうした課題に対処していかなければならない。
団体交渉と社会対話は、AIへの移行期において、労働者やビジネスを上手く支援するための重要な役割を担っている。AIの導入は、労働者代表に協議された場合、労働者によりよい結果をもたらす傾向がある。しかしながら、急速な普及、学習能力、AIが原因で大きくなる力の不均衡といったAIの特性とその導入のあり方は、労働者側にさらなる圧力をもたらす。AI技術はソーシャル・パートナーがその目標と戦略を追求する手助けをする可能性を秘めているが、ソーシャル・パートナーの間でAIに関する専門知識が不足していることが、大きな課題である。